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Bc4
180話
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「僕が教えられるくらいになれば、もっと一緒に遊べる」
その一心で技術を吸収していく。頭を使いすぎてショートしたら、家に帰って眠る。隣には女性がいる。楽しかった。学ぶということが楽しいと初めて知った。好きなことを仕事にできたら。プロのチェスプレーヤー? ないない。でも、起きたら相談してみよう。そう考え自身も眠る。
そして数時間後に目覚める。月明かりが窓から入り込む。女性は先に起きていた。そして上体を起こして、横たわるサーシャを見つめている。いつもの景色。なはずだった。
「……どうしたの? 僕の顔になんかついてる?」
射殺すかのような。突き刺さる視線。見下ろす女性の目は、じっとりとしていて。鼻息も荒く、目も充血している。ハッと気づくと「ごめん、また体さすってくれる?」とお願いしてきたので、快く快諾した。
少しずつ歳を重ね、より容姿が整うサーシャ。昔から中性的な可愛らしさはあったが、今は美しさが際立ってきている。白くキメの細かい肌。長い睫毛。憂いを帯びた瞳。柔らかくボリュームのある朱色の唇。月明かりに照らされる。あと数年したら、さらに。さらに。
女性が震える。なにかを押さえつけているかのように、唸りつつ歯をガチガチと鳴らす。違う、と。誰かに言い訳をする。自分は違う、そうじゃない。アイツらとは違う。
「——でね、そうしたら僕が——」
楽しそうにサーシャが話しかけてくれている。だが、よく聞こえない。吐き気を我慢しながら。もっと強く。体を。触れるだけではダメだ。掻きむしるように。そうじゃなきゃ……虫が……虫が……!
「だから僕もその時に——」
と会話を続けているサーシャだが、ふと、あることに気づいた。なんだろう、デコボコとしているような。服の上からだったので気づきづらかったのだが、少しめくった部分がカサブタになっている。電気も消した、というより止められてしまっているので、全然気づかなかった。
女性はずっと無言を貫いている。荒かった息は静まり、ただ時々ピクピクと動く。もういいよ、と手で制し、少し離れるように、ひとりにしてほしいと、やっとのことで口を開いた。
不可解に思いながらも、サーシャは悩む。たぶん、なにか嫌なことが職場であって、落ち込んでいるのだろう。どうすればいいんだっけ。そうだ、おばあさんがよくやってくれたこと。それを実践。
離れるように言ったはず。なのに無言でサーシャが震える体を抱きしめてくれた。一瞬、飛び跳ねるように身を強張らせた女性は、強く引き剥がそうとするが、それよりもゾクゾクっと体に力が漲ってくるようで。爪を噛んで耐える。
「僕が小さい頃、こうしてもらったから」
温かく、落ち着いた記憶。そのままゆっくりと眠って、次の日は晴れやかな気持ちになった。それを。今すべき時なんだと思う。こんな感じでいいのかな。まだ背丈は及ばないので、抱くというよりかはくっついているみたいだけど。
「やっぱり、僕も働く。ねぇ、どうしたら——」
突然、女性が上体を起こし、サーシャの両肩を強く抑える。その際に服のボタンが弾け飛んだ。胸元が露わになったその白い肢体。ベッドが軋んで嫌な音を立てる。
荒く息を吐き、血眼になった目でその美しきサーシャの体を舐め回すように。歪んだその口元からは涎が盛大にこぼれ落ち、頬を、首筋を濡らす。
驚いたような表情のサーシャではあったが、すぐに笑みを浮かべた。ようやく。ようやく役に立つことができる。
我に返った女性は「違う、違う、アイツらとは……」と震え、だがまだ相手の体を押さえつけたまま動こうとはしない。意識と体が相反する。違う。違う。そう何度も繰り返す。自分は……〇・〇三パーセントじゃ、ない……! 一緒に……しないで……!
目を瞑り、動きをやめたサーシャ。小さく呼吸し、胸元が鼓動。
大丈夫、大丈夫、違うから、私がサーシャを、守って、一緒に、大丈夫、抑えて、またチェスを、図書館、そう、図書館に一緒に行こう、勉強もできるから、また、洋服も買って、そして大学とか、大学とか行って——
「……僕はいいよ。初めてだから、優しく、ね」
そうしてゆっくり下からサーシャは女性を抱き抱え、耳元に吐息を当てた。
「——」
その一言が引き金となった。内側に巣食う、抑えきれない衝動。その性衝動を全て。
女性は目の前の美しき『我が子』に吐き出した。
その一心で技術を吸収していく。頭を使いすぎてショートしたら、家に帰って眠る。隣には女性がいる。楽しかった。学ぶということが楽しいと初めて知った。好きなことを仕事にできたら。プロのチェスプレーヤー? ないない。でも、起きたら相談してみよう。そう考え自身も眠る。
そして数時間後に目覚める。月明かりが窓から入り込む。女性は先に起きていた。そして上体を起こして、横たわるサーシャを見つめている。いつもの景色。なはずだった。
「……どうしたの? 僕の顔になんかついてる?」
射殺すかのような。突き刺さる視線。見下ろす女性の目は、じっとりとしていて。鼻息も荒く、目も充血している。ハッと気づくと「ごめん、また体さすってくれる?」とお願いしてきたので、快く快諾した。
少しずつ歳を重ね、より容姿が整うサーシャ。昔から中性的な可愛らしさはあったが、今は美しさが際立ってきている。白くキメの細かい肌。長い睫毛。憂いを帯びた瞳。柔らかくボリュームのある朱色の唇。月明かりに照らされる。あと数年したら、さらに。さらに。
女性が震える。なにかを押さえつけているかのように、唸りつつ歯をガチガチと鳴らす。違う、と。誰かに言い訳をする。自分は違う、そうじゃない。アイツらとは違う。
「——でね、そうしたら僕が——」
楽しそうにサーシャが話しかけてくれている。だが、よく聞こえない。吐き気を我慢しながら。もっと強く。体を。触れるだけではダメだ。掻きむしるように。そうじゃなきゃ……虫が……虫が……!
「だから僕もその時に——」
と会話を続けているサーシャだが、ふと、あることに気づいた。なんだろう、デコボコとしているような。服の上からだったので気づきづらかったのだが、少しめくった部分がカサブタになっている。電気も消した、というより止められてしまっているので、全然気づかなかった。
女性はずっと無言を貫いている。荒かった息は静まり、ただ時々ピクピクと動く。もういいよ、と手で制し、少し離れるように、ひとりにしてほしいと、やっとのことで口を開いた。
不可解に思いながらも、サーシャは悩む。たぶん、なにか嫌なことが職場であって、落ち込んでいるのだろう。どうすればいいんだっけ。そうだ、おばあさんがよくやってくれたこと。それを実践。
離れるように言ったはず。なのに無言でサーシャが震える体を抱きしめてくれた。一瞬、飛び跳ねるように身を強張らせた女性は、強く引き剥がそうとするが、それよりもゾクゾクっと体に力が漲ってくるようで。爪を噛んで耐える。
「僕が小さい頃、こうしてもらったから」
温かく、落ち着いた記憶。そのままゆっくりと眠って、次の日は晴れやかな気持ちになった。それを。今すべき時なんだと思う。こんな感じでいいのかな。まだ背丈は及ばないので、抱くというよりかはくっついているみたいだけど。
「やっぱり、僕も働く。ねぇ、どうしたら——」
突然、女性が上体を起こし、サーシャの両肩を強く抑える。その際に服のボタンが弾け飛んだ。胸元が露わになったその白い肢体。ベッドが軋んで嫌な音を立てる。
荒く息を吐き、血眼になった目でその美しきサーシャの体を舐め回すように。歪んだその口元からは涎が盛大にこぼれ落ち、頬を、首筋を濡らす。
驚いたような表情のサーシャではあったが、すぐに笑みを浮かべた。ようやく。ようやく役に立つことができる。
我に返った女性は「違う、違う、アイツらとは……」と震え、だがまだ相手の体を押さえつけたまま動こうとはしない。意識と体が相反する。違う。違う。そう何度も繰り返す。自分は……〇・〇三パーセントじゃ、ない……! 一緒に……しないで……!
目を瞑り、動きをやめたサーシャ。小さく呼吸し、胸元が鼓動。
大丈夫、大丈夫、違うから、私がサーシャを、守って、一緒に、大丈夫、抑えて、またチェスを、図書館、そう、図書館に一緒に行こう、勉強もできるから、また、洋服も買って、そして大学とか、大学とか行って——
「……僕はいいよ。初めてだから、優しく、ね」
そうしてゆっくり下からサーシャは女性を抱き抱え、耳元に吐息を当てた。
「——」
その一言が引き金となった。内側に巣食う、抑えきれない衝動。その性衝動を全て。
女性は目の前の美しき『我が子』に吐き出した。
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