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ショコラーデと紅茶。

127話

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 決意が少しずつ固まりつつあるユリアーネ。いや、最初から決まっていたのだが、再構築した、とするほうが正しいか。なんにせよ、安心して行ける。

「……ほんの一週間ですから。待っていてください。私も楽しみに待ってます、から」

 離れたくないのは同じ。本当は一緒に異国の地にも行ってみたいが、そうもいかない。ならば、できるだけ有益な旅に。紅茶も見てこよう。できるだけ具体的に。味とかは詳しく伝えられないかもしれないけど。

「……やっぱ一緒に行っちゃ——」

「ダメです。カフェもたくさん見てきますから。待っていてください」

 最後に一度、アニーが食い下がってくるのはユリアーネはわかっていた。ので食い気味に被せて却下する。せっかく決意したのだから。鈍らないように。

 言葉ではわかったつもりでも、まだ体が納得していないアニー。表情筋が不満を示す。

「ぬぅ……ん? カフェ? カフェっスか?」

 フランスもコーヒー文化ではあるのだが、それゆえに紅茶を飲む人々は、高級なものを選ぶ嗜好が強い。ブランドも高級なものが多い。となるとアニーの中に、グツグツと煮えたぎるものが再度浮上してくる。

 フランス紅茶の最大の特徴は、なんと言っても『香り』にある。フランス紅茶といえばフレーバーティー。あまり個性的な茶葉を使うことはなく、味よりも香りを楽しむことを主としている。そのことから、紅茶専門ではなく、他業種からの参戦が多い。

 例えば食料品を扱う《エディアール》《フォション》、ジャムの大手である《サン・ダルフォー》、香水やエッセンシャルオイルを扱う、マリー・アントワネットからも愛された《ニナス》など、独自の路線を貫く面白い紅茶が占める。行きたい。

 むしろフランスに行く理由は、今のところお店のため、というのがユリアーネにとっては一番。もっともっと貪欲に吸収していかなければ、アニーに置いていかれる、そんな危惧もある。

「えぇ、フランスといえばカフェ、みたいなところもありますからね。ショコラトリーなんかも気になりますし、たくさん勉強してきます。やはり、こういうものは実際に行かないと、わからないですから」

 紅茶を飲み終わる。体に染み渡る。なんだかんだ言って、信頼できる相方。お互いに得意分野の知識を分け合い、お店をよりよいものにしたいという気持ちは一緒。

 まだブツブツと口を動かすアニー。一応納得はしつつも、まだ自分のターンは終わっていない。持っている手札を確認しつつ、考え事。

「カフェ……カフェっスね……」

 悪巧みをしているようにしか思えないため、ダーシャが釘を刺す。
 
「アニーちゃんまで行っちゃったら、お店もピンチだからね」

 ただでさえお客さんの増えてくる時期に突入する。どうせなにかしらの理由をつけてついて行こう、と画策しているのはバレバレ。
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