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第10章

確信と迷い

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菜乃花は恵子が手を離しても恵子の存在を感じとり、迷うことはありません。
(この自然の中で、全身タイツを着た恵子と私の二人きり。不思議ね。タイツで見えなくても恵子が分かるのよ。恵子を感じるのよ。お互い愛しているからだよね、恵子)
(菜乃花が見えなくても菜乃花を感じるわ。菜乃花も私を感じているみたい。やっぱりお互い愛し合っているからなの?私、本当に菜乃花を愛しているの?カミーユ、私、まだよく分からないの。でも、今までよりもずっとずっと菜乃花を感じるし、菜乃花に引かれてるわ)
菜乃花が恵子を抱きしめたいと感じたとき、恵子も菜乃花を抱きしめたいと感じて抱き合います。
菜乃花が恵子と唇を重ねたいと感じたとき、恵子も菜乃花と唇を重ねたいと感じてタイツ越しに唇を重ねます。
そのままタイツ頬で頬擦りしながら抱きしめ合い、お互いのタイツ手でタイツ頭やタイツ体を愛撫しあいます。
「恵子‥」
「菜乃花‥」
微かに囁きながら、草原で、林の中で、小川の辺りで何度も抱き合います。
誰にも邪魔されない、二人だけのタイツの妖精の世界に浸る幸せを菜乃花も恵子も感じていました。

それでも恵子の心から揺らぎは消えません。
菜乃花を抱きしめても、タイツの中に詩絵美が浮かび上がります。
(私、菜乃花を愛してる‥それでいいかな、カミーユ?でも、詩絵美を愛していないって言う自信がないわ。明日、詩絵美に会ったとき、どう感じるか‥ね)
今は菜乃花に気持ちを集中させようと、菜乃花の手を強く握りしめて、林の中を歩きます。

「恵子、林の風が爽やかね。木漏れ日を浴びるのもすごく気持ちいいわ」
菜乃花は大きく深呼吸するようなポーズでタイツ越しに林の空気を吸い込みます。
「菜乃花、見えなくても感じるのね」
「全身タイツが感じるのよ。タイツと心と体が一体になっているわ。セックスとは違う気持ち良さを感じるのよ。愛する全身タイツの恵子がそばにいるからよ。もちろん、恵子をしっかり感じているわ。恵子と全身タイツ、最高よ」
「私も菜乃花と全身タイツ、最高よ。タイツが菜乃花を敏感に感じているわ。でも、そろそろ戻りましょう」
「そうね、全身タイツの散策、素敵だったわ。また散策しようね。今度は普通の全身タイツの散策がいいわ」
「OKよ。さあ、帰りましょう」

家に戻ると一緒にシャワーを浴びます。
「うわあ、やっぱり髪の毛がすごいことになってる!全身タイツの唯一の弱点だよね」
菜乃花の悲鳴が脱衣所に響きます。
「菜乃花、それは仕方ないわよ。嫌なら全身タイツを諦めないわとね」
「それは嫌よ。仕方ないわね~、まあ、恵子と一緒にシャワーを浴びればいいからOKだね!」
菜乃花は嬉しそうに恵子の手を引いて浴室に入ります。

菜乃花と恵子は抱き合いながらレインシャワーを浴びます。
シャワーにうたれながら、濃厚なディープキスを交わし、菜乃花の右手が恵子のヴァギナに触れた瞬間、恵子が唇を離して菜乃花の右手を力いっぱい弾きます。
「菜乃花、やめて。タイツを履いていないときにそういうのは絶対イヤよ。タイツを履いていない私は本当の私じゃないんだから、体を求めたりしないで。菜乃花でも許さないわ」
「恵子、ごめんなさい。つい、嬉しくって‥」
涙目になりそうな菜乃花を恵子はシャワーにうたれながら、優しく抱きしめます。
「菜乃花、タイツ=私なのよ。菜乃花にはタイツを履いた私だけ見てほしいのよ」
恵子は菜乃花の濡れた髪を撫でながら、優しく微笑みました。

シャワーを浴び終えると髪の毛を乾かして、いつものシームレスハイウエストタイツを履きます。
菜乃花が待ってましたとばかりに恵子を抱きしめます。
すぐに右手が恵子のヴァギナをタイツの上から捉え、中指がクリトリスをタイツ越しに擦ります。
「ああっ、菜乃花」
恵子の右手もすぐに菜乃花のクリトリスをタイツの上から刺激し始めます。
「ああっ、恵子、ああっ」
二人の唇が重なり濃厚なディープキスを交わしながら、二人の右手が激しく動き、荒い鼻息の中でタイツ体やタイツ脚を痙攣させながら、あっという間に昇天してしまいました。

菜乃花は今回のお泊まり会を心から満足していました。
「菜乃花、愛してる」
恵子の叫びがずっと耳に残っています。
(間違いなく恵子の本当の気持ちよね。でも焦らないようにしないと恵子の気持ちが離れてしまうわ)
クリイキの余韻に浸りながら、菜乃花は恵子を愛おしく抱きしめました。

恵子は菜乃花に抱きしめられながら、幸せと戸惑いが心の中を交錯しています。
(菜乃花、私、菜乃花を愛している。だけど詩絵美も‥カミーユ、焦らずに自分の気持ちを確かめたいわ。今はそれしかできないわ。それでいいよね、カミーユ‥)
菜乃花を愛していることは確信しましたが、詩絵美に対する思いを確かめるまでは菜乃花の気持ちを受け入れられないと強く思いました。
明日、詩絵美に会ったとき、何を感じるか‥恵子の気持ちがまだまだ揺らいでいるのが、菜乃花も感じました。

「恵子、外でお昼ご飯食べない?」
「え?それなら、私、作るわよ」
当初はお昼前に菜乃花は帰る予定だったので、昼食を考えていませんでした。
「ちょっと気分を変えたいのよ。恵子とおうちデートだけじゃなくって、お外デートもしたいのよ」
「分かったわ。菜乃花を送りがてらカフェで食べる?」
「あ、だったら、ハンバーガーショップにしない?」
「え?ああ、いいわよ」
菜乃花の意味ありげな視線が少し気になりましたが、恵子はOKしました。

さすがにバーガーショップへタイツ姿で行くことは出来ないので、パーカーを着て外に出ました。
菜乃花もキャリーバッグを抱えて出てきました。
「恵子、付き合わせてごめんね。少しでも長く恵子といたいのよ」
「菜乃花、分かったわよ」
菜乃花の左手がそっと恵子の右手を握ると、恵子も軽く握り返しました。
菜乃花は少し恥ずかしげに恵子の手を引いて歩き始めました。


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