エロスな徒然

かめのこたろう

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2019年 02月02日

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 二次元エロ表現の進化発展の著しさには日々目を見張るばかりですが、三次元エロもまた常に新たな地平を切り開いていることを痛感させられます。
 まさか実写で「アヘ顔ダブルピース」や「”らめぇ~””んほぉぉぉ”に代表されるみさくら風淫語」が性的嗜好品として表現される日がくるとは予想だにもできませんでした。

 ともすれば二次元分野ですら「ネタ」的な受け入れられ方であったのを、三次元で再現可能なのか。
 なんとか形だけ再現できたとしても結局、奇抜で前衛的な面白みとか可笑しみ、興味本位で好奇な視線を向けるだけの”見世物”的なものにしかなりえず、決して「エロ」くはできないのではないか。
 ただでさえデフォルメエロ表現の極北に位置し二次元の世界でもリアル系とは完全に相容れないようなものを生身の女性にさせて、「性的消費対象としての実用性」を持ちえることは果たしてできるのか。

 ちょっとでもエロマンガやエロゲーなど二次元エロを知る者であれば抱いて当然の疑問と懸念であったはず。
 絶対にオカズになんてできない、抜けるわけがない。
 ほぼ確信と言っていい高精度の予測であり、もはや確定事項でしかない。

 だからあまりにも自明すぎて表立って言いはやすまでもなく、「わざわざ三次元実写で表現し、ましてや商品として売り出すヤツなんていない」というのが誰もが心の奥底で思っていた共通認識だった筈。

 それが今や普通に「アヘ顔」「みさくら風淫語」をテーマにした実写AV作品がリリースされているこの現状。
 一部の素人系コスプレアイドル写真や動画で取り扱われ始めたかと思ったら、すぐに商業分野で展開し始めるまであっという間でした。
 終いにはSNSで外国人女性が「AHEGAO」という言葉を使って自撮り写真を公開するのが流行するようにまでなる始末。
 ジャパニーズエロカルチャリングを象徴する言語として世界に認知されつつある様子は、かの「HENTAI」と同じ道を辿っているかのようです。

 もはや名実共に二次元から三次元の壁を乗り越えて、「アヘ顔」「みさくら淫語」という概念は宇宙に展開拡散し始めていることは間違いありません。
 自分たちが抱いていたのがあまりにも偏狭で短慮な先入観であり固定観念であったのがまざまざと証明されたことは認めざるをえないでしょう。


 ……まぁ、「たぶん抜けない」という予想はまんまと当たっていたのではありますが。


 でもオカズになりうるか否かとか実用性の有無なんて、もはや関係ない次元なんだと思います。
 見るもの全てに強烈に訴えてくるその奇妙奇天烈不可思議でミステリアスな不気味さ憎たらしさ、思わず笑ってしまうような面白可笑しさ。
 同時に確実に存在する愛らしさ美しさ、グロテスクやバロックキュピズムに通じるものを思わせるような造形美様式美。
 単純な「エロ」という価値だけでは評価できない、様々な魅力を人々に訴える高度な表現物がそこには存在するような気がします。
 そうして何処からとも無く生まれ出てやがて巨大な潮流へとなっていった一個の概念が、遂には物理世界をすら侵食していく。
 ひたすら「表現」を追及していくことへの飽くなき欲求と挑戦、そして齎された世界の在り様に賛辞を送ること以外に出来ることがあるでしょうか。


 「アヘ顔」「みさくら風淫語」が出てくる三次元作品を見るたびに、そこにはエロティシズムとは相容れないはずのものが矛盾することなく同居しているのを確信するのです。
 それは「喜怒哀楽」に象徴される人間の情念の数々、幾多の感情が複雑に微妙に混じり絡み合って昇華されたときに齎される「感動」というものなのかもしれません。

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