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必要と不要。

74話

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「怖っ。それでここに来たの」

「……はい、他に頼れる方がわからず……すみません……」

 逃げるようにアルトバウを後にしたユリアーネは、カッチャの家が同じ区であることを知っていたため、ダメもとで連絡してみると、許可が出たため一時避難。家族には同じ店のアルバイトが泊まりに来る、と伝えたら全然オッケーとのこと。

 とりあえず、ユリアーネは寒い中走ってきたこともあって、シャワーで温まっておいで、とカッチャの両親から言われたため、ありがたく使わせてもらうことに。カッチャの部屋着を借りており、サイズがひとつ大きい。そして今に至る。

 イスの背もたれに寄りかかり、足を組んで少々行儀悪くカッチャは、ベッドに腰掛けてしょぼくれるユリアーネに問いただす。

「てかなに、ケンカしてるの? そんな感じじゃなかったけど」

 夕方、客として来たアニーは別に怒っている風でもなく、会いたくて会いに来た、という風に感じた。なにがあってこんなことに。
 
「……いえ、そんな覚えはないのですが……昨夜くらいから突然メッセージが送られてきて……」

 状況から見て、まるで叱られているかのようなユリアーネは、再度思い返すが、理由が見つからない。現在は音を切っているため、携帯は静かだが、先ほどからずっと明滅している。嫌な予感しかしない。

「メッセージ?」

 不思議がるカッチャに、おそるおそるユリアーネは携帯を渡す。いつもより重く感じる。まるで、アニーからのメッセージが実際に重さを携えているかのよう。

「?」

 なにに対して怯えているのか。しかし、点けるやいなや理解する。頭を抱えてその画面をカッチャは凝視した。

「……はー……あの、バカ」

 未読九六件。さらにこうしている間にも増え続ける。中身を確認すると、ユリアーネの名前を呼ぶだけのものがほとんど、場所を尋ねるものや、紅茶淹れますよといったものまで。

 カッチャはより深く背もたれに体重をかける。

「なーんで、こうなっちゃったかね」

 画面を指でタップしながら、呆れ気味にさらにひとつひとつ確認していく。すると。

<あ、既読つきました! どこっスか? 帰りましょう!>

「はぁー?」

 アニーからの内容に、カッチャは呆れた声をあげた。この二人、どういう関係?

「なに、帰りましょうって? どっか住んでんの? 一緒に?」

 ルームシェアしているなんて話は聞いていないが、秘密にしていただけかもしれない。別にどこに住んでいるのか、聞こうとも思わない。
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