203 / 235
マルカート
203話
しおりを挟む
「ヒマワリは知っての通り、様々な使い方ができる。花として、種として、緑肥として、化粧品として。まさに様々な顔だ」
なるほど。たしかに、ヒマワリは土壌改良にも役立つと聞いたことがあります。侮れませんね、まさかそんな万能選手がこんなに近くにいただなんて。
「本来、告白なんかではブーケで渡すべきなのかもしれんが、ウチはアレンジメント専門だ。そっちは諦めてくれ」
アレンジメントとブーケ。よく考えたら、違いがあると今気づきました。持ち運びするのであれば、片手で持てるブーケのほうが、受け取るほうもいいかもしれません。アレンジメントとなると、袋にでも入れない限り両手になってしまいます。袋のまま渡す、というのはないでしょう。うん、ないです。
「そこで、持ち運べるように、持ち手の付いたバスケット型。せっかくなので、四種類のシリーズを使おう。ヴィンセントネーブル、サンリッチオレンジ、プロカットプラム、レモネード。緑としてモンステラや、フィラフラワーとしてカスミソウ。その他にカラーなんかも合うな」
なにやらよくわからない単語が並べられましたが、バスケットにセロハンシートを巻き、その上に水を含んだスポンジ。そこに花を挿していくと、不思議と形となっていきます。さらに様々な角度から微調整していくと、より立体感が出てきて、少しずつ高揚する自分に気づきました。
「しっかりと、フローラルフォームを隠すように、隙間を埋める花も。これがないと、どんなに花の見栄えがよくても大減点だからな」
そういったところにも気を使うと。たしかに足元がお留守になっていたというか。なんというか、すごくいいスーツを着ているのに、下の丈が短すぎて靴下が見えているような。そんな感じになってしまいます。これはいけません。
いつの間にか、花というものの面白さがわかってきた気がしました。もちろん、彼女のことが最優先でここに来たわけではありますが。なんだか奥の深さ、というよりも、浅瀬では浅いなりの楽しみ方があるというか。
彼女であればどんな花が似合うのだろう、とか。もし自分のためであれば、どんな花を選んでくれるのだろう、とか。そういうことを考えるだけでも楽しいかもしれません。全然わからない世界ではありますが、フランスに生まれればみんなこうなのでしょうか。
「よし、できた。パパッと作ったにしては、まぁいいだろ。フラワーアレンジメントは……花は、自分の口から伝える以上に、深い奥底から伝えてくれる。時もある」
なんとなくですが、その気持ちはクラシックをやっているとわかる気がします。いや、クラシックに限らないかもしれません。ロックでもジャズでも、絵画やダンス、料理などでも。込めた自身の想いというものを、違った形で、違った形だからこそ表現できるというのもあるのでしょう。
なるほど。たしかに、ヒマワリは土壌改良にも役立つと聞いたことがあります。侮れませんね、まさかそんな万能選手がこんなに近くにいただなんて。
「本来、告白なんかではブーケで渡すべきなのかもしれんが、ウチはアレンジメント専門だ。そっちは諦めてくれ」
アレンジメントとブーケ。よく考えたら、違いがあると今気づきました。持ち運びするのであれば、片手で持てるブーケのほうが、受け取るほうもいいかもしれません。アレンジメントとなると、袋にでも入れない限り両手になってしまいます。袋のまま渡す、というのはないでしょう。うん、ないです。
「そこで、持ち運べるように、持ち手の付いたバスケット型。せっかくなので、四種類のシリーズを使おう。ヴィンセントネーブル、サンリッチオレンジ、プロカットプラム、レモネード。緑としてモンステラや、フィラフラワーとしてカスミソウ。その他にカラーなんかも合うな」
なにやらよくわからない単語が並べられましたが、バスケットにセロハンシートを巻き、その上に水を含んだスポンジ。そこに花を挿していくと、不思議と形となっていきます。さらに様々な角度から微調整していくと、より立体感が出てきて、少しずつ高揚する自分に気づきました。
「しっかりと、フローラルフォームを隠すように、隙間を埋める花も。これがないと、どんなに花の見栄えがよくても大減点だからな」
そういったところにも気を使うと。たしかに足元がお留守になっていたというか。なんというか、すごくいいスーツを着ているのに、下の丈が短すぎて靴下が見えているような。そんな感じになってしまいます。これはいけません。
いつの間にか、花というものの面白さがわかってきた気がしました。もちろん、彼女のことが最優先でここに来たわけではありますが。なんだか奥の深さ、というよりも、浅瀬では浅いなりの楽しみ方があるというか。
彼女であればどんな花が似合うのだろう、とか。もし自分のためであれば、どんな花を選んでくれるのだろう、とか。そういうことを考えるだけでも楽しいかもしれません。全然わからない世界ではありますが、フランスに生まれればみんなこうなのでしょうか。
「よし、できた。パパッと作ったにしては、まぁいいだろ。フラワーアレンジメントは……花は、自分の口から伝える以上に、深い奥底から伝えてくれる。時もある」
なんとなくですが、その気持ちはクラシックをやっているとわかる気がします。いや、クラシックに限らないかもしれません。ロックでもジャズでも、絵画やダンス、料理などでも。込めた自身の想いというものを、違った形で、違った形だからこそ表現できるというのもあるのでしょう。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
死が二人を分かつまで
KAI
キャラ文芸
最強の武術家と呼ばれる男がいた。
男の名前は芥川 月(あくたがわ げつ)殺人術の空術を扱う武人。
ひょんなことから、少女をひとり助け出したが、それが思いもよらない方向へと彼の人生を狂わせる!
