Sonora 【ソノラ】

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マルカート

198話

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 そういった経緯もあり、中等部に入る頃から始めてみました。どの楽器にするか。そう考えた時、自分は体格が良かったこともあり、大きい楽器か打楽器にしようと色々試してみましたが、その中でもコントラバスが自分に合っていたようで、それが出会いですかね。

 そこからは奥深さと、それとベースと運指が一緒のため、ついでに弾けるようになってしまうという、一石二鳥感から、すぐにハマりました。カッコよくないですか? 渋く後ろのほうで演奏していた男が、曲が変わるとエレキベースを持って前のほうでハジける姿。

『高等部では、同じ音楽科に入って、少しでも近づけるように』

 そうすれば、自然に話しかけたりとかもできるし、一緒に演奏なんてことも。気合を入れて試験に臨みましたが、やはりもっと以前からコントラバスに触れてきていた生徒には敵わず、音楽科に入ることはできませんでした。諦めて普通科へ。

 しかし、どうやら他の専攻ではありますが、辞退者が出て普通科に転科するということで、空いた枠を講師に猛アピールし続けた結果、こっそり追加していただけました。フランスではよくあることです、アピール大事です。たとえ九割九分無理だとしても、根負けしなければなんとかなります。

 こうしてスタートラインに立てたわけですが、ここからどうしようか。彼女はピアノ専攻なのですが、基本はオーケストラの練習の時くらいしか一緒になりません。弦楽器同士はよく一緒にやりますが、鍵盤楽器は全く別です。挨拶くらいしかまだできていません。

「諦めたほうがいい。向こうはスランプがあったけど、技術はトップクラス。今はより凄みが増してる。フレデリックじゃ手に負えない。それに——」

 なにか言葉を飲み込みつつも、そう教えてくれたのは、彼女と同じピアノ専攻で、自分の幼馴染でもあるカルメン・テシエです。レッスン室で個人練習中のところに、近況を得ようと突撃してみました。気持ち悪い行動ではありません。仲間を知るのは、より深い演奏をするのに必要なのです。

 カルメンも充分過ぎるほどに実力がある、というのはわかっています。昔からピアノは上手いと思っていましたが、自分も音楽をやるようになって、よりわかるようになりました。来月には教会でのリサイタルもあるそうです。彼女も二四日に演奏するようだし行ってみよう。気持ち悪くはないです。

 昔からこういう、淡々と事実を述べるだけのヤツです。別に自分の恋路を邪魔しようとかいうのではなく、冷静に分析してくれた結果だと思われます。なんとなく、わかっていたことではありますが、人の心はわかりません。ダメでもやってみる。フランスでは大事です。
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