異世界に転生したのにスキルも貰えずに吸血鬼に拉致されてロボットを修理しろってどういうことなのか

ピモラス

文字の大きさ
上 下
13 / 167
ロボとの遭遇

馬車に乗っていたい

しおりを挟む
日の出前に寝ていたケンは、エータに叩き起こされた。
アレックスは既に身支度を整え、宿のカウンターで紅茶を飲んでいた。
「お、おはよう・・・ございます」
ケンは寝ぼけていたのだが、アレックスを見て目が覚めた。
「・・・」
「ケン、朝食は馬車の中か、待ち時間に取ってくれ。日の出と共に馬車が出るとのことだ」
フードを深く被った、不審人物にしかみえないエータはそういって出ていった。
アレックスも荷物を背負いエータに続いた。
俺は「エータは不審者には見えないのかな?」などと思いながら薄暗い外に出た。
大きな街だったが、早朝ということもあり、人も少なく静かだった。
街外れの石造りの門の前に来た。木で出来た門は開いており、数人の兵士?衛兵?が門周辺に立っていた。
俺は「ここがどこで、今からどこに向かうのか」が気になりだした。
門の内側にある、前に見た木の看板、おそらく馬車乗り場の表示だろう、の前に並んだ。
並んだというのも、俺たちがここに来た時には既に二人並んでいた。
ケンと似たような茶色っぽい服に、茶色か黒かわからない髪とズボン。
年齢はケンと同じか少し上か?
うーん俺が言うのもなんだが、特徴が無く地味な二人だ。
二人とも大きなリュックを背負っている。
ケン達が後ろに並ぶと、二人は軽く会釈をした。
ケンも無言でペコリと頭を下げ挨拶を返したが、アレックスは無反応で遠くを見ていた。
「やあ、おはよう。もう馬車がくるころかね?」
エータはフランクに話しかけたが、俺はエータの服装の不信感や、ロボットとバレるのではないかとヒヤヒヤしていた。
二人は気にした様子もなく、少し背の大きなふくよかな方が
「おはようございます。そろそろ日の出だし、もう来るでしょう」
そう丁寧に返事をしていた。
俺は馬車の中で、目的地や今後の予定を聞きたかったが、他人が気になり諦めることにした。
少ししたら空が明るくなって馬車が来た。
太陽が東から昇っているのなら、今から向かう道は北に向かっている?
そんな事を考えながら馬車に乗り込んだ。

馬車の中でもエータは気軽に二人に話しかけていた。
この二人は街に住んでいて、同じ商店で働いているが、北の農場が豊作で手が足りないから手伝いにいくようだった。ケンは「出稼ぎみたい」などと思っていたが、自称コミュ症なのでだんまりを決めていた。
アレックスはいつも通り目を閉じて置物になっていた。
「吸血鬼」の話しも出ていたが、ケンは冷静を装い、アレックスを見ないようにしていた。恥ずかしくて直視できないのも理由だった。
前にも聞いた「豚人」の他に、「狼男」という新たなファンタジー要素がすこし気になった。
おそらく昼前くらいに二人は途中下車した。

再出発した馬車は貸し切りになり、俺は話しをするチャンスだと思ったが、
「旦那がた。昼メシはどうしますか?昼過ぎになるがメシを食える店がある街に寄れますぜ。味はまあ、聞かんでくだせえ」
というダミ声がかかり、エータは
「うむ、寄ってくれ」
と即答した。
「エータ、『急げば今日中につく』って言ってたのに?」
「君とアレックスは食料を持っているな。何か忘れてはいないかね?」
「え?」
「御者にも食事が必要だ。馬も適度に休ませた方が効率はあがるだろう」
「あ・・・」
俺は浅はかな自分の発言に下を向いた。
エータは無機質だ、感情がない、と思っていたが、ちゃんと計算しているのか、的確だった。
「俺は・・・俺はただのバカだ・・・」
ケンは下を向き黙り込んで座っていた。
アレックスがケンの後頭部にそっと触れ
「・・・今から学べばよい・・・」
「そうだぞケン。未知を既知とするのは生存術だ」
アレックスとエータに慰められて、俺は余計に情けない気分になった。

馬車は順調に進み、草原と畑の中の小さな街の屋台のような店であんがい固くないパンとスープで昼食を済ませ、終点で降りた。
「「ここからは歩きだ」」
アレックスとエータがハモり気味に言ったのが面白かったが、俺は絶望して笑えなかった。
馬車の終点はさっきの昼食を食べた村のような小さな街より大きく、街の外周は木の柵がぐるっとあった。
二階建ての石造りの家か何かわからない建物もあり、子供たちが路地を走って遊んでいた。
ケンはこっちを見ている男の子に手をふり現実逃避をしていた。
「あー俺もあの子供たちみたいに無邪気に走り回って遊びたいなー」
ケンが手をふった子供はじっとケンを見ていたが、子供ならではの高い声で
「キャー!」
と悲鳴を上げて走り去っていた。
ケンは愕然として固まっていたが、
「さて挨拶は済んだかね?出発するぞ」
エータはケンの方も見ずに歩き出した。アレックスは既に離れた場所を歩いていた。
「あ、ああ・・・」
ケンも上の空で返事をしてトボトボ歩き出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

処理中です...