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ケンと治療師
恐怖の治療師
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「うう、リュナ・・・」
俺はリュナを探して目を覚ました。
頭がクラクラするが、周りの景色はリズミカルに跳ねながら、遠くへ流れている。
「こ、ここは?うっ」
俺は腕がズキリとし、頭頂部まで痛みが突き抜ける感覚で体が震えた。
「ケン、気が付いたようだが、血を失いすぎている。もう喋るな」
横目でちらりとしか見えていないが、エータがものすごいスピードで走っているのか?足がはっきり見えなかった。
俺は徐々にリュナの事を思い出していた。
あんなにかわいかったリュナが・・・俺を・・・食べようとしていた。
ものすごい吐き気を感じたが
「・・・もうすこしだケン」
とアレックスの声で安心したのか、吐かずに耐えられた。
俺はまた気を失っていたようだが、アレックスやエータの話し声で目を覚ました。
明るかった外から、薄暗い部屋に移動して土の上に寝かされた。
肩に巻かれた紐をほどいているようだったが、肩に触れる指の感覚だけで
「ぎゃーっ!」
と悲鳴を上げていた。
「後は頼む」
部屋の中は暗く、見えなかったがアレックスの声がして、安心したのだが
「あああああ!わあああああああああああああああああああ」
ヌルヌルした液体がかかっているようだったが、激痛が走り熱かった。
リュナの噛んだ傷口に焼けた鉄の棒を刺してかき回されているようだった。
「うう、痛い、痛いいい。もう許して・・・許してください」
俺はあまりの激痛で体が暴れたいのに暴れられないように縛られていると思い、必死に許しを請うた。
「情けないヤツだ」
小さな声が聞こえた。俺はリュナを思い出し恐怖した。拷問官か・・・
「あ、アレックス!た、助けて。助けてください」
さらに俺の腕の骨がキリキリと削られる音が頭に響いてきた。
俺は「もう発狂するなら早く狂ってしまえ」と願ったが、狂えなかった。
「・・・も、もう・・・早く・・・殺しでぐだざい・・・」
涙と鼻水が止まらなくなり、そんな事を言った。
そして意識を手放した。
目を覚ますと、さっきより明るいが、薄暗い部屋でボロボロのベットの上で寝ていたようだ。
アレックスが椅子に座っているのが見える。
「・・・気が付いたか」
「こ、ここは?」
「・・・腕は動くか?」
「え・・・あ!なおってる!?痛くない?」
俺はちぎれかかったピンクの骨が見える自分の腕を覚えていた。リュナに噛まれたことも・・・
今はキレイになおっていた。傷跡すらない。
「すごい!痛くないし傷跡もない・・・アレックス?」
アレックスは無言で立ち上がり布の垂れ幕の出入口らしきところから出て行ってしまった。
俺は愕然としてベットから起き上がり、ベットへ座りなおした。
アレックスのあの態度はなんだろう?でも助けてくれたのか?それとリュナは・・・
そんな事を考えていたら入口の暖簾のような布が動き人が入ってきた。
「アレックス、ここはいったい・・・?」
入ってきたのはアレックスではなく、少女だった。少女・・・なのか?
少女は原始人の男性が着ているイメージのワンショルダーの獣の皮をまとっていた。
右腕は、ミミズに見えた。赤黒く、脈打つようにウネウネと動いていた。
それよりも俺は少女の片方の乳房が隠しもせずに露わになっているのに目がいってしまい
「うわーーーーー」
と自分の顔を両手で隠してしまった。
「ちっ・・・お前もそうか」
少女はケンを睨みつけ
「せっかく助けてやったのに、どいつもこいつも、なんだってんだ!」
少女は怒り、目の前の椅子を蹴り倒した。
片足もミミズのようだった。
ケンは慌てて
「ち、違うんだ!」
両手で目を隠しながらそういったが、少女はさらに声を大きくし
「何が違うんだ!そんなに!見たくないほど醜いと言いたいのか!!」
そうまくしたて、ケンは咄嗟に大声で
「お、女の子なんだから、おっぱい隠して!」
「女の子ってバカにしてる・・・のか?女の子・・・」
少女は段々と声が小さくなり、暖簾をつかんで引きちぎり胸に巻いた。
「こ、これでいいのか?なあ、おい!」
そこへ間がいいのか悪いのか、アレックスが堂々とやってきて少女に向き合った。
「な、なんだよ!?」
そう啖呵を切った少女にアレックスは深々と頭を下げ
「・・・ケンを助けてくれた事、感謝する」
そう言った。そして
「・・・俺はアレクシウス。アレクシウス・ヴァン・ローレン。名は?」
「じ、ジンナだ」
「・・・そうか、ジンナ。お前の母レアナもいい腕だったぞ」
「ああ!?お、お前母さんを知っているのか?」
ジンナはそう聞いたが、アレックスは出て行ってしまった。
ケンはこのミミズの少女が自分を救ってくれた事を知り、アレックスの態度を見て、自分が恥ずかしくなった。
ケンは立ち上がり、ジンナに深々と頭を下げて
「怪我を治してくれて、ありがとうございました」
そういって微笑んだ。
ジンナは
「お前は私を見て驚いていたであろう!さっきのヤツの真似か!!」
ジンナはわざとミミズの腕をケンの目の前に突き出した。
ケンはそのミミズを両手でガシっとつかみ
「この腕で治してくれたんだね。どうやったのかわからないけど」
「お、お前!?人の腕を気安く握るな!」
ジンナはケンの両手からスルリとミミズの腕を引き抜き、ケンから後ずさった。
ケンはハッとして
「あ、初対面の女の子の手を握ってしまった。ごごごごごめん」
「お前、ま、また女の子とか、私をバカにしているのか!殺すぞ!!」
ジンナは恥ずかしいのをごまかすようにケンにすごんで見せたが、ケンはリュナを思い出し
「(やっぱり人間の)ジンナ(の方が)かわいいな」
と思っていた事の一部だけが言葉として出てしまった。
「お、お、お、お前何言ってるんだ?私はバケモノだろう?」
ケンはバケモノと言われてアレックスとエータが思い浮かび
「ははは。(俺は本物の化け物を知っているからね)ジンナなんてかわいいほうだよ」
ジンナは赤面して何も言えなくなってしまった。無言でケンを睨んだ。
「命の恩人にそんな失礼な事いわないよ。助けたけど殺したいなら殺されたほうがいいのかな?あれ、なんかおかしいな?」
ジンナは治療中のケンを思い出し
「ふっ。治療中は『ころじでぐでー』って泣きわめいていたのにな!」
ジンナの表情が緩んだ。ケンはドキッとしてしまった。
リュナの事もあったのにかわいいと本気で思ってしまった。
短髪のボサボサ頭に団子っぱなで細い目に小さな歯並びの悪い口。
お世辞にも美人と言える要素はなかったが、笑った顔がケンには魅力的に見えた。
ケンは今まで普通に喋る事が出来たのに、自分がコミュ症だったことを思い出してしまった。
相手がかわいい女の子だと思った途端に喋れなくなってしまった。
「あ・・・うん。アレックスとエータはどこにいったんだろう?」
それとなくそんな事を言ったのだが、ジンナはケンを傷つけてしまったと勘違いした。
「あ、うん。私治療はできるけど、得意じゃないから痛かったんだよね。ごめんなさい・・・」
「え、なんでジンナが謝るんだ?」
「そ、それは君の事をバカにしたから・・・私の治療はみんな痛がるし・・・下手だから・・・」
「お、俺はジンナに感謝しているよ。本当だ!傷跡も残らないで治せるなんてすごいよ!」
「そ、そうかな。まあ私は昔からこれしかできないしね。お母さんから引き継いだ技なんだ」
「そうなんだ。お母さんは?」
「・・・私たち、子供を生む時に引き換えに死ぬの」
「え?」
「だから私のお母さんは私を生んだ時に死んじゃったの」
「・・・」
ケンは自分の浅はかさを感じた。ケンはどうしていいのかわからず、地面に座り両手をついて土下座をしていた。
「ごめんなさい。俺、バカだから。どうしようもないバカだから、こんな時にどうしたらいいのかわからなくて・・・すみませんでした」
「え、ちょ、君なにしてるの?」
