60 / 232
アフェッツオーソ
60話
しおりを挟む
それはいきなりであり、しかしベルは自分の想いが通じたか、とは考えなかった。なんとなく、彼の中に迷いのようなものを感じたから。だから、
「じゃあ、これは?」
その思わず家まで持ち帰ってしまいたくなるシャルルの反応に、悪戯心がざわめき、妖しく笑みを浮かべると、つなぐ程度であった指と指を絡めるように持ち直した。指伝いにシャルルの動揺が文字通り、手に取るようにわかった。
「あ、あの……ずるいです……」
(——勝った!)
無意識に一瞬上げてベルと合わせたシャルルの顔は、沸騰を思わせる朱に染まり、さらにもじもじと恥らう。しかしその手を離そうとしないところから、本心では嫌がっているわけではなかった。もしクラスの子に見られたら、といった懸念よりも、そちらを選択したのだ。
そのすべてを悟ったベルは、三人の女性の顔を頭に浮かべて勝利宣言をする。そしてやはりこの少年に対し思うこと。
(普通に可愛い……なんかショック……)
女性として負けを感じた。しかしすぐ気を取り直す。
「ところで、お店ってまだなの?」
そういえば知らされていない、と足を止める。横をスイスイとすり抜けていく人々の群れが「いきなり立ち止まるな」という風に視線を投げかけ、ベルは肩をすぼめてはにかんだ。
気を抜いてたのか、二秒ほどのタイムラグを要し、シャルルは質問の意味を理解した。
「え? あ、その角を曲がったところです。すいません、ぼーっとしてて……」
「そこ?」
指を指して確認し、肯定を受け取ると、マロニエの続く並木道沿いに小さく、ハンドメイド専門の店がある。知る人ぞ知る、そんな店である。
「はい、ここです。早速入りましょう」
「それにしても、なんで雑貨なの? あ、誰かにプレゼントしたいとか?」
いやでも、それが他の女性の場合少し複雑かも、と言って気付いたが、実は自分のためだった、とかサプライズを演出しているのかも、など、妄想に歯止めがきかない。が、大好きな店に来て興奮したのか、シャルルは目を輝かせてまくしたてた。
「ここのお店、すっごく個性的なバスケットが売ってて、よく来るんです。絶対に先輩も気に入るのがあるはずです。他にも、この先の雑貨屋さんはチェーン店なんですけど、そこは安いのに品質のいいウォールバスケットがあったり、それから道の反対なんですけど、そこのお店はエスニックな雰囲気のが多くて、それと少し奥まったところになってしまうんですけどそこには……あの、どうかしましたか、先輩?」
「あ、そう、だよね……うん……」
やはり、先は長いらしい。
「じゃあ、これは?」
その思わず家まで持ち帰ってしまいたくなるシャルルの反応に、悪戯心がざわめき、妖しく笑みを浮かべると、つなぐ程度であった指と指を絡めるように持ち直した。指伝いにシャルルの動揺が文字通り、手に取るようにわかった。
「あ、あの……ずるいです……」
(——勝った!)
無意識に一瞬上げてベルと合わせたシャルルの顔は、沸騰を思わせる朱に染まり、さらにもじもじと恥らう。しかしその手を離そうとしないところから、本心では嫌がっているわけではなかった。もしクラスの子に見られたら、といった懸念よりも、そちらを選択したのだ。
そのすべてを悟ったベルは、三人の女性の顔を頭に浮かべて勝利宣言をする。そしてやはりこの少年に対し思うこと。
(普通に可愛い……なんかショック……)
女性として負けを感じた。しかしすぐ気を取り直す。
「ところで、お店ってまだなの?」
そういえば知らされていない、と足を止める。横をスイスイとすり抜けていく人々の群れが「いきなり立ち止まるな」という風に視線を投げかけ、ベルは肩をすぼめてはにかんだ。
気を抜いてたのか、二秒ほどのタイムラグを要し、シャルルは質問の意味を理解した。
「え? あ、その角を曲がったところです。すいません、ぼーっとしてて……」
「そこ?」
指を指して確認し、肯定を受け取ると、マロニエの続く並木道沿いに小さく、ハンドメイド専門の店がある。知る人ぞ知る、そんな店である。
「はい、ここです。早速入りましょう」
「それにしても、なんで雑貨なの? あ、誰かにプレゼントしたいとか?」
いやでも、それが他の女性の場合少し複雑かも、と言って気付いたが、実は自分のためだった、とかサプライズを演出しているのかも、など、妄想に歯止めがきかない。が、大好きな店に来て興奮したのか、シャルルは目を輝かせてまくしたてた。
「ここのお店、すっごく個性的なバスケットが売ってて、よく来るんです。絶対に先輩も気に入るのがあるはずです。他にも、この先の雑貨屋さんはチェーン店なんですけど、そこは安いのに品質のいいウォールバスケットがあったり、それから道の反対なんですけど、そこのお店はエスニックな雰囲気のが多くて、それと少し奥まったところになってしまうんですけどそこには……あの、どうかしましたか、先輩?」
「あ、そう、だよね……うん……」
やはり、先は長いらしい。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
0
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる