Sonora 【ソノラ】

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コン・フォーコ

33話

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 それからシルヴィを除く三人が食事を始めたのは、五分を過ぎてからだった。トーストを消化したベルの口に、シルヴィがショコラのテリーヌを押し込んでいると、唐突にそのベルが再度動き出した。

 あまりにも唐突過ぎてテリーヌを落としかけたが、なんとかシルヴィは体で受け止めて落とすのは防げた。防いだ駄賃としてそのまま自分の口に入れる。

「レ、レティシア!」

 ベルは以前、クラスの男の子達が「胸は大きい方が男は好き」といった内容の話をしていたことを思い出した。自分にあまりないということを自覚していて、スレンダーという結果で自らを納得させ、内面を磨くことを目標としてきた。その部分は間違っていないと信じている。その後「手に納まるくらいの大きさが好きな男もいる」と聞き、やはりか、としたり顔をしたときもあった。

 が、実際はどうだろう。今までに九回抱きついた眼鏡の少年は九回とも拒んだ。それは照れ隠しからだと考えていたが、今の抱きつきには抵抗をしない。やはり胸か、胸なのか! それがベルの出した答えだった。

「離れなさい! ていうか放しなさい!!」

 体の方は万全に回復したのか、机を叩いてベルは怒声を発した。

 ゆっくりと首を回してレティシアはベルに冷ややかな視線を送る。突き刺すように。

「断るわ。あなたにそんな権限はないでしょう」

「抱きつく権限の方がないでしょ!!」

 お前が言うか、とシャルルは渋い顔を作る。その顔はまだ抱擁から解き放たれていないため、誰一人として確認はできていないのだが。

「そう……まあいいわ。とりあえず食事にしましょう。おいしそうね、特にこのキッシュ」

 抱きかかえていたシャルルを名残惜しそうに解放すると、屈んで顔の高さを同じに持ってくる。

「レティシア・キャロルよ。よろしく」

「え、あの……よろしく、お願いします」

 久しぶりに満足に呼吸をできるようになったシャルルは、はにかみつつ言葉を返す。なんとなく自分の右側から怖い視線を感じ、おそるおそる上目遣う。眉間に皴を寄せて唇を尖らす、今にも不平不満をぶちまけようとする予想通りのベルの姿。明らかにそれは殺気をも含んでいた。即座に視線を散らす。

「僕のせいじゃないのに……」

「まぁとにかく座れ。そこのイスは勝手に使っていいぞ」

 震えるシャルルを気づかい、帽子を置いた席のイスの使用許可を勝手にシルヴィが下ろす。

 俯いたままのシャルルが返事をしてイスを引こうとすると、その細い腕を掴んだのは長い腕。

 レティシアだった。掴まれた部分、そしてレティシアの顔を交互にシャルルは確認する。

「そこじゃイスに座ったらバスケットから取りづらいでしょう」

 とレティシアは正論を下すが、さすがに立って食事を取るのはマナーとしては悪い。

 「ですが……」とシャルルがうろたえていると、

「ここに座りなさい」
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