131 / 220
ショコラーデと紅茶。
131話
しおりを挟む
難しい顔をして自身を凝視してくる男性。値踏みされているような、そんな雰囲気にアニーはたまらず真相を探る。
「こちらの方は誰っスか? ショコラーデ関係の方ですか?」
甘い、だけじゃなく、ほろ苦い。体に染み込んだピラジン類やエステル類の香り。わかりやすい……のは彼女にだけだ。カカオはローストした時にその香りが花開く。それを浴びるということは、お菓子作りが趣味です、なんて人では絶対にない。
まだ自分の情報はなにも与えていないはずだが、一気に接近された。ゾクっとした冷や汗をかきながら、男性は視線の先を変更する。
「……どういうことですか、マクシミリアンさん」
服だって私服に着替えてあるし、飲食に関する、とかでもなくショコラーデであることまで見抜かれた。M.O.Fの試験よりも緊張が走る。無垢なこんな小さな少女に。
その焦った姿を感じ取り、マクシミリアンは満足。終始冷静なショコラティエの仮面が剥がれる。騙すのは好きだが、人が騙されているのもまた乙なもの。
「彼女は人一倍、鼻が利く子でね。匂いだけで色々読まれるよ。ヒヒッ」
もっと見ていたい、いや、聞いていたいが、揶揄うのもこのへんにしておこう。
「フリースラントではみんなできます。成人通過儀礼です」
もちろんそんなこともなく、さらに言えばアニーはまだ成人ですらないが、自信はある様子。悩んでいるのはこの男性……? とあたりをつける。ショコラーデ……まさか、今日のボクのオヤツを持ってきてくれた?
深く自身の深層に潜って自問自答していた男性だが、意を決して右手を伸ばす。
「……にわかには信じられませんが、マクシミリアンさんがそう言うのであれば、信じるしかないですね。いや、申し訳ない。クルト・シェーネマンです。よろしく」
なにか他の人とは違う。とすると、彼女と振るサイコロの目は面白いものになるか? と賭けに出た。失敗したらしたで、勉強にはなる。デメリットはない。時間が取られるだけ。
握手を求められたことに気づいたが、アニーはわけもわからずとりあえず握る。出されたらそのままというのは申し訳ないし。悪い人ではなさそうだし。マクシミリアンさんの連れだし。
「アニエルカ・スピラです。アニーでいいっス。で、どういったご用件ですか?」
オヤツはどこですか? と聞きたいところだが、一応ワンクッションおいて。ガッつくのもはしたないし。
ひとつ咳払いしたクルトが「それはですね」と本題に入ろうとしたところで、マクシミリアンが手で制す。
「まぁまぁ、そんな急がずに、まずは紅茶を飲もうじゃないか。あたしとこの人に合ったの、よろしく」
カフェについたらまずは飲み物。アニーに向けて注文を入れた。いつもの注文の仕方。ここではコーヒーではなく、アニーがいる時は紅茶を頼むようにしている。なにが出てくるかわからない。そんな楽しみがあるから。
「こちらの方は誰っスか? ショコラーデ関係の方ですか?」
甘い、だけじゃなく、ほろ苦い。体に染み込んだピラジン類やエステル類の香り。わかりやすい……のは彼女にだけだ。カカオはローストした時にその香りが花開く。それを浴びるということは、お菓子作りが趣味です、なんて人では絶対にない。
まだ自分の情報はなにも与えていないはずだが、一気に接近された。ゾクっとした冷や汗をかきながら、男性は視線の先を変更する。
「……どういうことですか、マクシミリアンさん」
服だって私服に着替えてあるし、飲食に関する、とかでもなくショコラーデであることまで見抜かれた。M.O.Fの試験よりも緊張が走る。無垢なこんな小さな少女に。
その焦った姿を感じ取り、マクシミリアンは満足。終始冷静なショコラティエの仮面が剥がれる。騙すのは好きだが、人が騙されているのもまた乙なもの。
「彼女は人一倍、鼻が利く子でね。匂いだけで色々読まれるよ。ヒヒッ」
もっと見ていたい、いや、聞いていたいが、揶揄うのもこのへんにしておこう。
「フリースラントではみんなできます。成人通過儀礼です」
もちろんそんなこともなく、さらに言えばアニーはまだ成人ですらないが、自信はある様子。悩んでいるのはこの男性……? とあたりをつける。ショコラーデ……まさか、今日のボクのオヤツを持ってきてくれた?
深く自身の深層に潜って自問自答していた男性だが、意を決して右手を伸ばす。
「……にわかには信じられませんが、マクシミリアンさんがそう言うのであれば、信じるしかないですね。いや、申し訳ない。クルト・シェーネマンです。よろしく」
なにか他の人とは違う。とすると、彼女と振るサイコロの目は面白いものになるか? と賭けに出た。失敗したらしたで、勉強にはなる。デメリットはない。時間が取られるだけ。
握手を求められたことに気づいたが、アニーはわけもわからずとりあえず握る。出されたらそのままというのは申し訳ないし。悪い人ではなさそうだし。マクシミリアンさんの連れだし。
「アニエルカ・スピラです。アニーでいいっス。で、どういったご用件ですか?」
オヤツはどこですか? と聞きたいところだが、一応ワンクッションおいて。ガッつくのもはしたないし。
ひとつ咳払いしたクルトが「それはですね」と本題に入ろうとしたところで、マクシミリアンが手で制す。
「まぁまぁ、そんな急がずに、まずは紅茶を飲もうじゃないか。あたしとこの人に合ったの、よろしく」
カフェについたらまずは飲み物。アニーに向けて注文を入れた。いつもの注文の仕方。ここではコーヒーではなく、アニーがいる時は紅茶を頼むようにしている。なにが出てくるかわからない。そんな楽しみがあるから。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる