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コン・アニマ
132話
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まだ気になるところがあった。気持ちが決まったから、ということで忘れそうになっていた。
欲しがるサミーに対し、ベアトリスは意地悪く微笑む。
「それは私と奥様からの宿題です。ぜひ考えてみてください。なにも理由はないかもしれません。バラとへデラベリーとナズナを入れるだけなら、これくらいの大きさでいいと考えたのかもしれません。あとはお任せします」
答えは人の数だけある、そう最後に締めた。
呆気に取られつつも、納得したサミーはお返しに言葉を残していく。
「フローリストってのはお節介でひねくれたのが多いなぁ」
「あの男と一緒にしないでください」
誰のことを言っているのか瞬時に理解し、ベアトリスは即座に否定すした。そこだけは違う。
変な地雷を踏んでしまったか、と自身を戒めつつ、サミーはイスから立ち上がる。
「いや、ありがとう。悩むフリはもうやめだ」
踏み込む足が、少しだけ力強くなった気がする。気のせいかも。それでも、なにか星座占いとか星占いが一位だったような、ほんの少しだけ嬉しい気持ちに満たされている。
「またのお越しをお待ちしております」
それはベアトリスの心からの想い。また、なにか違った形でも。お子様と一緒に。
手には、揺れないように箱で包みまれたアレンジメント。上は開いているので、花は飛び出ている。水も入っている。ドアを出て、最後に振り向きサミーはひと言。
「次は、なにか明るい話題を持ってくるよ」
それだけ言い残し、パリ八区に紛れた。
少しだけ幸せになってくれた。そう受け取っていいのだろう。いつも、ベアトリスはこの瞬間はほんの少しだけ緊張するし、嬉しくもある。
「……母親か」
サミーの亡くなった妻、のことではない。自身の。そしてシャルルの。
「……」
今はいい。今は。そのことは。気持ちを新たに、ドアを閉めた。
欲しがるサミーに対し、ベアトリスは意地悪く微笑む。
「それは私と奥様からの宿題です。ぜひ考えてみてください。なにも理由はないかもしれません。バラとへデラベリーとナズナを入れるだけなら、これくらいの大きさでいいと考えたのかもしれません。あとはお任せします」
答えは人の数だけある、そう最後に締めた。
呆気に取られつつも、納得したサミーはお返しに言葉を残していく。
「フローリストってのはお節介でひねくれたのが多いなぁ」
「あの男と一緒にしないでください」
誰のことを言っているのか瞬時に理解し、ベアトリスは即座に否定すした。そこだけは違う。
変な地雷を踏んでしまったか、と自身を戒めつつ、サミーはイスから立ち上がる。
「いや、ありがとう。悩むフリはもうやめだ」
踏み込む足が、少しだけ力強くなった気がする。気のせいかも。それでも、なにか星座占いとか星占いが一位だったような、ほんの少しだけ嬉しい気持ちに満たされている。
「またのお越しをお待ちしております」
それはベアトリスの心からの想い。また、なにか違った形でも。お子様と一緒に。
手には、揺れないように箱で包みまれたアレンジメント。上は開いているので、花は飛び出ている。水も入っている。ドアを出て、最後に振り向きサミーはひと言。
「次は、なにか明るい話題を持ってくるよ」
それだけ言い残し、パリ八区に紛れた。
少しだけ幸せになってくれた。そう受け取っていいのだろう。いつも、ベアトリスはこの瞬間はほんの少しだけ緊張するし、嬉しくもある。
「……母親か」
サミーの亡くなった妻、のことではない。自身の。そしてシャルルの。
「……」
今はいい。今は。そのことは。気持ちを新たに、ドアを閉めた。
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