221 / 235
マルカート
221話
しおりを挟む
今、弟の心を支配するのはあいつ。ベアトリスとしては許せぬ狼藉。となると、選択肢を与えてみる。
「あいつを亡き者にするか、忘れるまで頭をカチ割られるか。選べ」
「いや、過激派」
提唱する極端すぎる二択に、流石のシャルルも即座にノン。というか頭を叩かれる、とかではなくカチ割られるの? 忘れるまでと言われても、一回で終わらない? 僕の人生。
どちらもダメ。なら仕方ない。とならないのがベアトリス。静かに立ち上がる。
「最終手段だ。これだけは使いたくなかったが。お前も立て」
「……どういうこと?」
とりあえず言われるがままシャルルは起立。なにが始まるのか。だいたい良くないこと。この予想は当たる。たぶん。
またも失望のような嘆息をするベアトリス。そしてそのまま弟の横へ。移動すると、両肩を掴む。
「マイナスとマイナスをかけてプラスにする。数学の話だ。これしかないだろう」
つまり要約すると。お互いに辱められた部分と部分を。合わせるしかない。そういうこと。仕方なしに。はぁ。仕方ない。
いや、どういうこと? と、シャルルは両手首を掴んで拘束を解く。
「使いたくない、ってわりには随分乗り気な気もしたけど……」
ひとまず回避。というか、上手く話を逸らされた気がする。でも、そのおかげであの人が、幸せな気持ちで扉を出ていけたなら。それでいいか、と落ち着く。自分達の仕事。それは花を介して幸せにすることなのだから。
またもあしらわれ、ムスッと機嫌の悪くなるベアトリス。まぁ、いつでもチャンスはある。焦る必要もない。ポケットからひとつ、あるものを取り出し手渡す。
「それでも噛んでおけ。なにもないよりマシだろう」
それは一枚の板ガム。パッケージの紙に豆のマーク。
受け取り、戸惑いながらもシャルルは中身を把握。とりあえず感謝。
「コーヒー味。こんなのあるんだ」
フルーツやミントなんかが主流だが、初めて見る味。シャルルは味の予想をしてみるが、うん、中々合うんじゃないかな? と好感触。
「もらったが私はいらん」
そもそも本物を飲んでいるベアトリス。さらに追いコーヒーは必要ない。あとで感想だけ聞いておこうか。今日も閉店。お疲れ様。そろそろ店内もノエル仕様に変えよう。色々考え、ゆっくりと歩きながらアレンジメントを眺める。この時間が好きだ。
サラセニア。本当の花言葉は『変わり者』。そして『憩い』。
花はいつか枯れる。だから残せるものは記憶、思い出だけ。いつまでも彼は覚えてくれているのだろうか。あの花の色彩と。甘い蜜の香りを。
「あいつを亡き者にするか、忘れるまで頭をカチ割られるか。選べ」
「いや、過激派」
提唱する極端すぎる二択に、流石のシャルルも即座にノン。というか頭を叩かれる、とかではなくカチ割られるの? 忘れるまでと言われても、一回で終わらない? 僕の人生。
どちらもダメ。なら仕方ない。とならないのがベアトリス。静かに立ち上がる。
「最終手段だ。これだけは使いたくなかったが。お前も立て」
「……どういうこと?」
とりあえず言われるがままシャルルは起立。なにが始まるのか。だいたい良くないこと。この予想は当たる。たぶん。
またも失望のような嘆息をするベアトリス。そしてそのまま弟の横へ。移動すると、両肩を掴む。
「マイナスとマイナスをかけてプラスにする。数学の話だ。これしかないだろう」
つまり要約すると。お互いに辱められた部分と部分を。合わせるしかない。そういうこと。仕方なしに。はぁ。仕方ない。
いや、どういうこと? と、シャルルは両手首を掴んで拘束を解く。
「使いたくない、ってわりには随分乗り気な気もしたけど……」
ひとまず回避。というか、上手く話を逸らされた気がする。でも、そのおかげであの人が、幸せな気持ちで扉を出ていけたなら。それでいいか、と落ち着く。自分達の仕事。それは花を介して幸せにすることなのだから。
またもあしらわれ、ムスッと機嫌の悪くなるベアトリス。まぁ、いつでもチャンスはある。焦る必要もない。ポケットからひとつ、あるものを取り出し手渡す。
「それでも噛んでおけ。なにもないよりマシだろう」
それは一枚の板ガム。パッケージの紙に豆のマーク。
受け取り、戸惑いながらもシャルルは中身を把握。とりあえず感謝。
「コーヒー味。こんなのあるんだ」
