異世界に転生したのにスキルも貰えずに吸血鬼に拉致されてロボットを修理しろってどういうことなのか

ピモラス

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ケンと治療師

挨拶ってどうをなにしたらいいんですか

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俺は少し楽しい気分で長老に挨拶に行くことになった。
初対面の人に会って挨拶をしろとか、現実世界でも一人だったらビビりまくってトイレに30分こもって精神統一しても震えているだろう。でも今回はエータも一緒だ。ついていけばいいらしい。
「ここだ。伝えるのが遅くなったが、外見で驚いたりすることは不名誉な行動だ。謹んでくれたまえ」
俺は何の話しか理解できなかったが、すでにドアの前に来ていたのでたいして気にせず
「ああ、大丈夫だ」
と答えた。正直なんにも考えてなかった・・・
「では、入ろう」
エータはドアをコンコンコンコンと4回ノックして返事を待たずに開け
「君もすぐに入りドアを閉めたまえ」
と言ったのですぐに入りドアを閉めた。
家の中には暖炉があり、大きなテーブルに大きな椅子に座る、大きなフードを被った人物が座っていた。
「おはよう長老。また世話になっている。こちらはケン。アレクシウスの身内だ」
え、俺って身内なのか?と、とにかく挨拶をしなければ!
「お、おはようございます、長老さま。お、お世話になっています!」
俺は一瞬キョドってしまい、緊張したが挨拶をちゃんと出来た・・・と思う。
「おはようエータ殿、そして『ケン』殿と言ったかな?アレクシウス様には御恩がある。その御身内なら我が家のようにくつろいでいただきたい」
そういいながらフードを外し、後ろにたらした。
「不格好な見た目ですが、長老を勤めておりますガイウスと申します。以後お見知りおきを」
俺は大きな角の生えた頭を見て、条件反射で
「娘さんを・・・」
と言いそうになるのを必死で堪えて、失礼ながら二度見をした。
牛ではなく、鹿のように枝分かれした角が生えていた。
体はダボっとしたローブで覆っているので見えないが、顔にはうっすらとだが茶色い毛が生えており、人間に近い顔の輪郭ながらこめかみから立派な二本の角が自然に生えていた。髪は白かったが人と同じように感じた。
「むすめさ・・・ゴホゴホ。り、立派な角ですね。か、かっこいい・・・」
俺はどうしても「娘さんを」の下りが頭から離れずに、変な言葉を口走りながらも本心を伝えてしまった。
「ははは、ケン殿はさすがアレクシウス様の身内ですな。驚いているようだが、良い方の驚き方だ」
そういって温和に笑った。笑うと皺が深くなり、思っているよりも年齢が上なのかと思えたが年を尋ねるのはやめておいた。
「し、失礼しました」
俺は慌てて謝罪し頭を下げた。
「何、かまいませんとも。私を捉えて剥製にするのなら抵抗しますが『立派』と言われるのは悪い気はしないものですぞ」
俺は何か怖い系の人と会話をしているような気分になってきていた。そんなことはお構いなしにエータが
「長老、アレクシウスの治療は終わったのだが、もうしばらく意識が回復しないようだ。リハビリもかねて後20日程この集落に滞在したいのだが、かまわないかね?当然無償で、という訳ではない」
エータは実務的な会話に移ったようだった。
でもお金って持っているの?小心者の俺はそんなことが気になりだした。
「何日でも気にせずに、アレクシウス様には返せぬ恩がありますので・・・」
ガイウスはエータと俺に向かい、角の頭を下げた。
が、エータは
「では、長老。少し変わった依頼を受けてほしいのだが、できる範囲でいいので聞いてはもらえぬか?」
俺は「ただでいい」と言っている人に向かって「じゃあついでにこれも」と言っている、あつかましいおばちゃんとエータがだぶって、ちょっと引いた。
「我々にできることならなんなりと・・・」
ガイウスは気を悪くした気配もなく、穏やかに答えた。
俺一人がハラハラドキドキしていたが、その後エータが
「では、このケンにできる仕事を与えてあげてほしい。巻き割りでも水汲みでも、ジンナや他の住民の身の回りの世話でも出来そうな事は色々とやらせてあげてほしい」
「ほほう、それは・・・わかりました。エータ殿は何かお考えがあるのですね」
穏やかに微笑んでいる長老ガイウスに無表情ながら笑って見つめあっているように見えるエータ。置いてけぼりの俺・・・何をするのかわからず不安で胃が痛くなってきた。
「それとケン。吾輩は少し長期の斥候を行う。地底人の居住区を探してくる予定だ」
話の途中でケンはエータに割り込むように話しかけたが、エータはそれに構わず続けた。
「長老が君に仕事を与えることに賛成したなら、しばらくの間、君はこの集落での生活に慣れる時間を取れる。吾輩が不在の間、君がどのように過ごすかが大事なのだ」
ケンは少し困惑したが、エータが彼のことを考えて計画を立てているのが伝わってきた。
「え、えっと、俺が?この村で?た、ひ、ひ、一人で?」
「そうだ。君には集落の人々と信頼を築く機会を与えたいのだ。それに、君も自分自身を少し鍛える時期がきたのだろう」
エータの無機質な顔を見つめながら、ケンは何かを感じた。自分がただ守られる存在であるだけではなく、もっと強くなり、自分で行動する力が必要だということを考え始めていた。
「わ、わかったよ。で、でもさ、急に一人になるのはちょっと・・・」
「心配は無用だ。長老やジンナもいるし、彼らが助けてくれるだろう。君も一緒にいるからと言って、何も成し遂げられずにいるわけにはいかない」
長老ガイウスはそのやり取りを静かに聞いていたが、微笑を浮かべながら口を開いた。
「ケン殿、どうか安心していただきたい。我々の集落に馴染んでいただくため、私たちも協力します。アレクシウス様のためにも、あなたの滞在を有意義なものにしましょう」
ケンはしばらくの間、エータの言葉や自分の不安を考えたが、最終的には決心したように頷いた。
「わかった。やってみるよ。なんでも、巻き割りでも水汲みでも、手伝いができるならやる」
エータは満足そうに頷き、長老に向き直った。
「では、長老。ケンを頼む。吾輩はこれから斥候に出発するが、戻るまでの間、彼にできる仕事を与えてやってほしい」
ガイウスは角を軽く動かしながら同意の意を示した。
「もちろんです、エータ殿。ケン殿には、この集落で必要な仕事を適宜お願いしようと思います」
ケンは少し緊張していたが、同時に新しい経験が始まる予感に胸を躍らせていた。
「エータ、気をつけてな。斥候が終わったらちゃんと戻ってきてくれよ」
「当然だ。君も自分の力を信じて、村での生活を楽しんでくれたまえ」
こうしてケンは、エータが不在の間、集落での新しい生活をスタートさせることになった。
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