Giftbiene【ギフトビーネ】

文字の大きさ
上 下
177 / 209
Bc4

177話

しおりを挟む
 そうしてひとりになってしまったサーシャだが、非常に美しい容姿であること。そしてドイツにおいて売春は合法。貧困にあえぐ家の事情。国から支給される『親手当』もすぐにギャンブルで失う愛情のない親。そうなると辿る道はひとつ。

 FKK。フライケルパーカルチュア。自由な肉体の文化。つまり性風俗。しっかりと『売春税』さえ払っていれば、なにも問題はないとされる国ではあるが、流石に今の年齢では不可能。雇うことなどできない。稼げないなら、とそこで親には完全に捨てられた。

「どうやったら僕も働けるの? 頑張るけど」

 そうホテルの従業員に言って働かせてもらおうとするが、ダメなものはダメ。道徳に反する。もし雇って見つかったら責任者は一年以上、一〇年以下の自由刑。隷属状態に置いた場合は二五三条一項により、さらに重い刑罰。

「街で見て覚えたから。僕にもできるはず」

 年端もいかない子供に迫られた従業員だが、最初は断りつつも、その男とも女ともいえない瑞々しい蕾。背徳的な欲望に駆り立てられる。だが、ギリギリのところで踏みとどまったようで、サーシャは怪しいピンクネオンのホテルロビーから、中世風な色合いを残す街並みに追い出されてしまった。

 養護施設に入るという案もあったが、サーシャは逃げ出した。得られるものはないし、入れる期間は二年しかない。だとしたらそこで二年間塩漬けにされているよりも、街に繰り出して世界を知るほうが有意義だと感じたから。

 ケルン、デュッセルドルフ、ハノーファー、様々なところへ行った。食事を得るため、眠る場所を得るため、暖をとるため。そして、自分にも他人を喜ばせることができる、という自信を確信に変えるため。そうすれば生きている、という実感が湧いてくる。

 最初に買ってくれた女性は娼婦で、自身の経験から「可愛い顔をしているから、男はやめておくように」と強く念を押された。お金をくれる、というよりかは一緒に住まわせてくれて。ご飯を食べさせてくれて。話し相手になってくれて。

 おばあさんが最初の母親だとすると、二番目の母親になるのだろうか。買われた、とは言ってもただただ普通に接してくれただけ。子供が欲しかったらしいけど、産めないので引き取ってくれた、という感じだったのか。あまり里親、という制度に良い印象を持っていないらしい。

「僕はここにいていいの?」

 かつてドイツには『ケントラー実験』というものが存在した。なんらかの事情により親元で育てることができない子供を、小児性愛者の養子にするという国から認められた実験。それを提唱したのが、ドイツにおける性教育の第一人者である心理学者ヘルムート・ケントラーだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

処理中です...