フルーツやミントなんかが主流だが、初めて見る味。シャルルは味の予想をしてみるが、うん、中々合うんじゃないかな? と好感触。
「もらったが私はいらん」
そもそも本物を飲んでいるベアトリス。さらに追いコーヒーは必要ない。あとで感想だけ聞いておこうか。今日も閉店。お疲れ様。そろそろ店内もノエル仕様に変えよう。色々考え、ゆっくりと歩きながらアレンジメントを眺める。この時間が好きだ。
サラセニア。本当の花言葉は『変わり者』。そして『憩い』。
花はいつか枯れる。だから残せるものは記憶、思い出だけ。いつまでも彼は覚えてくれているのだろうか。あの花の色彩と。甘い蜜の香りを。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
みちのく銀山温泉
沖田弥子
キャラ文芸
高校生の花野優香は山形の銀山温泉へやってきた。親戚の営む温泉宿「花湯屋」でお手伝いをしながら地元の高校へ通うため。ところが駅に現れた圭史郎に花湯屋へ連れて行ってもらうと、子鬼たちを発見。花野家当主の直系である優香は、あやかし使いの末裔であると聞かされる。さらに若女将を任されて、神使の圭史郎と共に花湯屋であやかしのお客様を迎えることになった。高校生若女将があやかしたちと出会い、成長する物語。◆後半に優香が前の彼氏について語るエピソードがありますが、私の実体験を交えています。◆第2回キャラ文芸大賞にて、大賞を受賞いたしました。応援ありがとうございました!
2019年7月11日、書籍化されました。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
メカメカパニックin桜が丘高校~⚙②天災科学者源外君の日曜日
風まかせ三十郎
キャラ文芸
天災科学者源外君の日曜日。それは破壊と殺戮と陰謀渦巻く、いわゆる狂気の実験の時間であった。学友たちが海や山や川やゲーセンに繰り出している頃、彼は研究室に引きこもり、相も変わらず世界を破壊と殺戮と混沌と、わずかばかりの進歩のために研究に没頭しているのだ。そんな彼を溢れんばかりの愛と、それを凌駕する大いなる不安と恐怖で見つめる天才美少女科学者愛輝さん。それは科学に魂を売った故、世界一冷血な性格の彼女が、唯一人間性を発露できる時間でもあった。そんな二人の恋愛ギャグSFロマン。ぜひご賞味ください。
※「メカメカパニックin桜が丘高校①」の短編集です。前作を気に入ってくれた読者の方、ぜひ、ご一読を。未読の方はぜひ①の方からお読みください。
萬事処あやし亭
霞花怜
キャラ文芸
突然の火事で故郷である里山を失った鳥天狗の少年は、零と名乗る人鬼に拾われ「睦樹」という名を与えられる。名前も火事の時の記憶もない少年は零の住処『隠れ家』に身を置くことに。そこは行き場のない訳あり妖怪たちの住む場所。一風変わった萬事処『あやし亭』でもあった。妖狐の一葉、猫又の双実、化狸の参太、人魚の五浦、死ねない人の志念、正体不明の紫苑。一癖も二癖もある『あやし亭』の妖達と火事の真相と自分の記憶を解明すべく動き出す。どうやらこの件には、火事に遭った里山と隣接する芽吹村を再建すると名乗り出た札差・近江屋佐平次が関わっているようで―――。妖怪と人が交わる江戸、人の世で生きる妖が事件を解き明かす怪奇譚。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
発生1フレ完全無敵の彼女に面倒事吸い込みがちな俺でも勝てますか!?
安条序那
キャラ文芸
エージェント稼業に身を置きながら高校生生活を送る主人公。
血の繋がらない妹と許嫁に囲まれてのんびりのほほんと過ごしていたのだが、
『糺ノ森高校に転校して、ある女生徒を始末する』という簡単な依頼から巨大な陰謀に巻き込まれてしまう。
依頼の対象は『発生1フレームから完全無敵』の女子高生。これを始末しなければならないのだが――。
それに対する主人公は……。
『地上の相手を三メートルくらい吸い込む』程度の能力。
そんな貧弱な能力で、果たして無敵の彼女を始末することができるのか?
そしてその依頼の裏に隠された目的とは――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる