C × C 【セ・ドゥー】

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マリー・アントワネット

52話

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 そして予想通り、

「でも、さすがに食べれないものはちょっとね! ロシュディの性格はよく知ってるから言うけど、おそらく同じようなことを言うだろう。成功か失敗かで言ったら、大失敗! いやー、面白いんだけどね!」

 やはりダメ。わかりきっていたことだが、はっきりと男性の口から言われ、ジェイドはため息をついた。終わった。

「……はい」

 さて、店から依頼がいくかもと伝えておいたオードには、なんと言えばいいか。いっそ、何事もなかったかのように振る舞うか。それか、ここ数日の記憶がすっぽり抜け落ちた設定はどうだ。声をかけられても「えーと……どちら様、でしょうか?」みたいな。

 男性はまだ話を続けているようだが、ジェイドは半分くらいしか聞いていない。そもそも、この人に評価されたけど、この人がひねくれているだけでは? オーナーに見せたら大絶賛、なんてことはないだろうか。そう考えたら、審査してもらえたのは嬉しいが、さっさと終わらないかな、と考え始めた。

「だが、私は大好きだ。型にはまらない考えは、ショコラの歴史を進める。キミのような大失敗が時計の針を動かすんだ。美味しいだけのショコラじゃない、型破りなショコラティエールを目指してほしい」

「あ、ありがとうございます……」

 男性がまだなにか言っているが、どうでもいい。

「ま、私はこの店の者じゃないから、なんとでも言えちゃうんだけどね。ね? ロシュディ?」

「全くだ。変なことを吹き込まないでほしい」

 と、男性はドアの方を向いて、そこに立つロシュディと呼ぶ男に声をかけた。そしてロシュディもそれに答える。

「あ……!」

 ドアの傍らに立つロシュディに、ボーッとしていたジェイドは気づかなかった。しまった、適当に流していたところを見られたかもしれない。ちゃんと反省しているかどうか、そういうところも重視して見られていたら、まぁ悪い点がつくだろう。遅いかもしれないが、素早く姿勢を正す。

 そんな心境を知ってか知らずか、ロシュディはジェイドに歩み寄り握手を求める。

「はじめましてかな。キミがジェイド・カスターニュさんだね。オーナーのロシュディ・チェカルディだ。よろしく」

 一瞬間を置き、我に返ったジェイドはそれに応じる。よかった、バレて……ない?

「こちらこそ、よろしくお願いします!」

 目の前にM.O.Fがいる。憧れであり、そして挑戦する存在。ジェイドは聞いてみたいことが山のようにある。ショコラ作りで一番気をつけなければいけないことは? 自分くらいの年齢の時、どんなことを考えていたか。色々考えていたはずなのだが、まるで雪のように溶けていってしまって、口から出てこない。それほど緊張しているわけでもないのに。
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