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第6話 ドッグスター

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 特に口に出して確認していたわけでもない。
 でも何故かお互い自然と当たり前のように、その日だと確信を持っていた。

 朝の通学。
 授業中。
 昼休み。
 放課後。
 下校して家に帰ってくるまで。

 すぐそばで言葉を交わしているときも、距離を置いた先で視線だけを合わせたときも。
 何時に無く真摯な眼差しで口数も少ない。

 そして今二人。
 俺の部屋のソファーで並んで座っている。

 視線は目の前のテーブルの端に落として互いに無言。
 でも気まずいわけじゃない。

 緊張感もある。
 不安もある。
 だけどそれ以上にコイツと一つになりたいって言う静かで確かな想いに満たされている。
 自分でも驚くほど落ち着いている。

 触れるか触れないかの間隔で肩を接して横にいる存在。
 制服のグレーチェックのスカートから伸ばした綺麗な足を内股気味に床に下ろしている様子は特に気負ったところは感じない。
 きっと俺と同じなんだと思いたい。
 いよいよこのときが来たのを真っ直ぐに迷い無く受け入れてくれているんだと。

 やがて。
 以前から決められていたかのようになんの前置きもなく手を握ると。
 顔を横に向けて見詰め合う。

 大きな瞳。
 何時もより淡く儚い輝き。
 すべてを見通されているような。
 なにも映していないような。

 魅入られたまま身体を寄せて。
 キスをしながら抱きしめた
 片手を握ったまま後ろ手にさせて。
 華奢な身体を折るほどに力を込めて。

 
 それが始まりの合図だった。

 
 なによりも大切な存在のすべてを知る。
 
 しらない声。
 しらない貌。
 しらない匂い。
 しらない味。
 しらない感触。

 その全てが俺を沸騰させ。
 熱いエネルギーがわいてくる。
 壊しながら癒したい。
 追い詰めながらやさしくしたい。
 相反するものが複雑に混じり合った強く激しい衝動。

 やがて心と身体を満たしていったものが閾値を超えて限界を迎えた瞬間。

 なにもかもを解き放っていた。
 そこには歓喜と静寂があった。


 気だるい余韻は確かな幸福感に包まれていた。
 やさしく穏やかな時間が流れていく。

 胸に抱いたぬくもりはただただ愛しい。

 やがて俺の胸を指先でつついたりなぞったりしていたのをやめて。
 シーツを摺る微かな音をさせながら顔を見上げてくる。


 そろそろ帰るね。


 背中を向けて下着を着る姿も初めて知った。
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