「許してほしいとか言えないよ。恩人に向かって・・・もうジンナを傷つけたくないから行くね」
「ちょっと待って。もうお母さんの事は気にしてないよ。私生まれる時だからお母さん知らないし。・・・そうだ、じゃあ一つ教えてよ」
「はい、な、なんでしょう?」
「君の名前」
「え?」
「だ・か・ら!名前だよ名前。私はジンナ。あなたは?」
「ああ!ごめん。遅くなったけど、俺はケン」
「じゃあケン。命令!地面に座ってないで立ちなさい!」
「え、はは。はい。立ちました」
「そういえばさっきの人。お母さんを知っているの?」
「あー俺はわからないけど、聞いてみたら?答えてくれるか・・・答えてくれたらいいね」
「あは、何それ」
ケンはやっぱりジンナの笑顔が好きだった。
「あの人って立派な人よねー」
ケンは笑顔のジンナのセリフにドキっとした。
「や、やっぱりジンナもあんなイケメンが好きなんだね・・・」
ケンは一瞬嫉妬したが、アレックスと比較して勝てるところが何も思い浮かばなかった。
「イケメン?好きというか尊敬できるわね。私なんかにちゃんとお礼を言うなんて。醜いのに」
「じ、ジンナはかわいいよ!」
「・・・ケンはだれにでも『かわいい』って言うんでしょ?」
「いわな・・・」
俺はリュナの事が頭に浮かんでしまった。
小さなリュナはかわいかった。でも俺を殺そうと・・・食おうとしていた。
そこへエータがやってきて
「ケン、元気そうだな。体温は正常だが血と栄養が不足しているようだな。血色が悪い。アレックスと共に食事にしよう」
「あ、ああ。ジンナも一緒に?」
俺はジンナの方を見ていったがジンナは下を向いて
「私は行けない」
ケンはアレックスが最初会った時に、食事に関して信仰とかなんとか言っていたのを思い出し、無理に誘うのはやめた。
「そう・・・じゃあ、また後でね」
そう言ってエータと出ていった。
俺はリュナを探して目を覚ました。
頭がクラクラするが、周りの景色はリズミカルに跳ねながら、遠くへ流れている。
「こ、ここは?うっ」
俺は腕がズキリとし、頭頂部まで痛みが突き抜ける感覚で体が震えた。
「ケン、気が付いたようだが、血を失いすぎている。もう喋るな」
横目でちらりとしか見えていないが、エータがものすごいスピードで走っているのか?足がはっきり見えなかった。
俺は徐々にリュナの事を思い出していた。
あんなにかわいかったリュナが・・・俺を・・・食べようとしていた。
ものすごい吐き気を感じたが
「・・・もうすこしだケン」
とアレックスの声で安心したのか、吐かずに耐えられた。
俺はまた気を失っていたようだが、アレックスやエータの話し声で目を覚ました。
明るかった外から、薄暗い部屋に移動して土の上に寝かされた。
肩に巻かれた紐をほどいているようだったが、肩に触れる指の感覚だけで
「ぎゃーっ!」
と悲鳴を上げていた。
「後は頼む」
部屋の中は暗く、見えなかったがアレックスの声がして、安心したのだが
「あああああ!わあああああああああああああああああああ」
ヌルヌルした液体がかかっているようだったが、激痛が走り熱かった。
リュナの噛んだ傷口に焼けた鉄の棒を刺してかき回されているようだった。
「うう、痛い、痛いいい。もう許して・・・許してください」
俺はあまりの激痛で体が暴れたいのに暴れられないように縛られていると思い、必死に許しを請うた。
「情けないヤツだ」
小さな声が聞こえた。俺はリュナを思い出し恐怖した。拷問官か・・・
「あ、アレックス!た、助けて。助けてください」
さらに俺の腕の骨がキリキリと削られる音が頭に響いてきた。
俺は「もう発狂するなら早く狂ってしまえ」と願ったが、狂えなかった。
「・・・も、もう・・・早く・・・殺しでぐだざい・・・」
涙と鼻水が止まらなくなり、そんな事を言った。
そして意識を手放した。
目を覚ますと、さっきより明るいが、薄暗い部屋でボロボロのベットの上で寝ていたようだ。
アレックスが椅子に座っているのが見える。
「・・・気が付いたか」
「こ、ここは?」
「・・・腕は動くか?」
「え・・・あ!なおってる!?痛くない?」
俺はちぎれかかったピンクの骨が見える自分の腕を覚えていた。リュナに噛まれたことも・・・
今はキレイになおっていた。傷跡すらない。
「すごい!痛くないし傷跡もない・・・アレックス?」
アレックスは無言で立ち上がり布の垂れ幕の出入口らしきところから出て行ってしまった。
俺は愕然としてベットから起き上がり、ベットへ座りなおした。
アレックスのあの態度はなんだろう?でも助けてくれたのか?それとリュナは・・・
そんな事を考えていたら入口の暖簾のような布が動き人が入ってきた。
「アレックス、ここはいったい・・・?」
入ってきたのはアレックスではなく、少女だった。少女・・・なのか?