日本の・・・・・・世界の『武』とはなにか・・・・・・
その目で確かめよ!!
義妹がいればそれだけでいいのでしょう?
新野乃花(大舟)
恋愛
ソリッド伯爵はミラというれっきとした婚約者を持っておきながら、妹であるセレーナにばかり気をかけていた。そのセレーナも兄が自分の事を溺愛しているということをよくわかっているため、ことあるごとに被害者面をしてミラの事を悪者にし、自分を悲劇のヒロインであると演出していた。そんなある日の事、伯爵はセレーナさえいてくれればなんでもいいという考えから、ミラの事を一方的に婚約破棄してしまう…。それこそが自らを滅ぼす第一歩になるとも知らず…。
風切山キャンプ場は本日も開拓中 〜妖怪達と作るキャンプ場開業奮闘記〜
古道 庵
キャラ文芸
弱り目に祟り目。
この数ヶ月散々な出来事に見舞われ続けていた"土井 涼介(どい りょうすけ)"二十八歳。
最後のダメ押しに育ての親である祖母を亡くし、田舎の実家と離れた土地を相続する事に。
都内での生活に限界を感じていたこともあり、良いキッカケだと仕事を辞め、思春期まで過ごした"風切村(かざきりむら)"に引っ越す事を決める。
手元にあるのは相続した実家と裏山の土地、そして趣味のキャンプ道具ぐらいなものだった。
どうせ自分の土地ならと、自分専用のキャンプ場にしようと画策しながら向かった裏山の敷地。
そこで出会ったのは祖父や祖母から昔話で聞かされていた、個性豊かな妖怪達だった。
彼らと交流する内、山と妖怪達が直面している窮状を聞かされ、自分に出来ることは無いかと考える。
「……ここをキャンプ場として開いたら、色々な問題が丸く収まるんじゃないか?」
ちょっとした思いつきから端を発した開業の話。
甘い見通しと希望的観測から生まれる、中身がスカスカのキャンプ場経営計画。
浮世離れした妖怪達と、田舎で再起を図るアラサー男。
そしてそんな彼らに呆れながらも手を貸してくれる、心優しい友人達。
少女姿の天狗に化け狸、古杣(ふるそま)やら山爺やら鎌鼬(かまいたち)やら、果ては伝説の大妖怪・九尾の狐に水神まで。
名も無き山に住まう妖怪と人間が織りなすキャンプ場開業&経営の物語。
風切山キャンプ場は、本日も開拓中です!
--------
本作は第6回キャラ文芸大賞にて、奨励賞を受賞しました!
女装する美少女?からエスケープ!
木mori
キャラ文芸
99代目閻魔大王の、をねゐさんから突如100代目候補として指名された日乃本都(みやこ)、男子高校生。何者かに呪いをかけられて巨乳女子高生になってしまった。男子へ復帰するには、犯人を探し出して呪いを解かせるか、閻魔大王になって、強大な魔力で呪い解除するしかない!都に男子復帰の未来はあるのか?
君を愛することは無いと言うのならさっさと離婚して頂けますか
砂礫レキ
恋愛
十九歳のマリアンは、かなり年上だが美男子のフェリクスに一目惚れをした。
そして公爵である父に頼み伯爵の彼と去年結婚したのだ。
しかし彼は妻を愛することは無いと毎日宣言し、マリアンは泣きながら暮らしていた。
ある日転んだことが切っ掛けでマリアンは自分が二十五歳の日本人女性だった記憶を取り戻す。
そして三十歳になるフェリクスが今まで独身だったことも含め、彼を地雷男だと認識した。
「君を愛することはない」「いちいち言わなくて結構ですよ、それより離婚して頂けます?」
別人のように冷たくなった新妻にフェリクスは呆然とする。しかしこれは反撃の始まりに過ぎなかった。
パスカルからの最後の宿題
尾方佐羽
歴史・時代
科学者、哲学者として有名なパスカルが人生の最後に取り組んだ大仕事は「パリの街に安価な乗合馬車」を走らせることだった。彼が最後の仕事に託した思いは何だったのか。親友のロアネーズ公爵は彼の思考のあとを追う。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる