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ケンと治療師
古代の遺跡ってなに
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自動ドアを抜け、俺は部屋の中に入った。
部屋の中は5メートル四方くらいか?それほど広くない部屋に銀行のATMのような機械が真ん中に設置されていた。画面は薄く緑色に光っている。
エータは画面の前に立ち、凹凸はないが操作盤と思われる部分を数回触れた。
画面が明るく光り、文字が数個ならんだ。
「ふむ。これは独立ターミナルのようだ。メインシステムに干渉できないな」
「この端末でエータの修理は出来ないってこと?」
俺は「ターミナル」とか「メインシステム」がどういったものかよくわからなかった。
「そうだなケン。このターミナルには僅かなデータしか残されていないようだ。だが吾輩の不完全な地図データは更新できそうだな。1300年程前の物のようだが」
エータは画面と操作盤を操作して地図の画面を出した。
「今いるのはこの辺りで、君がはじめに転送された場所がこの辺りだ」
エータはざっくりとだが地域の説明をして、これからの目的地を示した。
「この辺りが次に行く『屋敷』だ。ケン。君の移動速度で3日程度の行程だ」
俺はさっきまでハイテク機器に囲まれてワクワクしていた。
「・・・3日も・・・」
背中に一筋の汗が流れた。俺のワクワクを返せ!!
エータはさらに操作をしていて、唐突に俺の方を振り返り
「短時間だが、過去の映像データが見られる。興味はあるかね?」
俺は無意識にゴクリと唾を飲み込んで
「見せてください先生」
「先生ではないが再生しよう。音声はついていない」
そういって画面いっぱいに映像が流れた。
俺はハイテクな都会や自然の風景などが映し出されるのかと思っていた。
そうではなかった。
以前にエータから聞いていた「人類に対し反乱したAI軍対人類軍」の戦闘風景だった。
近代的なビルに飛び交うビームや壮絶な弾幕。
音声はないのに泣き叫ぶ人々の声が聞こえてきそうな破壊と殺戮の映像だった。
映像は固定の監視カメラや人がもつ撮影機材などのつなぎ合わせだったが、
「この映像はE-1型に搭載されたカメラの映像だ」
と言ったものが映し出された。
見た目はエータに似たロボットだった。
大砲なようなものに弾丸のごとく発射されたそれは、人間の軍隊の真っ只中に落ちた。
その衝撃で地面には赤い大きな花が咲いた。
その後もそれは時に銃火器で、時に人間を叩き潰し数を減らしていた。
たった一機のロボットにかなりの数の武装した人間が全滅された映像だった。
「え、エータ。も、もう十分だよ」
俺は吐き気を覚え、全身が汗だくになっていた。
何の感情も無く、人間をオモチャの人形のように蹂躙する、その映像を見た後にエータがものすごく恐ろしく感じた。人類が作り出したのかもしれないけど、人間が扱ってはいけないもののように思えた。
俺は息が荒くなり、エータから距離を取ろうと後ずさった。
後ろにいるアレックスにぶつかった。
「・・・」
アレックスは無言で目を閉じていたが、俺がぶつかったら目を開けた。
荷物袋から布切れを出して俺の汗をふき水筒を手渡してくれた。
俺はアレックスにしがみつきたい衝動にかられたが、なんとか冷静さを保ち水を飲んだ。
「え、エータもこの戦い・・・戦争には参加したのか?」
俺は恐ろしかったが確認せずにはいられなかった。
「吾輩が誕生したのは終戦後だ。開発は進んでいたが実践投入には間に合わなかった」
俺はその答えを聞いて少しほっとしたが
「そのころには排除すべき対象も、助けるべき対象もほとんどいなかったようだがね」
そう続けたエータがもう理解できなかった。
遺跡から出た俺たちは北の屋敷を目指して進むことになった。
俺はさっきの映像を見てからずっと「本当にこのロボットを修理してしまっていいのか」と自問していた。
おおよそこの世界の文明レベルでエータを機能停止するのは不可能に思えた。
万が一、エータが人類に牙を向いたら誰がとめられるのか?
俺は当然、真っ先に殺されるだろう。アレックスなら止められるのか?
ジンナも殺されるのか?
そもそも殺すとかこのロボットの思考にあるのか?
そんな疑念が渦巻いていた。
「・・・ン。・・・のかね。ケン」
「うわっ!」
岩場の坂を下りきった所でエータが俺に話しかけていたらしい。
「ご、ごめんエータ。考え事をしていて・・・どうしたんだ?」
「やはり君の体調は万全ではないようだな。この先で今日は野営にしよう」
太陽は若干傾いていたが、まだ夕方とはいえない時間だった。
今夜は野宿になるのか・・・リュナの時以来かな・・・
俺はエータの事を考えないようにしていたら、リュナと野宿したことを思い出して、ブルっと震えた。
「・・・今日は俺と寝ろ」
「・・・は?え?」
後ろを歩くアレックスがそんなことを言ったような気がした。
あ、アレックスさんが「俺と寝ろ」と??
こ、これは何かの誘いですか?
いや、アレックスは俺の身を案じて心配してくれているのだろう。
そう自分に言い聞かせて心臓のドキドキをごまかしていた。
そうして灰色の石がごろごろした河原についた。
川は結構大きく、川幅は20メートルくらいありそうだった。
この川の向こう側は、こちら側と違い草が生えた緑の土地だった。
「この辺りが安全であろう。ケン。川の水は煮沸してから飲むようにしたまえ」
エータはそういってから「少しあたりを哨戒してこよう」
と立ち去っていた。
俺はエータの背を見て少しほっとしたことに気が付いた。
アレックスは枯れ木や枯草を集め焚火を起こした。
俺は荷物袋から小さな鍋をだして川の水を汲みにいった。
川の水はキレイだった。透き通っていて中で気持ちよさそうに泳ぐ魚が見えた。
アレックスが作ってくれた石のかまどに鍋を起き、二人で紅茶を飲んだ。
「・・・何を悩んでいるのだ。ケンよ」
突然アレックスが言った。
「・・・あの。アレックス。もし、もしもだけど・・・」
俺はエータが暴走した場合の事をアレックスに言った。
あの映像を見てからエータが恐ろしいとも。
「・・・俺ならエータに勝てるが」
アレックスの答えは簡潔だった。
が、その後に
「エータがいなくなるのは困る」
と続けたので、俺はアレックスにずっと疑問に思っていることを聞いてみた。
「アレックスはその、なんで・・・なんで死にたい・・・殺してほしいと思っているんだ?」
アレックスの言葉は少なかったが、ポツリポツリと語ってくれた。
アレックスが仲良くした人は皆すぐに死んでしまう。その子も孫もあっという間に死んでしまう。アレックスもアレックスの母も死ねない体らしく、もう見送る役目に疲れたのだと。
要約してしまえばそのような内容だった。
なんとなく想像はしていた。本当は優しいのだろうとも分かっていた。
その話しを聞いているうちに俺は涙を流していた。
「・・・何故ケンが泣くのだ?」
「アレックスが優しいから・・・俺には何もできないし、友達が死ぬのをずっと見送るなんて・・・ううっぐすっ」
アレックスは俺の頭を優しく撫でてくれた。
「お前も優しいではないか。ケンよ、聞け」
「は、はい・・・」
「エータは長い年月俺に寄り添ってくれた唯一の死なない友だ。ヤツは裏切らん」
「う、うん。アレックスがそういうなら・・・ぐすっ」
俺は鼻を啜って涙をふいて笑顔をアレックスに向けた。
その後、俺とアレックスは二人で食事をし始めた所でエータが戻ってきた。
俺はアレックスに言われた事を思い出し
「おかえりエータ。ちょっと遅かったね?」
と自分から声をかけてみたが
「ただいま帰還した。実は奇妙な物が数か所にあってな」
エータは何か人工的に積み上げられた何かの骨を見つけたようだった。
不信に思い哨戒範囲を5キロ圏内まで広げた所、数本の骨でバツ印や三角形がかかれたものがあったようだった。
「豚人の痕跡も数か所にあった。骨の暗号は吾輩には理解できないものであったが、吾輩が警戒するので安心して就寝するがよい」
表情はわからないが、ドヤ顔をしていると思われるエータだった。
が、小心者の俺は「いつもお前を見張っている」と言われているような感覚に襲われた。
焚火の前で震え上がっていたら
「・・・ケン、眠るぞ。お前のマントを敷け」
と言われ、マントを引いてアレックスのマントをかけて一緒に横になった。
俺はしばらくの間、豚人にビビったり、アレックスにドキドキしたりしていたが、アレックスがすぐ近くにいる安心感と移動の疲れから眠っていた。
部屋の中は5メートル四方くらいか?それほど広くない部屋に銀行のATMのような機械が真ん中に設置されていた。画面は薄く緑色に光っている。
エータは画面の前に立ち、凹凸はないが操作盤と思われる部分を数回触れた。
画面が明るく光り、文字が数個ならんだ。
「ふむ。これは独立ターミナルのようだ。メインシステムに干渉できないな」
「この端末でエータの修理は出来ないってこと?」
俺は「ターミナル」とか「メインシステム」がどういったものかよくわからなかった。
「そうだなケン。このターミナルには僅かなデータしか残されていないようだ。だが吾輩の不完全な地図データは更新できそうだな。1300年程前の物のようだが」
エータは画面と操作盤を操作して地図の画面を出した。
「今いるのはこの辺りで、君がはじめに転送された場所がこの辺りだ」
エータはざっくりとだが地域の説明をして、これからの目的地を示した。
「この辺りが次に行く『屋敷』だ。ケン。君の移動速度で3日程度の行程だ」
俺はさっきまでハイテク機器に囲まれてワクワクしていた。
「・・・3日も・・・」
背中に一筋の汗が流れた。俺のワクワクを返せ!!
エータはさらに操作をしていて、唐突に俺の方を振り返り
「短時間だが、過去の映像データが見られる。興味はあるかね?」
俺は無意識にゴクリと唾を飲み込んで
「見せてください先生」
「先生ではないが再生しよう。音声はついていない」
そういって画面いっぱいに映像が流れた。
俺はハイテクな都会や自然の風景などが映し出されるのかと思っていた。
そうではなかった。
以前にエータから聞いていた「人類に対し反乱したAI軍対人類軍」の戦闘風景だった。
近代的なビルに飛び交うビームや壮絶な弾幕。
音声はないのに泣き叫ぶ人々の声が聞こえてきそうな破壊と殺戮の映像だった。
映像は固定の監視カメラや人がもつ撮影機材などのつなぎ合わせだったが、
「この映像はE-1型に搭載されたカメラの映像だ」
と言ったものが映し出された。
見た目はエータに似たロボットだった。
大砲なようなものに弾丸のごとく発射されたそれは、人間の軍隊の真っ只中に落ちた。
その衝撃で地面には赤い大きな花が咲いた。
その後もそれは時に銃火器で、時に人間を叩き潰し数を減らしていた。
たった一機のロボットにかなりの数の武装した人間が全滅された映像だった。
「え、エータ。も、もう十分だよ」
俺は吐き気を覚え、全身が汗だくになっていた。
何の感情も無く、人間をオモチャの人形のように蹂躙する、その映像を見た後にエータがものすごく恐ろしく感じた。人類が作り出したのかもしれないけど、人間が扱ってはいけないもののように思えた。
俺は息が荒くなり、エータから距離を取ろうと後ずさった。
後ろにいるアレックスにぶつかった。
「・・・」
アレックスは無言で目を閉じていたが、俺がぶつかったら目を開けた。
荷物袋から布切れを出して俺の汗をふき水筒を手渡してくれた。
俺はアレックスにしがみつきたい衝動にかられたが、なんとか冷静さを保ち水を飲んだ。
「え、エータもこの戦い・・・戦争には参加したのか?」
俺は恐ろしかったが確認せずにはいられなかった。
「吾輩が誕生したのは終戦後だ。開発は進んでいたが実践投入には間に合わなかった」
俺はその答えを聞いて少しほっとしたが
「そのころには排除すべき対象も、助けるべき対象もほとんどいなかったようだがね」
そう続けたエータがもう理解できなかった。
遺跡から出た俺たちは北の屋敷を目指して進むことになった。
俺はさっきの映像を見てからずっと「本当にこのロボットを修理してしまっていいのか」と自問していた。
おおよそこの世界の文明レベルでエータを機能停止するのは不可能に思えた。
万が一、エータが人類に牙を向いたら誰がとめられるのか?
俺は当然、真っ先に殺されるだろう。アレックスなら止められるのか?
ジンナも殺されるのか?
そもそも殺すとかこのロボットの思考にあるのか?
そんな疑念が渦巻いていた。
「・・・ン。・・・のかね。ケン」
「うわっ!」
岩場の坂を下りきった所でエータが俺に話しかけていたらしい。
「ご、ごめんエータ。考え事をしていて・・・どうしたんだ?」
「やはり君の体調は万全ではないようだな。この先で今日は野営にしよう」
太陽は若干傾いていたが、まだ夕方とはいえない時間だった。
今夜は野宿になるのか・・・リュナの時以来かな・・・
俺はエータの事を考えないようにしていたら、リュナと野宿したことを思い出して、ブルっと震えた。
「・・・今日は俺と寝ろ」
「・・・は?え?」
後ろを歩くアレックスがそんなことを言ったような気がした。
あ、アレックスさんが「俺と寝ろ」と??
こ、これは何かの誘いですか?
いや、アレックスは俺の身を案じて心配してくれているのだろう。
そう自分に言い聞かせて心臓のドキドキをごまかしていた。
そうして灰色の石がごろごろした河原についた。
川は結構大きく、川幅は20メートルくらいありそうだった。
この川の向こう側は、こちら側と違い草が生えた緑の土地だった。
「この辺りが安全であろう。ケン。川の水は煮沸してから飲むようにしたまえ」
エータはそういってから「少しあたりを哨戒してこよう」
と立ち去っていた。
俺はエータの背を見て少しほっとしたことに気が付いた。
アレックスは枯れ木や枯草を集め焚火を起こした。
俺は荷物袋から小さな鍋をだして川の水を汲みにいった。
川の水はキレイだった。透き通っていて中で気持ちよさそうに泳ぐ魚が見えた。
アレックスが作ってくれた石のかまどに鍋を起き、二人で紅茶を飲んだ。
「・・・何を悩んでいるのだ。ケンよ」
突然アレックスが言った。
「・・・あの。アレックス。もし、もしもだけど・・・」
俺はエータが暴走した場合の事をアレックスに言った。
あの映像を見てからエータが恐ろしいとも。
「・・・俺ならエータに勝てるが」
アレックスの答えは簡潔だった。
が、その後に
「エータがいなくなるのは困る」
と続けたので、俺はアレックスにずっと疑問に思っていることを聞いてみた。
「アレックスはその、なんで・・・なんで死にたい・・・殺してほしいと思っているんだ?」
アレックスの言葉は少なかったが、ポツリポツリと語ってくれた。
アレックスが仲良くした人は皆すぐに死んでしまう。その子も孫もあっという間に死んでしまう。アレックスもアレックスの母も死ねない体らしく、もう見送る役目に疲れたのだと。
要約してしまえばそのような内容だった。
なんとなく想像はしていた。本当は優しいのだろうとも分かっていた。
その話しを聞いているうちに俺は涙を流していた。
「・・・何故ケンが泣くのだ?」
「アレックスが優しいから・・・俺には何もできないし、友達が死ぬのをずっと見送るなんて・・・ううっぐすっ」
アレックスは俺の頭を優しく撫でてくれた。
「お前も優しいではないか。ケンよ、聞け」
「は、はい・・・」
「エータは長い年月俺に寄り添ってくれた唯一の死なない友だ。ヤツは裏切らん」
「う、うん。アレックスがそういうなら・・・ぐすっ」
俺は鼻を啜って涙をふいて笑顔をアレックスに向けた。
その後、俺とアレックスは二人で食事をし始めた所でエータが戻ってきた。
俺はアレックスに言われた事を思い出し
「おかえりエータ。ちょっと遅かったね?」
と自分から声をかけてみたが
「ただいま帰還した。実は奇妙な物が数か所にあってな」
エータは何か人工的に積み上げられた何かの骨を見つけたようだった。
不信に思い哨戒範囲を5キロ圏内まで広げた所、数本の骨でバツ印や三角形がかかれたものがあったようだった。
「豚人の痕跡も数か所にあった。骨の暗号は吾輩には理解できないものであったが、吾輩が警戒するので安心して就寝するがよい」
表情はわからないが、ドヤ顔をしていると思われるエータだった。
が、小心者の俺は「いつもお前を見張っている」と言われているような感覚に襲われた。
焚火の前で震え上がっていたら
「・・・ケン、眠るぞ。お前のマントを敷け」
と言われ、マントを引いてアレックスのマントをかけて一緒に横になった。
俺はしばらくの間、豚人にビビったり、アレックスにドキドキしたりしていたが、アレックスがすぐ近くにいる安心感と移動の疲れから眠っていた。
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