少女は原始人の男性が着ているイメージのワンショルダーの獣の皮をまとっていた。
右腕は、ミミズに見えた。赤黒く、脈打つようにウネウネと動いていた。
それよりも俺は少女の片方の乳房が隠しもせずに露わになっているのに目がいってしまい
「うわーーーーー」
と自分の顔を両手で隠してしまった。
「ちっ・・・お前もそうか」
少女はケンを睨みつけ
「せっかく助けてやったのに、どいつもこいつも、なんだってんだ!」
少女は怒り、目の前の椅子を蹴り倒した。
片足もミミズのようだった。
ケンは慌てて
「ち、違うんだ!」
両手で目を隠しながらそういったが、少女はさらに声を大きくし
「何が違うんだ!そんなに!見たくないほど醜いと言いたいのか!!」
そうまくしたて、ケンは咄嗟に大声で
「お、女の子なんだから、おっぱい隠して!」
「女の子ってバカにしてる・・・のか?女の子・・・」
少女は段々と声が小さくなり、暖簾をつかんで引きちぎり胸に巻いた。
「こ、これでいいのか?なあ、おい!」
そこへ間がいいのか悪いのか、アレックスが堂々とやってきて少女に向き合った。
「な、なんだよ!?」
そう啖呵を切った少女にアレックスは深々と頭を下げ
「・・・ケンを助けてくれた事、感謝する」
そう言った。そして
「・・・俺はアレクシウス。アレクシウス・ヴァン・ローレン。名は?」
「じ、ジンナだ」
「・・・そうか、ジンナ。お前の母レアナもいい腕だったぞ」
「ああ!?お、お前母さんを知っているのか?」
ジンナはそう聞いたが、アレックスは出て行ってしまった。
ケンはこのミミズの少女が自分を救ってくれた事を知り、アレックスの態度を見て、自分が恥ずかしくなった。
ケンは立ち上がり、ジンナに深々と頭を下げて
「怪我を治してくれて、ありがとうございました」
そういって微笑んだ。
ジンナは
「お前は私を見て驚いていたであろう!さっきのヤツの真似か!!」
ジンナはわざとミミズの腕をケンの目の前に突き出した。
ケンはそのミミズを両手でガシっとつかみ
「この腕で治してくれたんだね。どうやったのかわからないけど」
「お、お前!?人の腕を気安く握るな!」
ジンナはケンの両手からスルリとミミズの腕を引き抜き、ケンから後ずさった。
ケンはハッとして
「あ、初対面の女の子の手を握ってしまった。ごごごごごめん」
「お前、ま、また女の子とか、私をバカにしているのか!殺すぞ!!」
ジンナは恥ずかしいのをごまかすようにケンにすごんで見せたが、ケンはリュナを思い出し
「(やっぱり人間の)ジンナ(の方が)かわいいな」
と思っていた事の一部だけが言葉として出てしまった。
「お、お、お、お前何言ってるんだ?私はバケモノだろう?」
ケンはバケモノと言われてアレックスとエータが思い浮かび
「ははは。(俺は本物の化け物を知っているからね)ジンナなんてかわいいほうだよ」
ジンナは赤面して何も言えなくなってしまった。無言でケンを睨んだ。
「命の恩人にそんな失礼な事いわないよ。助けたけど殺したいなら殺されたほうがいいのかな?あれ、なんかおかしいな?」
ジンナは治療中のケンを思い出し
「ふっ。治療中は『ころじでぐでー』って泣きわめいていたのにな!」
ジンナの表情が緩んだ。ケンはドキッとしてしまった。
リュナの事もあったのにかわいいと本気で思ってしまった。
短髪のボサボサ頭に団子っぱなで細い目に小さな歯並びの悪い口。
お世辞にも美人と言える要素はなかったが、笑った顔がケンには魅力的に見えた。
ケンは今まで普通に喋る事が出来たのに、自分がコミュ症だったことを思い出してしまった。
相手がかわいい女の子だと思った途端に喋れなくなってしまった。
「あ・・・うん。アレックスとエータはどこにいったんだろう?」
それとなくそんな事を言ったのだが、ジンナはケンを傷つけてしまったと勘違いした。
「あ、うん。私治療はできるけど、得意じゃないから痛かったんだよね。ごめんなさい・・・」
「え、なんでジンナが謝るんだ?」
「そ、それは君の事をバカにしたから・・・私の治療はみんな痛がるし・・・下手だから・・・」
「お、俺はジンナに感謝しているよ。本当だ!傷跡も残らないで治せるなんてすごいよ!」
「そ、そうかな。まあ私は昔からこれしかできないしね。お母さんから引き継いだ技なんだ」
「そうなんだ。お母さんは?」
「・・・私たち、子供を生む時に引き換えに死ぬの」
「え?」
「だから私のお母さんは私を生んだ時に死んじゃったの」
「・・・」
ケンは自分の浅はかさを感じた。ケンはどうしていいのかわからず、地面に座り両手をついて土下座をしていた。
「ごめんなさい。俺、バカだから。どうしようもないバカだから、こんな時にどうしたらいいのかわからなくて・・・すみませんでした」
「え、ちょ、君なにしてるの?」
「許してほしいとか言えないよ。恩人に向かって・・・もうジンナを傷つけたくないから行くね」
「ちょっと待って。もうお母さんの事は気にしてないよ。私生まれる時だからお母さん知らないし。・・・そうだ、じゃあ一つ教えてよ」
「はい、な、なんでしょう?」
「君の名前」
「え?」
「だ・か・ら!名前だよ名前。私はジンナ。あなたは?」
「ああ!ごめん。遅くなったけど、俺はケン」
「じゃあケン。命令!地面に座ってないで立ちなさい!」
「え、はは。はい。立ちました」
「そういえばさっきの人。お母さんを知っているの?」
「あー俺はわからないけど、聞いてみたら?答えてくれるか・・・答えてくれたらいいね」
「あは、何それ」
ケンはやっぱりジンナの笑顔が好きだった。
「あの人って立派な人よねー」
ケンは笑顔のジンナのセリフにドキっとした。
「や、やっぱりジンナもあんなイケメンが好きなんだね・・・」
ケンは一瞬嫉妬したが、アレックスと比較して勝てるところが何も思い浮かばなかった。
「イケメン?好きというか尊敬できるわね。私なんかにちゃんとお礼を言うなんて。醜いのに」
「じ、ジンナはかわいいよ!」
「・・・ケンはだれにでも『かわいい』って言うんでしょ?」
「いわな・・・」
俺はリュナの事が頭に浮かんでしまった。
小さなリュナはかわいかった。でも俺を殺そうと・・・食おうとしていた。
そこへエータがやってきて
「ケン、元気そうだな。体温は正常だが血と栄養が不足しているようだな。血色が悪い。アレックスと共に食事にしよう」
「あ、ああ。ジンナも一緒に?」
俺はジンナの方を見ていったがジンナは下を向いて
「私は行けない」
ケンはアレックスが最初会った時に、食事に関して信仰とかなんとか言っていたのを思い出し、無理に誘うのはやめた。
「そう・・・じゃあ、また後でね」
そう言ってエータと出ていった。
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