151 / 232
スピリトーゾ
151話
しおりを挟む
かなりシンプルな構成に、レティシアは疑問の声。まぁ、サイズ的にそうなるのかしら、と同時に納得。
「あっさり決まったわね。しかも三輪だけ?」
そしてピンクが二輪、ということはおそらく自分とシルヴィ。紫はベルか。なんとなく、贔屓されているような気もする。どういう意味だろう。
もちろん理由がある。が、シャルルはあえて伝えない。
「この形だと少ない方が電車が映えますから。多く挿せばいいというものでもないんです。すぐに完成ですよ」
アレンジメントを始める。基本はオアシスを見えないように葉物を展開する。逆に見えるように、というアレンジメントもあるので難しく、面白い。が、今回は一般的なように見えない方向で。窓や上からブルーアイスをできるだけ無造作に挿していく。
「そんなザクザクいっちゃっていいの? バランスとか……」
あまりにも考えなしな印象を受けたベルは、戸惑いながらも全体を見る。アンバランスのような。だが、これでいいという。
「シクラメンの三輪挿し。可愛いわね。シクラメンといえば鉢植えなんかが多いけど、こういうのもいいわ。どういう花言葉なの?」
そしてピンクと紫で分けた理由。場合によっては、レティシアはシャルルにイタズラを画策する。
そんな都合を知ってか知らずか、作り手のシャルルは断りを入れる。
「それは秘密です。喜んでいただけたなら、それだけでいいんです」
あっという間に完成。様々な箇所からブルーアイスが差し込み、まるで電車から生えてきたかのような初見。その他、シクラメンが彩りを担当し、ユーカリがそれをサポートする。
手に取って、最初に所感を持ったのはシルヴィ。上から下から覗き込み、「ほー」と言葉をこぼしながら一度テーブルに置く。
「……なんか、最初は『あれ?』って思ったけど、完成すると案外いいな」
わりかし、いや、かなり気に入った。サイズ感もいいのかもしれない。小さなアレンジメント。これもまた、面白い。
続いてレティシア。花に触れつつ、自分なりの受け捉え方をする。
「たしかに。でもなんか裏がありそうね」
ところで、これは誰がもらっていいんだろう。そっちに関心がいった。
なにやら疑われていることを察したシャルルは、わざとらしくかぶりを振る。
「ないですないです。ただ、自由に作っていいって言われたので、趣味全開で。ベル先輩もどうぞ」
と、手渡そうとするが、ベルは俯いたままで受け取らない。シャルルも「?」と首を傾げた。
その様子をシルヴィがいち早く察知し、中継に入る。
「? なんかあったのか?」
コーヒーはすっかり冷めている。まるで自身の心のように。二人、いやシャルルも含めて三人が支えてくれているというのに、ダメダメだな自分は、とベルは嫌気がさした。
「……いや、すごいなって思って」
こんな小さな子までも自身の道に迷わず進んでいるのに。シャルルの髪をくしゃっと撫でた。
「うん、頑張る! 頑張るしか言えないけど、頑張るしかない」
つまりは頑張るということ。よくわからない構文になってしまったが、ただ電車のように突き進むのみ。考えてもしょうがない。自分のことは信じられないけど、ベアトリスの言うことは信じる。
はぁ、と名残惜しそうにレティシアはため息をついた。
「……そのアレンジメントはベルのものね。持っていきなさい。いいわね、シルヴィ?」
「え、あたし? うーん、まぁ、いいんじゃない? レティシアがそう言うなら」
シルヴィも意見が一致し、アレンジメントはベルへ。いつかまた、弱気が芽生えたら、これを見て思い出そう。今日という日を。
「……ありがとう」
空が少しずつ明るくなる。まるでベルの心を表すように。
「あっさり決まったわね。しかも三輪だけ?」
そしてピンクが二輪、ということはおそらく自分とシルヴィ。紫はベルか。なんとなく、贔屓されているような気もする。どういう意味だろう。
もちろん理由がある。が、シャルルはあえて伝えない。
「この形だと少ない方が電車が映えますから。多く挿せばいいというものでもないんです。すぐに完成ですよ」
アレンジメントを始める。基本はオアシスを見えないように葉物を展開する。逆に見えるように、というアレンジメントもあるので難しく、面白い。が、今回は一般的なように見えない方向で。窓や上からブルーアイスをできるだけ無造作に挿していく。
「そんなザクザクいっちゃっていいの? バランスとか……」
あまりにも考えなしな印象を受けたベルは、戸惑いながらも全体を見る。アンバランスのような。だが、これでいいという。
「シクラメンの三輪挿し。可愛いわね。シクラメンといえば鉢植えなんかが多いけど、こういうのもいいわ。どういう花言葉なの?」
そしてピンクと紫で分けた理由。場合によっては、レティシアはシャルルにイタズラを画策する。
そんな都合を知ってか知らずか、作り手のシャルルは断りを入れる。
「それは秘密です。喜んでいただけたなら、それだけでいいんです」
あっという間に完成。様々な箇所からブルーアイスが差し込み、まるで電車から生えてきたかのような初見。その他、シクラメンが彩りを担当し、ユーカリがそれをサポートする。
手に取って、最初に所感を持ったのはシルヴィ。上から下から覗き込み、「ほー」と言葉をこぼしながら一度テーブルに置く。
「……なんか、最初は『あれ?』って思ったけど、完成すると案外いいな」
わりかし、いや、かなり気に入った。サイズ感もいいのかもしれない。小さなアレンジメント。これもまた、面白い。
続いてレティシア。花に触れつつ、自分なりの受け捉え方をする。
「たしかに。でもなんか裏がありそうね」
ところで、これは誰がもらっていいんだろう。そっちに関心がいった。
なにやら疑われていることを察したシャルルは、わざとらしくかぶりを振る。
「ないですないです。ただ、自由に作っていいって言われたので、趣味全開で。ベル先輩もどうぞ」
と、手渡そうとするが、ベルは俯いたままで受け取らない。シャルルも「?」と首を傾げた。
その様子をシルヴィがいち早く察知し、中継に入る。
「? なんかあったのか?」
コーヒーはすっかり冷めている。まるで自身の心のように。二人、いやシャルルも含めて三人が支えてくれているというのに、ダメダメだな自分は、とベルは嫌気がさした。
「……いや、すごいなって思って」
こんな小さな子までも自身の道に迷わず進んでいるのに。シャルルの髪をくしゃっと撫でた。
「うん、頑張る! 頑張るしか言えないけど、頑張るしかない」
つまりは頑張るということ。よくわからない構文になってしまったが、ただ電車のように突き進むのみ。考えてもしょうがない。自分のことは信じられないけど、ベアトリスの言うことは信じる。
はぁ、と名残惜しそうにレティシアはため息をついた。
「……そのアレンジメントはベルのものね。持っていきなさい。いいわね、シルヴィ?」
「え、あたし? うーん、まぁ、いいんじゃない? レティシアがそう言うなら」
シルヴィも意見が一致し、アレンジメントはベルへ。いつかまた、弱気が芽生えたら、これを見て思い出そう。今日という日を。
「……ありがとう」
空が少しずつ明るくなる。まるでベルの心を表すように。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
0
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる