Giftbiene【ギフトビーネ】

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Nf6

202話

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「いやはや。すごい人気だね。シシー・リーフェンシュタール様」

「茶化すな。そしてくっつくな。離れろ」

 場所はパリ、モンフェルナ学園の中庭。天気は快晴。中央には人工大理石を使った噴水が立ち上り、その周りには等間隔で八つの長い木製ベンチが取り囲む。そこに休憩しにきたシシー・リーフェンシュタール。からかいにきたサーシャ・リュディガー。

 現在の時刻は一五時。ドイツであればとっくに授業は終わり、みな既に帰宅の途についているであろう時間帯。だがここはフランス。この時間になりやっと終了。慣れない環境には新鮮さはあるが、疲労感が増す。

 一週間の留学。留学というほどでもないため、交流とするほうが正しいのかもしれない。寮の二人部屋を借り、過ごす緊張の日々。ヨーロッパでは異国との交換留学が盛んに行われている。そのため、姉妹校であれば毎年の年明け以降に留学が決まるわけだが。

「で? どう? 感想は?」

 すでに学園に溶け込んでいるサーシャ。学園の制服も用意されているため、どちらでもいいのだが、ここはあえてモンフェルナのものを着用。さらになにやらすでにできた友人からお菓子まで貰ったらしい。今度モルックでもやろう、と誘われた。ルールは知らない。

 平和。平和すぎて、シシーは自分がいてはいけないような気になるほどに。こちらも天気が悪い日が多いと聞いたが、ベルリンよりも天気がいい気がする。鳥の声もどこか澄んでいる。ちなみにそのままケーニギンクローネの制服。

「楽しい場所であることは認める。が、珍しいものを見る目は少し、な。普通はこの時期に留学はないから、仕方ないといえばそれまでだが」

 ここは共学。初めて男のいる空間で授業を受ける。別に気になるわけではないが、色々と話しかけられると少しやりづらさを感じる。やはり優等生ぶって、頼まれたことを引き受けるにも限度はあるか、と学習した。

 空に向かってため息をつくその姿を見て、ニヤニヤ薄ら笑いでサーシャは小声を浴びせる。

「なるほどなるほど。あの『毒蜂』でも苦手なものはある、と」

 ちょっとだけ弱気な顔。これも綺麗だ。

 しかしピリッと空気が張り詰める。シシーの重圧。

「その名前はここでは出すな。ここでは『優等生』シシー・リーフェンシュタールを貫く。夜。ドイツとは違うチェス。楽しませてもらう。お前は好きにしろ」

 噴水が弱まり、そして再度噴き上げる。まるで女王の威厳に一瞬、屈してしまったかのよう。
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