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花と衣装。

100話

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そのままテオは続ける。

「そこで特殊な焙煎方法で、そのクロロゲン酸と、同じく胃を荒らすタンニンを大幅にカットしたコーヒー豆がこれ、『タイラーズコーヒー』」

 と、下の戸棚からテオは豆の入った袋を取り出す。大きな字で『オーガニックコーヒー』とあり、体に良さそうな文言。それを開ける。香りは普通のコーヒーと変わらない。

 アニーは近づいて、まじまじと袋を凝視する。

「……こんなものまであるんですね……ウチにはないです」

 ひょっとして店長とかも知らない? と少し優位に立った気がして嬉しい。帰ったら自慢しよう。

「アメリカ生まれで少しずつ浸透してきてるんだけどね、苦味がだいぶ抑えられているぶん、人を選ぶかも。とりあえず、あの人にはそれでいいか聞いてみるよ」

 そう言ってテオが袋を持って説明しにその男性の元へ。快諾してくれたようだ。
 
「ありがとうございます。いやぁ、一件落着っスね。よかったよかった」

 アニーもひと安心。胃痛が抑えられればいいなと、陰ながら男性を応援する。

 その後、引き続きホールを担当していると、いつの間にか時刻は一九時。仕事を終えたであろう人々が続々と入店してくる。

 それに比例して増えるビールの注文。コーヒーはほとんどなくなった。

「ビール増えてきましたね。初めてですけど……ホントにこんな飲むんですね……!」

 一応、ヴァルトにもアルコール類はあるが、あまり頼む人はいない。近くにビアホールもビアガーデンもある。飲むならそちらだからだ。しかしここは全てを兼ねる。意表を突かれる注文にも対応しなければならない。

「カフェだとあまり提供しないからね。二二時くらいには落ち着くから。それまで大丈夫そう? 夕食もそれからで」

 初日なのに、一気に働かせすぎかとテオは焦るが、アニーのほうはなんとか保てている。休憩もあまり取れずにいるが、なんとなくこの疲れが心地いい。少しハイになってきた。

「ありがとうございます。それからでいただきます」

 賄い付き。いつもはビロルか店長あたりのものばかりだったが、久々に他の人の味を確かめる時。アニーはワクワクする。忙しい隙間を縫って、メニューを見る。そして知る事実。

「紅茶が……ない」
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