132 / 235
コン・アニマ
132話
しおりを挟む
まだ気になるところがあった。気持ちが決まったから、ということで忘れそうになっていた。
欲しがるサミーに対し、ベアトリスは意地悪く微笑む。
「それは私と奥様からの宿題です。ぜひ考えてみてください。なにも理由はないかもしれません。バラとへデラベリーとナズナを入れるだけなら、これくらいの大きさでいいと考えたのかもしれません。あとはお任せします」
答えは人の数だけある、そう最後に締めた。
呆気に取られつつも、納得したサミーはお返しに言葉を残していく。
「フローリストってのはお節介でひねくれたのが多いなぁ」
「あの男と一緒にしないでください」
誰のことを言っているのか瞬時に理解し、ベアトリスは即座に否定すした。そこだけは違う。
変な地雷を踏んでしまったか、と自身を戒めつつ、サミーはイスから立ち上がる。
「いや、ありがとう。悩むフリはもうやめだ」
踏み込む足が、少しだけ力強くなった気がする。気のせいかも。それでも、なにか星座占いとか星占いが一位だったような、ほんの少しだけ嬉しい気持ちに満たされている。
「またのお越しをお待ちしております」
それはベアトリスの心からの想い。また、なにか違った形でも。お子様と一緒に。
手には、揺れないように箱で包みまれたアレンジメント。上は開いているので、花は飛び出ている。水も入っている。ドアを出て、最後に振り向きサミーはひと言。
「次は、なにか明るい話題を持ってくるよ」
それだけ言い残し、パリ八区に紛れた。
少しだけ幸せになってくれた。そう受け取っていいのだろう。いつも、ベアトリスはこの瞬間はほんの少しだけ緊張するし、嬉しくもある。
「……母親か」
サミーの亡くなった妻、のことではない。自身の。そしてシャルルの。
「……」
今はいい。今は。そのことは。気持ちを新たに、ドアを閉めた。
欲しがるサミーに対し、ベアトリスは意地悪く微笑む。
「それは私と奥様からの宿題です。ぜひ考えてみてください。なにも理由はないかもしれません。バラとへデラベリーとナズナを入れるだけなら、これくらいの大きさでいいと考えたのかもしれません。あとはお任せします」
答えは人の数だけある、そう最後に締めた。
呆気に取られつつも、納得したサミーはお返しに言葉を残していく。
「フローリストってのはお節介でひねくれたのが多いなぁ」
「あの男と一緒にしないでください」
誰のことを言っているのか瞬時に理解し、ベアトリスは即座に否定すした。そこだけは違う。
変な地雷を踏んでしまったか、と自身を戒めつつ、サミーはイスから立ち上がる。
「いや、ありがとう。悩むフリはもうやめだ」
踏み込む足が、少しだけ力強くなった気がする。気のせいかも。それでも、なにか星座占いとか星占いが一位だったような、ほんの少しだけ嬉しい気持ちに満たされている。
「またのお越しをお待ちしております」
それはベアトリスの心からの想い。また、なにか違った形でも。お子様と一緒に。
手には、揺れないように箱で包みまれたアレンジメント。上は開いているので、花は飛び出ている。水も入っている。ドアを出て、最後に振り向きサミーはひと言。
「次は、なにか明るい話題を持ってくるよ」
それだけ言い残し、パリ八区に紛れた。
少しだけ幸せになってくれた。そう受け取っていいのだろう。いつも、ベアトリスはこの瞬間はほんの少しだけ緊張するし、嬉しくもある。
「……母親か」
サミーの亡くなった妻、のことではない。自身の。そしてシャルルの。
「……」
今はいい。今は。そのことは。気持ちを新たに、ドアを閉めた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる