エロスな徒然

かめのこたろう

文字の大きさ
上 下
115 / 218

番外トピック① ラノベの表紙がエロい問題に見る二次絵表現技術の凄み

しおりを挟む


 例によって世間とか社会とかいうやつはなんとなく漠然と自分を蔑ろにして虐げていると一方的に思い込んでいて常に背中を向けてそっぽを向いているので時事ネタは全然わかりません。
 だからこの問題が話題になってたっていうのもついさっき知ったんですが。

 なんだかラノベの表紙がエロイ、けしからん!って言い出した人がいて、ネット上でちょっとした騒ぎになったみたいですね。
 ツイッターユーザが女児を連れて本屋に行ったところ、その子が平積みになってたラノベの表紙を見て「気持悪い」って嫌悪感を示したらしく、そこからゾーニングとか表現規制とかいった話に繋がって、賛同する人反対する人相乱れての大論争になってたらしいです。

 詳しくは「ラノベ 表紙 気持悪い」でググッてくれればと思いますが、現時点ではもうすっかり沈静化しており完全に過去の話になってるっぽいので、今更調べる人が「遅れてる」ことだけは間違いありません。
 ついさっき実際にどんな表紙が問題になったのか発端となったユーザが掲示した本屋の平積みの様子を撮った写真を確認してきた自分はまごうことなき遅れた人です。


 でもその程度の羞恥プレイには屈しません。


 今回槍玉に挙がった対象のラノベは「境界線上のホライゾン」11巻(中)とのこと。
 作品自体は読んだことはないのですが、アニメになったりした人気作らしいので名前だけは知っています。
 「すさまじく一冊一冊が分厚すぎ」で本屋の店頭でとても目立っている印象があり、勝手に「ラノベ界の京極夏彦」と心の中で命名したりしていました。

 そんな境界線上のホライゾンですが、歴代の表紙も水着みたいなハイレグレオタード状の衣装を着た可愛い女の子のアニメ風の絵であることが常でした。
 非実在美少女がセクシーでコスプレ映えしそうなデザインの格好をし、かっこ可愛いポージング。
 作画担当のさとやすセンセイは殊更おっぱいのオーバーサイズ感で定評があり、ラノベ愛好家の間でも「奇乳」とか「魔乳」といった言葉でその画風に惜しみない賛辞を送られることも少なくないとか。
 当の11巻も勿論そんな路線の感じで、特に今回は巨乳キャラだったらしく表紙いっぱいにこれでもかと色っぽい美女のおっぱいがばいーんと。
 乳首こそ隠されているものの半乳どころか八割乳とでもいう感じで溢れんばかりに所狭しと描かれており、目にした人がまずはその迫力に気圧されることは間違いないでしょう。

 これを女児が見て気持悪いと言ったらしいとか、それを以って性的搾取だゾーニングしろ規制しろといった話が出てきたとか、当然の如く批判反論が為されてまたさらにそれにカウンターアクションが起こったとかいうその論争自体については既に見識のある人たちによって散々やりつくされており、もうほとんど落ち着きつつある現状で今更何か有意義なことをいえる自信なんて勿論ありません。
 まぁ強いて言うなら「なあに、かえって免疫力がつく」でお馴染みの東京新聞のコラム「筆洗」担当者の見解が聞いてみたいなという程度なのですが。

 ただ、こんな論争のきっかけになりうるくらい、実在しない架空の存在の性的魅力を受け手に感じさせる表現技術はほんとうにすごいと思います。
 レオタードみたいな衣装とか大きなおっぱいとかのデザインモチーフ自体のエロ要素もさることながら、さらに陰影をつけたり艶を出したり、スジとかシワとか入れて只管しなやかな女体の柔軟性とか弾力性とか立体感を鑑賞者の脳内にありありと現出させるその表現力。
 受け手にエロさを感じさせるために為される、幾多の業(わざ)の数々。

 たとえ同じ題材、ポーズ衣装のキャラを他の画風の作家が書いてもまずこんなにエロくはならないでしょう。

 アンパンマンの故やなせたかしセンセイが境界線上のホライゾンの表紙絵と同じ題材構図で描いてもエロくなるわけないです。
 メロンパンナちゃん系の新しい女の子マンキャラだと思うだけです。

 西遊妖猿伝の諸星大二郎センセイがいくら女性をすっぽんぽんで巨乳に描いても絶対にエロくはなりません。
 超常的な異界の何かにとりつかれたような、おどろおどろしさを感じるだけです。 

 逆に、さとやすセンセイ初めそっち系の作家がやろうと思えば本来はエロくないはずのモノでもいくらでもエロくできるんだと思います。

 それこそが作家性であり「表現」というものの本質。
 画一的で杓子定規なルールで縛りようも無い幽玄にして微妙な「創作」の真髄。

 本件の表紙を初め、二次キャラの魅力を只管追求して表現を続けるクリエイター達が生み出してきた作品の数々を見るたびに、研鑽された技術と積み重ねた歴史の凄みを感じて圧倒されてしまうような気持になります。


 現状、ラノベの表紙を問題視する方々の反応としては絵本売り場とラノベ売り場が近い店舗があれば個々に抗議をして対応させるというところでひとまず落ち着きどころを見つけたようです。
 有志によるゾーニング推進活動、本屋さんへの抗議とその成果が着々と報告されつつある模様。
 それで本当に解決したことになるの?、性的搾取云々言ってた人は満足できるの?ってちょっぴり疑問ではありますけど。

 今後、この手の二次元表現に関する議論がどういった展開になるのか全然わかりませんが、今回の騒動で境界線上のホライゾンの表紙の表現物としての価値が如実に証明されたことだけは間違いないんだろうなと思います。
しおりを挟む
1 / 2

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

女子部屋っっ!!

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:106pt お気に入り:2

秘密は、もう秘密じゃない⭐️

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:35pt お気に入り:10

僕と先生との物語

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:106pt お気に入り:2

色々あって掃除婦になりました。

エッセイ・ノンフィクション / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:9

処理中です...