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2018年 05月13日
しおりを挟む寝取られを愛し、寝取られに生きて、寝取られに死ぬ。
現代に生まれた新たな紳士階級である、寝取られ愛好家たち。
ノブレスオブリージュを具現する最後の貴族であるという自負の下、当然ながらあらゆる存在に対する偏見や差別、不当な蔑視などとは無縁です。
誰に対しても信頼と尊敬、愛と感謝に基づく知的で優雅、節度ある態度で接することに例外はありません。
ましてや直情的な怒りや嫌悪という荒々しい負の感情を露にし、礼節を忘れることなど。
誰に強制されたわけでもない、彼ら自身の矜持が、誇り高い自負心がそれを許さないのです。
……しかしそれでも例外はあります。
本来は温厚で慈愛にあふれ紳士的である彼らがそのあまりにも呪われた在り様に冷静さを失い、憤怒を、憎悪を、そして弾劾する想いを抑えきれないのは。
そう、機動戦士ガンダムSEEDの主人公であるキラ=ヤマト氏に他なりません。
さすがにガンダムSEEDというアニメ作品自体を知らない人はあんまりいないと思いますけど。
一応一言で説明すると、「宇宙世紀じゃない世界観でイケメンとガンダムがいっぱい出てくる新世代ガンダムで一番成功したっぽいヤツ」です。
我ながら的確な表現だと、したり顔で自画自賛していますが、もしこれでピンと来ない人はどっかの配信サービスとかで視聴してみてください。
そんなガンダムSEEDの主人公であるキラ=ヤマト君。
民間人だったのが、いきなり戦争に巻き込まれてガンダムを拾って乗り込むところは歴代のガンダム主人公のお約束。
さらには遺伝子的改造人間で眉目秀麗、知能も身体能力も常人を越えており、最新機密兵器を完璧に乗りこなすというのも、まあアナザーガンダム以降では特に珍しくもないキャラクター設定なのですが。
彼が数あるガンダム系主人公の中でも特に前代未聞で異色なのは、「作中で友達の彼女を寝取った」ことにつきます。
大体ながれとしては、
①友達だったはずの秀才メガネ君、その彼女がカレシに内緒でキラ君にアプローチ
②キラ君二人が付き合ってるのは知ってたのに、ちょっと迫られただけでがっつりエッチしちゃう
③激おこメガネ君が詰め寄るとあっさり突き飛ばして「俺に叶うわけないだろ?」と見下す
って感じ。
もうこの時点で、普通の人はドン引きすると思います。
だってどう考えても一般アニメの少年主人公がすることとは思えない鬼畜の所業です。
実際、視聴者に少なからず衝撃を与えたようで、当時は結構話題になりました。
この辺、もっと詳しく知りたい人は「ガンダムSEED ちゆ12歳」でぐぐってくれればその時の盛り上がりとか空気感がよくわかると思います。
そんな感じで、ロボットアニメの少年主人公キャラでありながら「寝取り」という荒業を魅せてくれたキラ君。
彼の所業を前向きに受け入れてくれる存在があるとしたら、それは寝取られ愛好家に他ならなかったでしょう。
世間一般の感性であれば、まず寝取り行為という倫理に外れた行いを前向きに評価することなどありえませんが。
そこは「愛する者を奪う、奪われる」ことに快感を見出す我らが寝取られ愛好家達。
彼らに限ってはそんな行為をこそ愛し、嗜好し、消費しているのです。
だから単純に考えれば「やった!」「すげぇっ!」「そこにシビれる、憧れるぅ!」なんてヒーロー扱いでもおかしくないように思われるかもしれませんが。
蓋を開けてみたら、実際のキラ君に対する評価は厳しいものでした。
いや、寧ろはっきり言って完全にマイナス、嫌悪し、怒りすら抱くほどに否定的なものだったのです。
そんな恐らく傍から見ると不可解かつ理解しがたいであろうこの反応。
果たしてキラ君の何が彼らに拒否反応を巻き起こしたのでしょうか。
理由その①、キラくんが美形のイケメン、知能も身体能力も高い完璧超人だったこと。
寝取られの醍醐味とは大切な存在が受け入れ難いものを受け入れさせられて汚されることに他なりません。
よって寝取り男は可能な限り見た目が醜くて、社会的地位が低かったり性根が腐りきった外道であるほど悲壮さが増していきます。
だから相手が恵まれた外観と能力の美男子だと、寝取られのカタストロフも減退してしまうのです。
と、言ってはみたものの、実はこの点はそこまで致命的な要素ではありません。
基本的には上に述べたようなことが重要視されるとは思いますが、社会的ステータスのある美形で格上のスーパーマンが寝取るパターンもそれなりにあって話しの展開の仕方によっては全然アリなことも多いので。
よって以降に続くほかの要素と組み合わせられたことではっきりとマイナスになったというのが正しいかもしれません。
理由その②、寝取った女の子をヤルだけヤッてあっさりと捨てた上、メインヒロインである本命彼女とイチャラブカップルになること。
およそ「寝取られ」における寝取り男とはインモラルの象徴であり、自覚的に悪を為す純粋なアウトサイダーにして、倫理道徳という規範的な価値観に対する超越者です。
人倫を踏みにじり、破戒を為す悪人であればこそ、寝取ることの説得力が裏打ちされて引き起こされる悲惨な陵辱を受け入れることができるのです。
もちろん、複雑な情愛が絡み合ったドラマ性の元にそう単純な描写ではないものもたくさんあります。
ただ、どれだけアダルトな愛憎劇が展開して善悪という二元論で割り切れない話だとしても、その根底には「寝取り男は道を外した存在」という文脈がきちんと息づいている筈なんです。
どれだけ同情的になってしまうような言い分とかあったりしても必然的に「背徳と不倫の黒い十字架」を背負った生き様になり、少なくとも同じ物語の中で「寝取り行為をした後に主人公ヅラして主役カップル的正統的恋愛」など安易に出来るわけないんです。
そんな重い業を背負ったはずの人間が、他に本命の彼女ができて人並みの恋愛関係になる?
