79 / 208
自由な速さで。
79話
しおりを挟む
「てか、シャルルくんは? 今はひとり?」
気づいたら自前のショコラを取り出して、男性はエスプレッソをより楽しんでいる。蜂蜜酒に漬けたオランジェット。優雅なティータイムを花屋で。
「なんでもいいだろ。で、なにしに来たわけで?」
「ここは花屋でしょ? 花を買いに来た。愛する妻のために。菊をベースで、冬に強そうな花を。もうこっちにはいないからね」
ベアトリスの質問に、ようやく答える気になった男性は、万聖節に合致したアレンジメントをオーダーする。寒さに強い菊。そこから考えられるアレンジメントを。
重い腰を上げ、ベアトリスは一応の説明をする。
「わかってると思うけども、墓地に置くなら鉢植え。でもここはアレンジメント専門。外に置くのは向いてないが」
フラワーアレンジメント、切り花は気温の変わりやすい屋外に置くことは、あまり勧められることではない。直射日光に当たりすぎても、花が痛む原因になること、花瓶の水が温まるとバクテリアが発生しやすくなってしまうことなど、様々な要因がある。
〈ソノラ〉は、アレンジメントしかやっていないため、墓に飾る鉢植えはやっていない。ゆえに万聖節には向いていないとも言える。
「それでいいよ。ささ、やっちゃってやっちゃって」
元々、墓石用にするつもりはなかったため、男性は了承した。
結局こうなるか、と、意を決してベアトリスは想像する。菊をベースに、墓、空、永遠。なにがあるだろう。目を瞑り、ピアノを弾くように、指でなにかを形作る。
時間にして数秒。目を開け、あたりの花を見回した。
「まず、用意するものはそうだな、ピンクのポンポンマム、白いスプレーマム、かすみ草、そしてシダ。全部プリザーブドフラワーで」
マムとは菊。丸くこんもりとしたピンク色のものと、枝状に花を咲かせる白いものの二種類を選択。かすみ草はナデシコ科の、小さな花を多数咲かせる草花。『幸福』の花言葉を持つ。シダは花というよりは、維管束の植物。主役というよりかは、名脇役というポジションだ。しかし花言葉を持ち、『誠実』といった意味。全て、長期間保存可能で特殊な加工をした、通称プリザーブドフラワーを使う。
それらをベアトリスはテーブルに乗せた。使う花はこれで全部。
しかし、男性は「ふむ」と、悩まし気に腕を組んだ。
「少ないね。それぞれ数本ずつしかないけど」
たしかに、これだと花瓶に生けたり、もしくはバスケットなどに飾ったりするには少し寂しい。もっと豪華なものになると予想していた男性は、若干不満そうだ。派手派手で、目がチカチカするくらいの。
ここで、そう言われると予想していたベアトリスが、裏からカゴに入った荷物を持ってくる。カゴを机の足元に置き、中身を机の上に広げた。
「今回はこれが主役だ。アクアバルーン」
気づいたら自前のショコラを取り出して、男性はエスプレッソをより楽しんでいる。蜂蜜酒に漬けたオランジェット。優雅なティータイムを花屋で。
「なんでもいいだろ。で、なにしに来たわけで?」
「ここは花屋でしょ? 花を買いに来た。愛する妻のために。菊をベースで、冬に強そうな花を。もうこっちにはいないからね」
ベアトリスの質問に、ようやく答える気になった男性は、万聖節に合致したアレンジメントをオーダーする。寒さに強い菊。そこから考えられるアレンジメントを。
重い腰を上げ、ベアトリスは一応の説明をする。
「わかってると思うけども、墓地に置くなら鉢植え。でもここはアレンジメント専門。外に置くのは向いてないが」
フラワーアレンジメント、切り花は気温の変わりやすい屋外に置くことは、あまり勧められることではない。直射日光に当たりすぎても、花が痛む原因になること、花瓶の水が温まるとバクテリアが発生しやすくなってしまうことなど、様々な要因がある。
〈ソノラ〉は、アレンジメントしかやっていないため、墓に飾る鉢植えはやっていない。ゆえに万聖節には向いていないとも言える。
「それでいいよ。ささ、やっちゃってやっちゃって」
元々、墓石用にするつもりはなかったため、男性は了承した。
結局こうなるか、と、意を決してベアトリスは想像する。菊をベースに、墓、空、永遠。なにがあるだろう。目を瞑り、ピアノを弾くように、指でなにかを形作る。
時間にして数秒。目を開け、あたりの花を見回した。
「まず、用意するものはそうだな、ピンクのポンポンマム、白いスプレーマム、かすみ草、そしてシダ。全部プリザーブドフラワーで」
マムとは菊。丸くこんもりとしたピンク色のものと、枝状に花を咲かせる白いものの二種類を選択。かすみ草はナデシコ科の、小さな花を多数咲かせる草花。『幸福』の花言葉を持つ。シダは花というよりは、維管束の植物。主役というよりかは、名脇役というポジションだ。しかし花言葉を持ち、『誠実』といった意味。全て、長期間保存可能で特殊な加工をした、通称プリザーブドフラワーを使う。
それらをベアトリスはテーブルに乗せた。使う花はこれで全部。
しかし、男性は「ふむ」と、悩まし気に腕を組んだ。
「少ないね。それぞれ数本ずつしかないけど」
たしかに、これだと花瓶に生けたり、もしくはバスケットなどに飾ったりするには少し寂しい。もっと豪華なものになると予想していた男性は、若干不満そうだ。派手派手で、目がチカチカするくらいの。
ここで、そう言われると予想していたベアトリスが、裏からカゴに入った荷物を持ってくる。カゴを机の足元に置き、中身を机の上に広げた。
「今回はこれが主役だ。アクアバルーン」
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
王太子さま、側室さまがご懐妊です
家紋武範
恋愛
王太子の第二夫人が子どもを宿した。
愛する彼女を妃としたい王太子。
本妻である第一夫人は政略結婚の醜女。
そして国を奪い女王として君臨するとの噂もある。
あやしき第一夫人をどうにかして廃したいのであった。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる