Sonora 【ソノラ】

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ブリランテ

155話

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 アレンジメントのほうはというと、クリスマスローズをメインにして完成。「くれてやる」と、ベアトリスは、座ったままアレンジメントを驚くレティシアに手渡す。ノブドウをグリーンに。麻模様の陶器に入った、秋から冬の変化を感じさせるひと品だ。

「本当は教えるつもりはないんだがな」

 そう断って立ち上がる。なにか決断したように。そして店の中心にある応対用のイスに座った。

「まずピアノの歴史から話そうか」

 と、ジッと凝視するレティシアに座るよう促す。立ち話もなんだ。

 一瞬悩んだが、少し乱暴にレティシアは勧められた通りに、アレンジメントをテーブルに置き、イスに腰掛ける。
 
「いただいたからにはお礼は言うわ。でも、そういうのはいいから結論だけ」

 まわりくどく説明しようとするベアトリスに、ショートカットを願った。音楽の知識を深めたいわけじゃない。

「いいから聞け」

 それらをシャットアウトし、ベアトリスは話の筋道を追っていく。内容はピアノの歴史。

「あぁ、そうだ。すまんがコーヒーを淹れてくれ。エスプレッソマシンは使えるか? そっちのぶんも一緒に淹れていいぞ」

 だが、話をするには、少し喉を潤したいということで、席に着いたばかりのレティシアを動かす。

「……はいはい」

 とはいえ、押しかけた身であることは、レティシア本人もわかっている。ここは素直に従うことにした。それに、自分も少し何かほしかったところ。

 マシンが温まるのを待ち、ダブルのポルタフィルターで二杯分淹れる。ダブルの、というが、シングルのフィルターは使ったことはない。一杯分でもダブルで淹れる。淹れている間、精神統一も兼ねてそんなことをレティシアは考えていた。

「すまんな。で、ピアノは一八世紀初頭頃に初代となるものが作られ、それ以降研鑽が積まれていくわけだが」

 出来上がったエスプレッソを受け取って礼を言い、ベアトリスは話を再開する。そしてレティシアにも振った。

「ショパンは知っているだろ? 子犬のワルツとか」

「ええ、名前だけ。曲も聴けばわかるかもしれないわ」

 なんとなくこれかな、という予想はできるのだが、レティシアはクラシックに造詣が深いわけでもないので、そこで打ち切る。ショパンも顔は知らない。

 ひと口エスプレッソを飲み、ベアトリスは満足。

「そのショパンの頃に大革命が起きた。わかるか?」

 またもレティシアに話を振るが、さすがにそこまで詳しいわけがない。

「わからない。当然でしょ」

 少し呆れ気味にレティシアは鼻で笑う。むしろ、ピアニストでもそんなところまで知らない人もいるんじゃない? とさえ考えた。
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