Sonora 【ソノラ】

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コン・フォーコ

41話

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 余裕のない皮肉だとは、レティシア本人も重々自覚している。年下の小さな少年に対して毒を吐く自分を見下げた。

 しかし、シャルルは頷き奉答する。

「ええ、その通りです。僕はフローリストであり、語ることを生業としています。人間とは音に乗せた語りでは疲れてしまうときがある。その時のためにいるのがフローリストなんです」

「……なにを言いたいの?」

 鋭く釣りあがった目をようやくシャルルに向け、補足を求めるレティシアは、視線を逸らさずに講じられる言葉に耳を傾けた。

「お客様を知り、最適な花を選び、そして背中を優しく押すこと。それがフローリストの仕事であり、誇りです。どんな方であれ、似合う花というものは必ずあります」

 それが美辞麗句だとはシャルルもわかっている。わかっているが、それに誇りを持っている。たとえそれがお金にならなくても関係ないのだ。困っている人を見捨てるよりも、綺麗事だと罵られても構わない。

 それは花を愛していれば、自然と身に付く要諦なのだ。そこにはシャルルは一片の恥じらいもない。それをあえてレティシアは苦言する。

「なら今の私に合う花なんてのは、さぞかし無様な花なんでしょうね」

「そんなことない!」

 内部の邪気を爆発させるように割り込んだのはベルだった。レティシアのそんな姿は見たくない、という気持ちがそうさせた。もしこれ以上溜め込んでいたら、指を大事にすることも忘れて平手でレティシアの頬を叩いていたかもしれなかったのだ。

「だってそうでしょう、年の離れた初等部の子供に説教されて、あげくには同情までされて。雑草でも拾ってくるのかしら?」

 鼻で笑い、しかし、その嘲笑は自分に向けたものであると、すぐにレティシアは気付く。今の自分をもし客観的に見る機会があれば、否定したくなるような見るに耐えない姿。唇を噛んで間を作り、続く言葉を待った。

「無様な花などありません。無様と思えてしまうのは、見る側の目が曇りがちになってしまっているということです」

「……」

 言葉を詰まらせ再び俯くと、そこにベルが身を乗り出し、白く透き通るような手を重ねた。重厚な温もりが伝わる。

「お願い、受け取って欲しいの。花は自分がどんなに惨めに思えても、最後まで見ていてくれる。その花のメッセージを」

 ベルは、そのもがき苦しむレティシアを、数日前の自分と重ねていた。あの時救われた自分、そして今苦しむ友人を救う手段を花に見る。心の底から押し上げてくる感情が突き動かす。伝え終わると手をゆっくりと離し、レティシアの壊れのような肩を抱く。いつもよりずっと小さく見えたそれを、抱きしめずにはいられなかったのだ。

 懇願、というよりも祈念に近いその必死な姿に、深い意味があると見出し、レティシアは頭を縦に振った。今度は違う種類の涙が流れそうになる。

「……わかったわ」 

 その言葉を待ち構えていたかのように、シャルルは次の段階の作成に入る。
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