192 / 209
Bc4
192話
しおりを挟む
当然のことながらフェリシタスの両親からは、そういった援助は受けられないし、そもそもその人の素性も顔も明らかにできないのなら、尚更受け取れない、と暗雲が立ち込めた。
だが、逆に明かすなら支援はできないお金持ち、という設定をフェリシタスが盛り込んだおかげで、渋々、疑いはまだ晴れないが、受け入れることになった。家でも学校でも優等生で通っているというのは、時々使えるものである。
「そう、それなら……よかった……!」
いつものようにホテルにて。壁に寄りかかるそのフェリシタスに見守られながら、常連の女性に抱かれるサーシャ。いつも通り、誰かに見られていないと興奮しないらしい人。リディアのことも知っており、なにかできないか、とは思っていたとのこと。年齢は四〇代。
「私はサーシャちゃんを抱ける。サーシャちゃんはお金を稼げる。リディアちゃんは生きられる。一石三鳥ね」
「そんなものですかね……」
抱かずに寄付してくれてもいいんですよ? とフェリシタスはその女性に持ちかける。「それもありだけど……」と。しかし最近、さらに愛くるしさに磨きがかかったサーシャを見ていると、止まらないらしい。何度も舌を絡め合う濃厚なキスを交わし、料金ぶんしっかりと味わう。
抱かれながらも、頭にはリディアの顔が浮かぶ。体を売るだけで彼女が助かるのなら。助かる、っていうのとはちょっと違うのかもしれないけれど。可能性を残せている。だが浮かぶその顔は、どこか晴れないもので。こんな顔、見たことないかも、とサーシャは無心で人から愛を受け取る。
終わりの時まで何人抱かれればいいのか。抱けばいいのか。数えるのはやめた。
テーブルの上にはタバコと飲みかけの酒。その他、ちょっとお高めのオプション。撮影機材でベッドの上は撮られている。もちろん売り捌くためではない。そんなことをすれば捕まる。あくまで自分用。まぁそれも捕まるけど。三〇代女性。
男性ものの服と、女性ものの服。様々に着替え、それらを破りながら暴力的にサーシャを抱きたい。物静かで大人しそうな事務職。二〇代女性。
全面鏡張りの部屋。五〇代女性・三〇代女性その他複数。
聞いたことのないようなプレーも、値段の交渉次第。切れることなく埋まっていくスケジュール。様々な愛の形をサーシャは受け止め、その度に少しずつ、思い描いたリディアが泣き顔に変わっていく。そんな気がした。
(そんな顔しないでよ。可愛い顔が台無しだ……)
白ずみ、薄れていく。だが、また誰かから必要とされ、愛してもらえると色は濃くなる。徐々に。だが確実に。曇っていくリディアの表情。そんな顔、実際には見たことないのに。笑顔しか。あと、怒った顔。知らない顔が足されていく。
だが、逆に明かすなら支援はできないお金持ち、という設定をフェリシタスが盛り込んだおかげで、渋々、疑いはまだ晴れないが、受け入れることになった。家でも学校でも優等生で通っているというのは、時々使えるものである。
「そう、それなら……よかった……!」
いつものようにホテルにて。壁に寄りかかるそのフェリシタスに見守られながら、常連の女性に抱かれるサーシャ。いつも通り、誰かに見られていないと興奮しないらしい人。リディアのことも知っており、なにかできないか、とは思っていたとのこと。年齢は四〇代。
「私はサーシャちゃんを抱ける。サーシャちゃんはお金を稼げる。リディアちゃんは生きられる。一石三鳥ね」
「そんなものですかね……」
抱かずに寄付してくれてもいいんですよ? とフェリシタスはその女性に持ちかける。「それもありだけど……」と。しかし最近、さらに愛くるしさに磨きがかかったサーシャを見ていると、止まらないらしい。何度も舌を絡め合う濃厚なキスを交わし、料金ぶんしっかりと味わう。
抱かれながらも、頭にはリディアの顔が浮かぶ。体を売るだけで彼女が助かるのなら。助かる、っていうのとはちょっと違うのかもしれないけれど。可能性を残せている。だが浮かぶその顔は、どこか晴れないもので。こんな顔、見たことないかも、とサーシャは無心で人から愛を受け取る。
終わりの時まで何人抱かれればいいのか。抱けばいいのか。数えるのはやめた。
テーブルの上にはタバコと飲みかけの酒。その他、ちょっとお高めのオプション。撮影機材でベッドの上は撮られている。もちろん売り捌くためではない。そんなことをすれば捕まる。あくまで自分用。まぁそれも捕まるけど。三〇代女性。
男性ものの服と、女性ものの服。様々に着替え、それらを破りながら暴力的にサーシャを抱きたい。物静かで大人しそうな事務職。二〇代女性。
全面鏡張りの部屋。五〇代女性・三〇代女性その他複数。
聞いたことのないようなプレーも、値段の交渉次第。切れることなく埋まっていくスケジュール。様々な愛の形をサーシャは受け止め、その度に少しずつ、思い描いたリディアが泣き顔に変わっていく。そんな気がした。
(そんな顔しないでよ。可愛い顔が台無しだ……)
白ずみ、薄れていく。だが、また誰かから必要とされ、愛してもらえると色は濃くなる。徐々に。だが確実に。曇っていくリディアの表情。そんな顔、実際には見たことないのに。笑顔しか。あと、怒った顔。知らない顔が足されていく。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった
白藍まこと
恋愛
主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。
クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。
明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。
しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。
そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。
三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。
※他サイトでも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる