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ケンと治療師

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崖を下り、浜辺につく頃にはポツリポツリと雨が降ってきた。
白い波打ち際の砂浜も、雨に濡れて黒くなっていく。
「昨日は晴天で気温も高かったから沿岸部までクラゲが流れ着いている可能性が高い」
ケンと並んで歩くエータは顔と目をせわしなく動かしながら続けた。
「ちなみにだが、海中に大型の捕食生物と思われる生命体がいる。君は水に入らずに対象の捜索をしてくれたまえ」
「・・・え!?」
俺は雨が降っていたが、海に遊びに来るのは小学生以来だとすこし浮かれた気分になっていた。遊びにきた訳ではないが、気持ちのウキウキは隠せなかった。俺のウキウキを返せ!
そんな冗談はともかく、俺は先ほどのエータの行動を見てから、エータがなんだか学生時代の友人のように感じ始めていた。
「え、エータ。海の中にいる動物が陸地の生き物を襲ったりは?」
エータは海水でもさびないのだろうか?荷物を置き、膝ほどまでザブザブと海の中に進み
「ふむ、その可能性はゼロではないが、この浜辺では陸から海に戻るのに困難を極めるので水にさえ入らなければ問題ないであろう」
「あ・・・エータ右!あれクラゲかも?」
俺は白波にもまれる半透明の白い物体を見つけ指さした。
エータは陸上と同じ挙動と速度で白い物体を救い上げた。
「ミズクラゲだ。でかしたぞケン。後数匹持ち帰ろう」
「と、ところでクラゲの種類はなんでもいいのか?」
俺は今更ながら疑問に思い聞いてみたが
「吾輩もクラゲの専門家ではないので正確な回答は持ち合わせておらん。可能なら数種類捕獲できたほうが良いな」
その後も時間はかかったが合計5匹のクラゲを捕獲し、鍋に入れフタをして荷物袋に入れた。
「だ、大丈夫かな?死んじゃわない?」
俺は心配になりエータに聞いてみたが
「海水を入れたし完全に乾燥しない限り72時間は生存可能なはずだが、急いだほうがいいのは確かだ」
そう言ってエータはじっと俺の方を見ている・・・言葉には出さないが何が言いたいのかがわかってしまった。
「わ、わかったよ。で、で、でも途中で休憩時間をもっと増やしてほしい・・・です」
「アレクシウスも待っているしな。正確には意識がないから『待っている』と表現するのはおかしいがな」
俺はなんだかエータが冗談を言っているような気がして、面白くなくて「ぷっ」っと笑ってしまった。
エータは不思議なものを見るように俺を見てから
「準備はよいかね?」
俺はエータの逆鱗に触れたのだろうか?死刑宣告がなされた・・・


担がれて15分くらいたっただろうか?クラゲの鍋もあるし、エータが速度を加減してくれているのかな?今日は大丈夫そうだと、思っていた時期が俺にもありました!
「・・・え、え、エータさん・・・そろそろ・・・うっぷ」
「もうかね?昨日より早くないかね?」
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