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ヴォランテ
228話
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「で? ガーランドとかリースをあたしに教えてほしい、ってこと? ノエル仕様の」
七区にある老舗ショコラトリー〈WXY〉。カフェスペースの併設してある人気店。夕暮れ時の混雑。その窓側の座席でオード・シュヴァリエは要点をまとめた。木製のスクエアテーブルの上には無糖の紅茶。メインであるショコラと組み合わせるために。
一度、リオネルの花屋で会話して以来、たまに学園内でも世間話をするくらいには近づいた。まだ友達と呼んでいいか難しい程度ではあったが、カフェに行ったらもういいでしょう。彼女の中でベル・グランヴァルはそのカテゴリに入った。
「そういう講座とか、カルトナージュ以外でもやってたりしない?」
抜け道を探していたベル。〈ソノラ〉では教えてくれない。ネットの動画じゃ物足りない。となると、次に思い浮かぶのはガーランドやリースは『手芸』でもあるということ。その証拠に、雑貨屋などでこれらは見かけることが多い。つまり『カルトナージュ』を生業とする彼女なら。と思いついた次第。
うーん、と斜め上のほうを見上げながらオードは首を傾げる。そういやこの時季は、と納得。
「やってるっちゃやってるけど。ちなみにカルトナージュ『以外』じゃなくて、カルトナージュ『として』リースを作ることもできるよ。やってみる? もちろん有料」
当然。安売りなどしないのが職人というもの。責任感を持つためにもお金はいただく。
「ホントにッ!? 是非!」
有料というのはもちろん、無料と言われてもなにかしら払う予定であったベル。まずは第一関門はクリア。花とカルトナージュの合わせ技。期待に胸が高鳴る。
そこへお楽しみのショコラ到着。焼いたマシュマロとショコラをビスケットなどで挟んだお菓子、スモア。だが、ここのスモアは若干特徴的。パイ生地を使い、サクサクとした食感と、もちもちとしたマシュマロ。それに似合うマダガスカル産のビターショコラ。三位一体の完成形。
挟む、というよりもパイ生地でできた土台の穴に『流し込んだ』ような、分厚い形。乗った皿が静かにテーブルの置かれる。そしてついでに。
「おやおや、なにやら面白そうな話をしてるね。妬けてしまう」
持ってきた店員が会話に参加してくる。スラリとした細身の女性。黒を基調とした制服のおかげで、さらにスタイルの良さが際立つ。
それをぐにゃりと歪んだ顔で迎えるオード。やっぱりか、という心の声が聞こえてきそうなもの。
七区にある老舗ショコラトリー〈WXY〉。カフェスペースの併設してある人気店。夕暮れ時の混雑。その窓側の座席でオード・シュヴァリエは要点をまとめた。木製のスクエアテーブルの上には無糖の紅茶。メインであるショコラと組み合わせるために。
一度、リオネルの花屋で会話して以来、たまに学園内でも世間話をするくらいには近づいた。まだ友達と呼んでいいか難しい程度ではあったが、カフェに行ったらもういいでしょう。彼女の中でベル・グランヴァルはそのカテゴリに入った。
「そういう講座とか、カルトナージュ以外でもやってたりしない?」
抜け道を探していたベル。〈ソノラ〉では教えてくれない。ネットの動画じゃ物足りない。となると、次に思い浮かぶのはガーランドやリースは『手芸』でもあるということ。その証拠に、雑貨屋などでこれらは見かけることが多い。つまり『カルトナージュ』を生業とする彼女なら。と思いついた次第。
うーん、と斜め上のほうを見上げながらオードは首を傾げる。そういやこの時季は、と納得。
「やってるっちゃやってるけど。ちなみにカルトナージュ『以外』じゃなくて、カルトナージュ『として』リースを作ることもできるよ。やってみる? もちろん有料」
当然。安売りなどしないのが職人というもの。責任感を持つためにもお金はいただく。
「ホントにッ!? 是非!」
有料というのはもちろん、無料と言われてもなにかしら払う予定であったベル。まずは第一関門はクリア。花とカルトナージュの合わせ技。期待に胸が高鳴る。
そこへお楽しみのショコラ到着。焼いたマシュマロとショコラをビスケットなどで挟んだお菓子、スモア。だが、ここのスモアは若干特徴的。パイ生地を使い、サクサクとした食感と、もちもちとしたマシュマロ。それに似合うマダガスカル産のビターショコラ。三位一体の完成形。
挟む、というよりもパイ生地でできた土台の穴に『流し込んだ』ような、分厚い形。乗った皿が静かにテーブルの置かれる。そしてついでに。
「おやおや、なにやら面白そうな話をしてるね。妬けてしまう」
持ってきた店員が会話に参加してくる。スラリとした細身の女性。黒を基調とした制服のおかげで、さらにスタイルの良さが際立つ。
それをぐにゃりと歪んだ顔で迎えるオード。やっぱりか、という心の声が聞こえてきそうなもの。
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