Giftbiene【ギフトビーネ】

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Bc4

177話

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 そうしてひとりになってしまったサーシャだが、非常に美しい容姿であること。そしてドイツにおいて売春は合法。貧困にあえぐ家の事情。国から支給される『親手当』もすぐにギャンブルで失う愛情のない親。そうなると辿る道はひとつ。

 FKK。フライケルパーカルチュア。自由な肉体の文化。つまり性風俗。しっかりと『売春税』さえ払っていれば、なにも問題はないとされる国ではあるが、流石に今の年齢では不可能。雇うことなどできない。稼げないなら、とそこで親には完全に捨てられた。

「どうやったら僕も働けるの? 頑張るけど」

 そうホテルの従業員に言って働かせてもらおうとするが、ダメなものはダメ。道徳に反する。もし雇って見つかったら責任者は一年以上、一〇年以下の自由刑。隷属状態に置いた場合は二五三条一項により、さらに重い刑罰。

「街で見て覚えたから。僕にもできるはず」

 年端もいかない子供に迫られた従業員だが、最初は断りつつも、その男とも女ともいえない瑞々しい蕾。背徳的な欲望に駆り立てられる。だが、ギリギリのところで踏みとどまったようで、サーシャは怪しいピンクネオンのホテルロビーから、中世風な色合いを残す街並みに追い出されてしまった。

 養護施設に入るという案もあったが、サーシャは逃げ出した。得られるものはないし、入れる期間は二年しかない。だとしたらそこで二年間塩漬けにされているよりも、街に繰り出して世界を知るほうが有意義だと感じたから。

 ケルン、デュッセルドルフ、ハノーファー、様々なところへ行った。食事を得るため、眠る場所を得るため、暖をとるため。そして、自分にも他人を喜ばせることができる、という自信を確信に変えるため。そうすれば生きている、という実感が湧いてくる。

 最初に買ってくれた女性は娼婦で、自身の経験から「可愛い顔をしているから、男はやめておくように」と強く念を押された。お金をくれる、というよりかは一緒に住まわせてくれて。ご飯を食べさせてくれて。話し相手になってくれて。

 おばあさんが最初の母親だとすると、二番目の母親になるのだろうか。買われた、とは言ってもただただ普通に接してくれただけ。子供が欲しかったらしいけど、産めないので引き取ってくれた、という感じだったのか。あまり里親、という制度に良い印象を持っていないらしい。

「僕はここにいていいの?」

 かつてドイツには『ケントラー実験』というものが存在した。なんらかの事情により親元で育てることができない子供を、小児性愛者の養子にするという国から認められた実験。それを提唱したのが、ドイツにおける性教育の第一人者である心理学者ヘルムート・ケントラーだった。
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