ましてやその幸せそうな様を見せられる??
寝取り男のそんな様子を見せられるのは苦痛以外の何ものでもありません。
なにより不可解なのがそんなキラ君に疑問を持つ様子が周囲の人間にまるでないところです。
寝取りから新たな彼女ができるまで、キラ君自身がそのことに葛藤したり周りの人間が問題視するような描写はありません。
繰り返される戦闘と本筋の話がなんだか一方的に進んで盛り上がっていき、いつの間にかキラ君は悲惨な戦争をとめるべく戦っている正義の主人公として成立しちゃってます。
寝取られたはずの秀才メガネ君ですら、なんだかすっきりした顔で「お前に僕達の希望がかかってる」的なことを言い出す始末。
まるで欺瞞と自己弁護に満ち満ちた性質(たち)の悪い自分語りを延々と聞かされているようです。
もうこれだけでも十分に寝取られ愛好家が沸騰して当然だと思います。
それだけ致命的だったでしょう。
でも寝取られに対する冒涜はこれだけではありません。
理由その③、「殺さず」とか始めて最終的に戦争を終わらせた英雄扱いになる。
これも結局寝取り男がそうじゃダメだろってことです。
ロボットアニメの主人公だからそうなっちゃうんだろうけど。
およそ寝取り行為をしたことを棚に上げすぎて、人格破綻を疑うレベルです。
これがまだ戦争における命の奪い合いとかを「必要悪」として受け入れたり、「寝取り」も含めて自分がしたことに思い悩み葛藤した末に某カミーユみたいに人格崩壊してればマシだったでしょう。
でもキラ君は殺す気でかかってくる無数の相手をスーパー強いロボットで圧倒的な力を発揮して無力化して済ませちゃいます。
そして朗らかな笑顔で恋人と笑い合うんです。
愛と平和を語り合っちゃうんです。
そんな人が寝取り男なんです。
あまりにも寝取りのエピソードが浮きすぎて、話がちぐはぐになって整合性を失っているようにすら感じてしまいます。
まず寝取られ愛好家としてはこんな寝取り男の存在を容認できるものではありません。
以上、勝手に「寝取られ愛好家たちがそう思ってる」ということにして自分の個人的な意見を延々と述べてきたわけですが。
ガンダムSEEDという作品自体、実はそんなにキライでもありません。
世間ではストーリーにいろいろ納得いかないところがあるとか、いちいち悪い意味で話題になるような発言を繰り返す監督の福田己津央氏に対する不信感から論争になったりしたみたいですが、あまりそういうところは気にならないので。
ロボットアニメなんて、兵器とか戦闘シーンがなんとなくかっこよければそれなりに受け入れられちゃうモンです。
むしろ、アニメ史上でも三本の指に入るくらいの極上の美人ママキャラである「イザークの母ちゃん」を生み出した功績は無視できないと思ってます。
だからあくまでも「寝取られ」という観点で見たらということなのですが。
その見方だとまずダメです。
醜悪な駄作です。
個人的な意見とはいいましたけど、実際に二次創作とかでも寝取られ作品としてこのキラ君の寝取りを取り扱った事例とかほとんどないみたいだから、寝取られ好きな層の全体的な受け止め方もあたらずとも遠からずくらいにはなってるんじゃないでしょうか。
改めてこうして振り返ってみた感じ、キラ君に割り振られた属性と役割は本来ならば「寝取られる側」だったんじゃないかなぁと思えて仕方ありません。
イケメン主人公で完璧超人であるはずの彼が大切な彼女を他の男に寝取られる。。。
うん、寝取られモノとしては完璧な筋ですね。
やっぱり彼の寝取り行為はミスマッチだったんだと思います。
もしこのガンダムSEEDの寝取り描写に実用性を見出せた寝取られ愛好家の方がいらっしゃったら是非とも教えていただきたいです。
逆にやっぱりムリ、ダメだよねっていうご意見も勿論お待ちしてます。
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