124 / 235
コン・アニマ
124話
しおりを挟む
夜。シルヴィも帰宅、というより無理やり帰し、軽く食事を済ませ、あとは寝るだけ。だが、姉はまだ店のイスに座り、天井を見ながら何かを考え込む。力が抜け、寝ているかのようにも見える。
そこへ、階段を降りてきたシャルルが声をかけた。
「どうしたの?」
その要領を得ない問いかけに、ベアトリスはムッとする。
「なにがだ?」
やっぱり、とシャルルはひとり納得。
「機嫌よさそう」
なにがあったのかは知らないけど。悪いよりはいいに越したことはない。そのまま店奥のキッチンへ。
「とりあえず紅茶でいい? コーヒー?」
姉の機嫌がいいと自分もいい。なにかイタズラを仕掛けられないし。お湯を沸かし、紅茶を淹れようとカップを取り出して、気づく。
「ティーカップ新しくしようか。少し痛んできてるし——」
「シャルル」
ベアトリスが弟の名前を呼び、今度は行儀悪くイスに足を乗っける。サンダルを脱ぎ、裸足。寒くはないのだろうか。
「紅茶といえばイギリスだな」
もしくは、ドイツ北部のフリースラント。ひとり当たりの消費量世界一。キャンティを入れるとさらに美味しい、というのは今はどうでもいい。
よくわからない話の流れになると、だいたい悪いことの前兆。シャルルは少し不気味に感じる。
「まぁそうだけど……どうしたの?」
と、質問したところで、意を決したベアトリスがガバッと立ち上がり、部屋全体を見回す。
「ふむ……」
これで全てのピースは埋まった。だが、その絵が正しいのかは知らない。正しいかどうかは、彼に無理やり感じ取ってもらうしかない。
「フローリストはおせっかいな奴しかなれんな」
花の声が、聞こえる。
そこへ、階段を降りてきたシャルルが声をかけた。
「どうしたの?」
その要領を得ない問いかけに、ベアトリスはムッとする。
「なにがだ?」
やっぱり、とシャルルはひとり納得。
「機嫌よさそう」
なにがあったのかは知らないけど。悪いよりはいいに越したことはない。そのまま店奥のキッチンへ。
「とりあえず紅茶でいい? コーヒー?」
姉の機嫌がいいと自分もいい。なにかイタズラを仕掛けられないし。お湯を沸かし、紅茶を淹れようとカップを取り出して、気づく。
「ティーカップ新しくしようか。少し痛んできてるし——」
「シャルル」
ベアトリスが弟の名前を呼び、今度は行儀悪くイスに足を乗っける。サンダルを脱ぎ、裸足。寒くはないのだろうか。
「紅茶といえばイギリスだな」
もしくは、ドイツ北部のフリースラント。ひとり当たりの消費量世界一。キャンティを入れるとさらに美味しい、というのは今はどうでもいい。
よくわからない話の流れになると、だいたい悪いことの前兆。シャルルは少し不気味に感じる。
「まぁそうだけど……どうしたの?」
と、質問したところで、意を決したベアトリスがガバッと立ち上がり、部屋全体を見回す。
「ふむ……」
これで全てのピースは埋まった。だが、その絵が正しいのかは知らない。正しいかどうかは、彼に無理やり感じ取ってもらうしかない。
「フローリストはおせっかいな奴しかなれんな」
花の声が、聞こえる。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
Réglage 【レグラージュ】
隼
キャラ文芸
フランスのパリ3区。
ピアノ専門店「アトリエ・ルピアノ」に所属する少女サロメ・トトゥ。
職業はピアノの調律師。性格はワガママ。
あらゆるピアノを蘇らせる、始動の調律。
Parfumésie 【パルフュメジー】
隼
キャラ文芸
フランス、パリの12区。
ヴァンセンヌの森にて、ひとり佇む少女は考える。
憧れの調香師、ギャスパー・タルマに憧れてパリまでやってきたが、思ってもいない形で彼と接点を持つことになったこと。
そして、特技のヴァイオリンを生かした新たなる香りの創造。
今、音と香りの物語、その幕が上がる。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる