Sonora 【ソノラ】

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ヴォランテ

229話

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「あんたは首を突っ込んでくるな。ややこしい」

 というか、接客じゃなくて調理担当、とか言ってなかったっけ? なんでしゃしゃり出てくる?

 しかし女性は意に介さず、自分のペースを崩さない。ベルのほうにも同じものを。

「そう言われると寂しいね。だが、これは自慢の特製スモアだ。食べればすぐに機嫌はよくなる」

 自信満々に提供するお菓子。素材からなにからひとつも手を抜かず、じっくりと吟味を重ねて完成した。よかったらテイクアウトもどうぞ? 不敵な笑み。

 目をキョロキョロと話手に合わせていたベル。ここで入り込む隙を発見。

「えーと、お友達?」

 上目遣いで確認。探るように。

 お友達。それもいいが、女性はもっと我々の関係を正しく言い表したものがある、と自負していた。

「むしろ相棒だ。ジェイド・カスターニュ。よろしく」

「誰が相棒よ。疫病神。トラブルメーカー。粘着質」

 百歩譲ってもプラスには働かない三つの単語。握手をする両者を眺めながら、オードは呆れている。

 はっはっは、とわざとらしく声を上げながらジェイドはやんわりと否定。

「ひどい言い草だね。まるで私がオードに対して被害を与えているかのような、そんな誤解を生んでしまう」

「は、はぁ……」

 事態がまだ完全には把握できないベルは、曖昧に返すばかり。とりあえず名前だけ伝えておいた。

 だが、ぶつかり合う互いの意見にオードは立腹。前例があるので違うとは言わせない。

「誤解じゃないでしょ。実際に。被害受けてんのよ。何回タダ働きさせられたら気が済むワケ?」

 持ってくるアイディアが悉くボツになり、その度に使った時間を返せと言いたくなる。いや、実際に言っている。つまり。疫病神以外の何者でもない。

 そこは反省しつつも、ギャンブルが辞められない破産者のようにジェイドは拝み倒す。

「今回こそは! いけると思うんだよ。倍にして返すから!」

 言うまでもないが勤務時間中である。

 それを唖然としながら聞いていたベルではあるが、とりあえず情報をまとめてみた。

「……なんの話? えっと、ジェイドはショコラで、オードはカルトナージュで。ってことは、二人で商品を作ってる、ってこと?」

 今の会話だとこういうことになる。フランスが世界に誇る技術の組み合わせ。羨ましい。どこで売るのだろう、この店?

 その問いには、ジェイドも表情を曇らせ、腕を組んで考え込む。

「あぁ、だがやはり中々上手くいかないね。考えることが山のようにある。ベルはなにかやっているのかい?」

 だとしたら、オードに目をつけたのは流石だ。彼女は四角に命を吹き込む。容器なのに、他人に『考えさせる』。
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