Sonora 【ソノラ】

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コン・フォーコ

53話

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「というわけで、各トーストをメインに、完熟トマトのカプレーゼ、ポテトパフ、ソーセージと紫キャベツの生春巻きピリ辛ソース添え、スイーツでブルーベリーのカスタードもあります」

 翌日、昼食は中庭で摂ろうというレティシアの発案に、数瞬も置くことなく満場一致、他の学生の大半が学食や家でランチを摂っていることもあって、中庭はほぼ貸切の状態であった。

 五人ほどで腰掛けられるベンチ多数置いてあり、何人か他の高等部の学生も見受けられるが、なにせ中庭だけでもサッカーコートほどもあり、誰なのか遠目では判断できないほどである。日当たりもよく緑も多いので、休み時間などは溢れかえるのだが、昼食に重きを置く故に使いこなしている者が少ないのが現状である。

 そこに目をつけ、からりと晴れて気持ちのいい秋空の下のランチ、と銘打ったわけである。

 昨日よりもさらに大きな、持つだけでも大変だろう、という感想を与えるバスケットを持参者のシャルルが開くと、またも一斉に様々な歓声が飛ぶ。

「すごいわね。確かにフローリストだけにしておくのはもったいないわ」

「なんか、ほんとにキュイズィニエみたいに見えるね」

「キュイズィニエールだろ?」

「だから僕は男です!」

 お約束ともいえる件をこなすと、待ちきれないシルヴィの「ボナペティ!」の挨拶で一斉に食事が開始される。

 昨日はしっかりと味を楽しむことが出来なかったベルも、待ちわびていたのか伸ばした手がシルヴィと当たり、お互い眉間に皴を寄せて睨みを利かせる。

 豪勢なランチの入ったバスケットを中心にして、向かって左に腰を掛けたのがレティシアとシャルル、右がシルヴィとベルという並びになっており、がっつく側が寄ってしまったことに、今になって気付いたシャルルは仲裁に入るが、レティシアが「ほっときましょう」引きとめたので、それ以上は干渉しないことにした。触らぬ神に祟りはない。

 そしてその間隙を縫ってレティシアが一番に生春巻きを口にする。

「あら、生春巻きって初めて食べたけれど、このソースの辛味がほどよく合ってとてもおいしいわ」

「ありがとうございます、ナンプラーと赤唐辛子がソースの決め手なんです。結構この味を出すのに苦労しました」

 辛いものを苦手とする人は特に女性に多く、若干辛さ抑え目にしたのが功を奏したことを確認し、冷静に見せながらもシャルルは内心でホッと一息つく。朝、作っている最中につまみ食いをした甘党のベアトリス曰く「辛い」らしいが、やはり普通はこれくらいでちょうどいいのだ、と基準を覚えた。そして姉の辛味の舌の基準もついでに。

 一つ食べ終わるのを満足気に観察していたシャルルだったが、その見つめる視線に気付いたレティシアに最後の一口を差し出され、「え?」と戸惑い恥らいつつも、流れでそのまま平らげる。しっかりと噛んで飲み込み、上目遣いでレティシアを見上げる。

「あの、レティシアさん、自分で食べますので……」

「とか言いつつ食ってるけどな」

 トーストを口に放り込みつつ鋭い指摘を入れるシルヴィに、なんとか反論しようにも言葉が続かずシャルルは俯いた。「美味いぞ」と率直な感想を言われても、恥ずかしさが勝る。
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