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第9章

追加の約束

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恵子は昼からは全身タイツで課題の学習や片付け、庭の散策を行い、夕食の準備はシームレスハイウエストタイツに履き替えて行いました。
夕食後は貴浩の家を訪問する予定です。
「夜に全身タイツで外に出ていないから、全身タイツで行こうかな。今日はセックスするつもりもないし。頼子さんから貴浩くんとセックスしてほしいって言われても、頼子さんが貴浩くんとセックスするのが一番いいはずよ」
夕食後の片付けを終えると、再び全身タイツに着替えました。

貴浩が夕食を終えそうな時間を見計らって外に出てみました。
「う~ん、ちょっと暗くてタイツ越しでは見えにくいわ。問題なく行けるとは思うけど‥そうだ、どうせ見えにくいなら‥」
恵子は急いで2Fに上がり、もう一つの裏起毛の全身タイツに着替えました。
顔を覆い、後頭部のファスナーを閉めると、やはり何も見えません。
でも、今日も周りの世界の気配を感じることができます。
そのまま、ごく自然に階段で1Fへ降り、外へ出ることができました。
もちろん、真っ白な毛が無数に見えるだけで、周りは何も見えません。
それでも恵子の心の中に周りの景色が浮かび上がり、自信を持って歩を進めました。

貴浩の家のインターホンが鳴りました。
「恵子ちゃんだな。あ、全身タイツか‥セックスは絶対ダメだな‥」
貴浩はドアを開けて、恵子を迎え入れました。
「恵子ちゃん、いらっしゃい」
「貴浩くん、今晩は」
(うわあ、やっぱり全身タイツの恵子ちゃん、興奮するよ。うー、抱きしめたいし、射精したいよー)
「恵子ちゃん、今日も全身タイツ、素敵だよ。あれ?前の全身タイツと違うよね?」
菜乃花と抱き合うときに着ている全身タイツはシームレスですが、この裏起毛の全身タイツは顔や体の真ん中にシームが通っています。
「この全身タイツ、そんなに厚手じゃないけど、裏起毛ですごく暖かいのよ」
「へえ、そうなんだ。あ、せっかくだから上がってよ」
「それじゃあ、ちょっとだけお邪魔します」
貴浩の家の中も気配を感じとることができ、リビングへ入りソファに座りました。

貴浩がキッチンへ入り、タッパーの入った手提げ袋を持ってきました。
「これ、ありがとう。すごく美味しかったよ」
貴浩が手提げ袋を恵子に渡そうとしますが、恵子は受け取る素振りを見せません。
「え?恵子ちゃん?」
「あ、貴浩くん、ごめんね。この全身タイツ、裏起毛だから透けなくて、中から外がまったく見えないのよ。周りの気配は感じることができるから、貴浩くんがそこにいるのは分かるんだけど、何を持ってるかまでは分からないのよ。手渡してもらえるかな?」
「え?見えないって‥恵子ちゃん、本当に何も見えないの?」
貴浩は恵子の手に袋を持たせながら聞きました。
「ええ、目の前は短い毛がたくさんあるタイツの白い裏地が見えるだけで、タイツの外はまったく見えないわ」
試しに貴浩は黙ってゲンコツを勢いよく恵子の顔面に近づけましたが、恵子は避ける素振りを見せません。
「貴浩くん、今、私のすぐそばにいるでしょう。そういう気配は感じるのよ」
「あ、ごめん」
貴浩は恵子の斜め向かいに座りました。

貴浩は興味深く恵子を観察します。
恵子も貴浩がじろじろ見ている気配は感じます。
それが少し快感に感じられます。
(全身タイツの私をもっと見て、貴浩くん。見られるとすごく気持ちいいのよ)
「恵子ちゃん、何も見えないのに、どうやって来たの?今も玄関からここまで何もぶつからずに来て、ソファに座ったよね?」
「自分でも上手く説明できないんだけど、心でタイツの外の世界が感じられるのよ。周りの世界が心の中に浮かび上がってくるのよ。この部屋の様子も、貴浩くんの様子も見えていなくても分かるわ。だから、家からここまで何も不安を感じずに、堂々と歩いて来ることができたのよ。この前はこの全身タイツで裏の草原や林の中を散策したわ。何も見えないけど、日光の暖かさや風の爽やかさ、木漏れ日の美しさ、小川のせせらぎの穏やかさをタイツが感じ取って、すごく心地よかったわ。それに何より、何にも見えない全身タイツで外の世界を歩いてるってことに興奮と快感を感じるのよ。新しい私がいるって感じるのよ。全身タイツ、本当に幸せだわ」
全身タイツですごく嬉しそうな恵子に、貴浩もかなり興奮しています。

「恵子ちゃん、立ってもらっていい?何も見えない全身タイツの恵子ちゃんをもっと見たいんだ」
「ええ、いいわ。いっぱい見てほしいわ」
恵子はスッと立ち上がりました。
(うわあ、恵子ちゃん、最高だよ。ああ、抱きしめたい、射精したいよ)
貴浩が無意識に手を出して触ろうとすると、恵子がまるで見えているかのようにサッと身を引きました。
「貴浩くん、今、触ろうとしたでしょう。エッチなこと考えているでしょう」
(え?何で分かるんだ?)
「今、貴浩くんの気配をタイツが感じたわ。絶対に触らないで。抱きしめたら絶対に許さないわよ」
「恵子ちゃん、お願いだよ。一回だけでいいから抱きしめたいんだよ」
「イヤよ、絶対にイヤ。今、抱きしめてペニスを擦り付けて射精しようとしたでしょう」
「え、いや、あの‥」
恵子のすごい剣幕に貴浩はたじろぎます。

「絶対に近寄らないでよ。全身タイツは新しい自分になりたくて着用してるのよ。全身タイツで性行為をするつもりはないわ。オナニーすらしないって決めてるんだから、絶対に触らないでよ。見るだけなら構わないわ。でも見ながらオナニーはダメよ」
「恵子ちゃん、ごめん。絶対触ったりしないよ。その代わり、じっくり見させて。それと恵子ちゃんの前でオナニーはしないよ。射精するならイラマチオかセックスの時って決めてるから」
「貴浩くん、溜まってるみたいだけど、オナニーはしてないの?」
「最後にオナニーしたのは、頼子が入院する前の日の夜だよ。それからはしてないんだ」
(頼子さん、体調悪くてセックスできなかったからオナニーしたのね。その後はやっぱり頼子さんを思ってしてないんだ‥)
「貴浩くん、射精したい?」
「ああ、したいよ。恵子ちゃんに想いを込めて射精したいよ」
貴浩は勃起しているペニスをズボンの上から握りながら答えます。
「でも今はダメよ。全身タイツの時は絶対ダメよ」
(「今は」って言ったよね。「全身タイツの時は」って言ったよね‥)
「ああ、分かってるよ」
「それじゃあ、そろそろ帰るから」
「あ、送ってくよ。全身タイツの恵子ちゃんを少しでも長く見たいんだ。もちろん、抱きしめたりしないよ」
「それじゃあ、ボディガードよろしくね!」

恵子は帰り道もまるで見えているかのように、堂々と歩いています。
「恵子ちゃん、本当に見えていないのかな?」
貴浩は少し不思議な気持ちでそばを歩きます。
二人は雑談をしながら、すぐに恵子の家に着きました。
「貴浩くん、少し私を疑ってるでしょう?」
「え?何で分かったの?」
「タイツが感じたのよ」
恵子は後頭部のファスナーを開けて、顔を出しました。
「うわあ、髪の毛ボサボサで恥ずかしい」
髪の毛を押さえながら、顔を覆うタイツの裏地を貴浩に見せました、
「え?これだと絶対見えないよね。本当に見えないのに歩いてきたんだ。これ、すごいよ、恵子ちゃん。マジで不思議だよ!」
「このタイツ、すごく感覚が研ぎ澄まされるのよ。新しい私になれるのよ」
恵子はすぐにタイツで顔を覆い、ファスナーを閉めました。
見えない全身タイツに貴浩も恵子も興奮が高まっています。

「全身タイツ、見せてくれてありがとう。それじゃあ、またね」
貴浩は興奮して恵子を犯してしまう前に立ち去ろうとしました。
「あ、貴浩くん、ちょっと待って」
「え?何?」
「明日の朝食、一緒に食べない?祝日だから学校は休みでしょ?」
「え?いいのかい?ぜひ、お願いするよ」
「明日は私も午前中は時間があるから。それじゃあ、ランニング終えたら、シャワー浴びてから来てね。あ、明日は全身タイツじゃないわ。それじゃあね」
「あ、恵子ちゃん、それって‥」
恵子は貴浩の言葉を待たずに家に入ってしまいました。

「明日、期待していいのかな?」
貴浩は半信半疑ながらも恵子と朝食を共にすることは嬉しくて、鼻歌を歌いながら帰路につきました。
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