上 下
114 / 220
花と衣装。

114話

しおりを挟む
 時刻は一六時を過ぎ、アニーとユリアーネは上がる時間に。代わりのアルバイトの人が到着し、軽く挨拶をしたあと、更衣室で二人は着替える。

 そんな中、まだ置いていかれているアニーは、ディアンドルを脱ぎつつユリアーネにすがる。
 
「ユリアーネさん、ユリアーネさん。なんかあの二人複雑な感じでしたけど、どうなってるんですか? それと、たんぽぽコーヒーって——」

「たんぽぽコーヒーは、実はコーヒーではないんです。たんぽぽの根の部分を、コーヒー豆と同じ様に乾燥や焙煎して、抽出したものです。薄めのコーヒー、といったところでしょうか」

 あまり店で提供しているところはないが、ブッフでは常備しているらしいことに、ユリアーネも驚いた。せっかくなので、ヴァルトでも置いてみよう、と画策する。

 せっかく着たディアンドルを脱ぐことに抵抗はあったが、意を決して脱ぐアニー。理解しながら喋っているため、ユリアーネより脱ぐのが遅くなる。

「ほぇぇ……というか、コーヒーじゃなくないですか? どっちかと言えば、お茶?」

 頭に絵疑問符を浮かべ、自分なりの解答を出す。紅茶やそっちに近い気がする。味がコーヒーというだけで。

 それについては、ユリアーネも肯定する。

「別名、たんぽぽ茶とも言われています。食物繊維やビタミン、ミネラルなども豊富で、カフェインを摂りたくない方にもオススメです」

 夜寝る前にもいいかもですね、と付け加え、コーヒーの万能さをアニーにアピール。もしアニーが飲んでみたいと言ったなら、今日淹れてみようと考える。

 だが、違うところにアニーは引っかかっていた。

「なるほど。しかし、なんでパウラさんはカフェインを避けるんでしょうかね? 気になります」

「……」

 もう、このままでいいんじゃないかと、ユリアーネは匙を投げかけている。知らなくても別に困らないだろう。ニブすぎて、アニーのこれからの恋愛事情などが心配になってくる。

 さらにアニーは続ける。いつの間にか着替えは終わっている。

「それにしても、パウラさんも綺麗な方ですから、ディアンドル見てみたいですね。恋人募集中っスかね? 左かな? それともいる感じで右ですかね? ユリアーネさんはどう思います?」

「……右です」

 それしかない。ユリアーネは呆れつつ答えた。

 だが、アニーにはもちろん伝わらないで、勝手に暴走する。

「やっぱり! そうっスよね。いますよね、もしよければ着てもらって一緒に——」

「ダメです。ゆっくりしてもらいます。我々も帰りますよ」

 荷物をまとめて、準備万端。ユリアーネは先にドアを開け、更衣室から出た。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

もふもふで始めるVRMMO生活 ~寄り道しながらマイペースに楽しみます~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:16,146pt お気に入り:2,119

結婚に失敗しました

恋愛 / 完結 24h.ポイント:463pt お気に入り:233

受胎告知・第二のマリア

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

バッドエンドから逃げられない

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:171

秘密の関係

BL / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:488

【完結】EACH-優しさの理由-

SF / 完結 24h.ポイント:276pt お気に入り:2

焔躯迷図

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:170pt お気に入り:0

3度目のチャペルにて

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,831pt お気に入り:3

処理中です...