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アフェッツオーソ
92話
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「それで、探していたものは見つかったのか? 随分遅く……いや、まさかお前、自分で作ったのか?」
一瞬で核心に迫られ、はにかみながらベルは肯定した。
「あの……実は……専門店にもなくて、でもお店の人の話では、自分で作れるって教えてくれて。近かったのですぐに行って、それでそのお店の人に教わりつつ、ですけど……」
「……お前というやつは」
「なんの話? 作る、ってなんのことかしら?」
二人だけのガールズトークだったはずだが、漏れていたのか地獄耳なのか、セシルが問いを放つ。
「それは楽しみにしてていいのよね?」
疑問というよりは、付加疑問文に近いものだった。もしダメと言われても期待をしているのだが。
彼女の行動を見る限り、元から好奇心の強い女性なのだろう。
「……うん、絶対に気に入るから期待してて!」
その答えを聞いて安心したセシルはそれ以上なにも聞かずに本番を待つことにする。なにより娘からのプレゼントはいくつになっても嬉しいものである。今までに貰ったプレゼントを思い浮かべた。ババロアにレモンタルトなどの食べ物が多かった。お世辞にも見た目はよくなかったが、料理が苦手なりに頑張ってくれた証を、感謝して食したものだった。今回は初めて手元に残るプレゼントとなるのだ。
「すまんセシル、私も心配になってきた。確かになにかやらかしたな」
「そう? 逆に私は楽しくなってきたわ。なにが起きるかわからない、ってワクワクするわね」
「遠足の前日は寝れないタイプか」
ベアトリスの青色吐息のつっこみは微妙に鋭さを欠き、期待に胸を膨らませるセシルを煽り鼻歌まで飛び出させた。と、そこに階段からケースを抱えたシャルルが現れる。
「姉さん、部屋くらい片付けてよ。少し探しちゃった」
「善処する」
「そう言って、やったこと一度もない」
眉を顰めて非難するが効果はない、もし本当にやってくれたら儲け物。という認識でシャルルはベアトリスに言うだけは言うのである。今まで一度として叶った事はないが。
「あら、じゃあ今後もずっと美味しいシードルが飲めるわね、ベル」
今のベアトリスの発言と、先程の会話とをは照らし合わせた。機会があれば自分もシードルをいただこうと画策している。
「え? そう、なのかな。あ、ありがとうシャルル君」
道具一式をシャルルから受け取り、ベルはシャルルに謝意を表す。
「いえ、楽しみに見させてもらいます。どんなものができるのか、って。今のところ全然わからないです」
「ええ、それじゃ準備もできたみたいだしベル、そろそろ始めてくれる?」
そのセシルの言葉を皮切りに、場が静まり返り空気が澄む。
その厳かな空気を肺一杯に取り込むと、厳粛にベルは音を紡ぐ。
「……あたしの初めてのアレンジ、ママに贈ります」
一瞬で核心に迫られ、はにかみながらベルは肯定した。
「あの……実は……専門店にもなくて、でもお店の人の話では、自分で作れるって教えてくれて。近かったのですぐに行って、それでそのお店の人に教わりつつ、ですけど……」
「……お前というやつは」
「なんの話? 作る、ってなんのことかしら?」
二人だけのガールズトークだったはずだが、漏れていたのか地獄耳なのか、セシルが問いを放つ。
「それは楽しみにしてていいのよね?」
疑問というよりは、付加疑問文に近いものだった。もしダメと言われても期待をしているのだが。
彼女の行動を見る限り、元から好奇心の強い女性なのだろう。
「……うん、絶対に気に入るから期待してて!」
その答えを聞いて安心したセシルはそれ以上なにも聞かずに本番を待つことにする。なにより娘からのプレゼントはいくつになっても嬉しいものである。今までに貰ったプレゼントを思い浮かべた。ババロアにレモンタルトなどの食べ物が多かった。お世辞にも見た目はよくなかったが、料理が苦手なりに頑張ってくれた証を、感謝して食したものだった。今回は初めて手元に残るプレゼントとなるのだ。
「すまんセシル、私も心配になってきた。確かになにかやらかしたな」
「そう? 逆に私は楽しくなってきたわ。なにが起きるかわからない、ってワクワクするわね」
「遠足の前日は寝れないタイプか」
ベアトリスの青色吐息のつっこみは微妙に鋭さを欠き、期待に胸を膨らませるセシルを煽り鼻歌まで飛び出させた。と、そこに階段からケースを抱えたシャルルが現れる。
「姉さん、部屋くらい片付けてよ。少し探しちゃった」
「善処する」
「そう言って、やったこと一度もない」
眉を顰めて非難するが効果はない、もし本当にやってくれたら儲け物。という認識でシャルルはベアトリスに言うだけは言うのである。今まで一度として叶った事はないが。
「あら、じゃあ今後もずっと美味しいシードルが飲めるわね、ベル」
今のベアトリスの発言と、先程の会話とをは照らし合わせた。機会があれば自分もシードルをいただこうと画策している。
「え? そう、なのかな。あ、ありがとうシャルル君」
道具一式をシャルルから受け取り、ベルはシャルルに謝意を表す。
「いえ、楽しみに見させてもらいます。どんなものができるのか、って。今のところ全然わからないです」
「ええ、それじゃ準備もできたみたいだしベル、そろそろ始めてくれる?」
そのセシルの言葉を皮切りに、場が静まり返り空気が澄む。
その厳かな空気を肺一杯に取り込むと、厳粛にベルは音を紡ぐ。
「……あたしの初めてのアレンジ、ママに贈ります」
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