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マリー・アントワネット
35話
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「あんたさ、なにがしたいの?」
ジェイドが引いて開けようとしたところで、女生徒は最後の質問。だいぶ曖昧なものになってしまったが、そう言う以外にない。
一瞬戸惑ったが、ジェイドはそのままドア引いた。そして、もう一度内容を伝える。
「なにって、キミにカルトナージュをお願いしたいんだ。あ、そういえば自己紹介まだだったね。ジェイド・カスターニュ。ベルギー生まれだ」
よろしく、と笑顔を作り、女生徒に先に入ることを促す。ドアマンのように仰々しい。
女生徒は諦め、とりあえずひとつは応じることにした。
「……オード」
横を通り過ぎる瞬間に名前を告げ、先に店の中に入る。閉店後なので当たり前だが、お客さんはいない。店主の親も三階のリビングにいるようだ。静かな店内の静謐さが好き。
そしてドアマンのジェイドも続いて入る。まず最初に目に入ってくるのは、スカイブルーの壁紙。そしてカラフルなものや、柄の入った布地が丸めた状態で器具にセットされ、取りやすく置かれている。その他にも額装品や多種多様な材質・柄の紙、タッセル、刷毛や取っ手など、手芸用の製品が五〇平米ほどの店内に所狭しと並んでいる。
「オード。オードが首を縦に振ってくれるまで、毎日来るよ。水曜と土曜以外」
キョロキョロとまわりを見渡しながら、ジェイドはオードについていく。店の奥の階段を上り二階へ。こちらはレッスンなどを教えるときに使うようで、比較的大きな机とイスが数脚。その他道具が机の上に。そして、店頭に出しきれない商品の倉庫として、ダンボールが少々。
「毎日じゃないじゃん……来られても困るけど」
オードは自身の荷物を机の上に置く。いつもこうしているのだろうか、携帯などの小物のみ手に取りさらに上の階段へ。
「バイトがあるんでね。じゃあ、それ以外の日。週五。問題ないでしょ? 私はしつこいよ」
階下から、ジェイドが譲歩してくる。週五が譲歩だと考えているのもどうかと思うが、彼女が諦めることは基本、ない。自分でも理解している。
しかし、オードはきっぱりと否定した。
「問題大ありよ。両親に迷惑がかかるでしょうが。というか、どこまでついてくるのよ。こっから先はあたしの家なの。わかったら帰って」
と、そのまま階段を上がり、その先の部屋に入っていってしまったようだ。
オードが消えた階段を見上げ、「ふむ」とジェイドは眉を顰めた。
「さて、どうしたもんかね」
ジェイドが引いて開けようとしたところで、女生徒は最後の質問。だいぶ曖昧なものになってしまったが、そう言う以外にない。
一瞬戸惑ったが、ジェイドはそのままドア引いた。そして、もう一度内容を伝える。
「なにって、キミにカルトナージュをお願いしたいんだ。あ、そういえば自己紹介まだだったね。ジェイド・カスターニュ。ベルギー生まれだ」
よろしく、と笑顔を作り、女生徒に先に入ることを促す。ドアマンのように仰々しい。
女生徒は諦め、とりあえずひとつは応じることにした。
「……オード」
横を通り過ぎる瞬間に名前を告げ、先に店の中に入る。閉店後なので当たり前だが、お客さんはいない。店主の親も三階のリビングにいるようだ。静かな店内の静謐さが好き。
そしてドアマンのジェイドも続いて入る。まず最初に目に入ってくるのは、スカイブルーの壁紙。そしてカラフルなものや、柄の入った布地が丸めた状態で器具にセットされ、取りやすく置かれている。その他にも額装品や多種多様な材質・柄の紙、タッセル、刷毛や取っ手など、手芸用の製品が五〇平米ほどの店内に所狭しと並んでいる。
「オード。オードが首を縦に振ってくれるまで、毎日来るよ。水曜と土曜以外」
キョロキョロとまわりを見渡しながら、ジェイドはオードについていく。店の奥の階段を上り二階へ。こちらはレッスンなどを教えるときに使うようで、比較的大きな机とイスが数脚。その他道具が机の上に。そして、店頭に出しきれない商品の倉庫として、ダンボールが少々。
「毎日じゃないじゃん……来られても困るけど」
オードは自身の荷物を机の上に置く。いつもこうしているのだろうか、携帯などの小物のみ手に取りさらに上の階段へ。
「バイトがあるんでね。じゃあ、それ以外の日。週五。問題ないでしょ? 私はしつこいよ」
階下から、ジェイドが譲歩してくる。週五が譲歩だと考えているのもどうかと思うが、彼女が諦めることは基本、ない。自分でも理解している。
しかし、オードはきっぱりと否定した。
「問題大ありよ。両親に迷惑がかかるでしょうが。というか、どこまでついてくるのよ。こっから先はあたしの家なの。わかったら帰って」
と、そのまま階段を上がり、その先の部屋に入っていってしまったようだ。
オードが消えた階段を見上げ、「ふむ」とジェイドは眉を顰めた。
「さて、どうしたもんかね」
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