Sonora 【ソノラ】

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アフェッツオーソ

60話

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 それはいきなりであり、しかしベルは自分の想いが通じたか、とは考えなかった。なんとなく、彼の中に迷いのようなものを感じたから。だから、

「じゃあ、これは?」

 その思わず家まで持ち帰ってしまいたくなるシャルルの反応に、悪戯心がざわめき、妖しく笑みを浮かべると、つなぐ程度であった指と指を絡めるように持ち直した。指伝いにシャルルの動揺が文字通り、手に取るようにわかった。

「あ、あの……ずるいです……」

(——勝った!)

 無意識に一瞬上げてベルと合わせたシャルルの顔は、沸騰を思わせる朱に染まり、さらにもじもじと恥らう。しかしその手を離そうとしないところから、本心では嫌がっているわけではなかった。もしクラスの子に見られたら、といった懸念よりも、そちらを選択したのだ。

 そのすべてを悟ったベルは、三人の女性の顔を頭に浮かべて勝利宣言をする。そしてやはりこの少年に対し思うこと。

(普通に可愛い……なんかショック……)

 女性として負けを感じた。しかしすぐ気を取り直す。

「ところで、お店ってまだなの?」

 そういえば知らされていない、と足を止める。横をスイスイとすり抜けていく人々の群れが「いきなり立ち止まるな」という風に視線を投げかけ、ベルは肩をすぼめてはにかんだ。

 気を抜いてたのか、二秒ほどのタイムラグを要し、シャルルは質問の意味を理解した。

「え? あ、その角を曲がったところです。すいません、ぼーっとしてて……」

「そこ?」

 指を指して確認し、肯定を受け取ると、マロニエの続く並木道沿いに小さく、ハンドメイド専門の店がある。知る人ぞ知る、そんな店である。

「はい、ここです。早速入りましょう」

「それにしても、なんで雑貨なの? あ、誰かにプレゼントしたいとか?」

 いやでも、それが他の女性の場合少し複雑かも、と言って気付いたが、実は自分のためだった、とかサプライズを演出しているのかも、など、妄想に歯止めがきかない。が、大好きな店に来て興奮したのか、シャルルは目を輝かせてまくしたてた。

「ここのお店、すっごく個性的なバスケットが売ってて、よく来るんです。絶対に先輩も気に入るのがあるはずです。他にも、この先の雑貨屋さんはチェーン店なんですけど、そこは安いのに品質のいいウォールバスケットがあったり、それから道の反対なんですけど、そこのお店はエスニックな雰囲気のが多くて、それと少し奥まったところになってしまうんですけどそこには……あの、どうかしましたか、先輩?」

「あ、そう、だよね……うん……」

 やはり、先は長いらしい。
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