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コンドームする男が誠実だと思ってた女がそうじゃなかったことに気が付いちゃう話
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私が付き合っていた男は常にセックスの時にはコンドームを使ってくれていた。
初めて抱かれた一番最初からずっと、それはもう一度もとぎらせることなんてなかった。
もちろん彼のそういう態度対応には前向きなものしか感じようがない。
初めての相手というわけではなかったし、ある程度男というものがその手の配慮を怠りがちであることを重々承知してるくらいには経験を経ていたからなおさらのこと。
めんどくさいとか、気持ちいいとかいう酷く自己都合的なエゴだけで女への最低限の配慮など簡単に放棄できるというのが男という生き物なんだと身に染みてわかっていたから。
まあこの手の杜撰な感性というものに男も女もないのかもしれないけど、そういった男の個人的な資質が最も端的に現れる場所の一つなのは間違いない。
ようは性行為の時に一方的にゴムを使わずに致そうとするなんて、自己中な男のバロメータそのものなのだ。
如何にやさしさだとか誠実だとかといった言葉とはかけ離れた人間なのかを、夢見がちで世間知らずな若い女にも親切にわかりやすく提示してくれる、ユーザビリティ溢れる電光掲示板のようなもの。
そうすっかり信じてこんでいたし、大体それまでの人生の道行を振り返ってもそう間違っていない経験則だという実感もあったから私はコンドームを使い続ける男というものに疑問など持ったことなんてなかった。
時にどれだけ徹底的に執拗に問答無用という表現が相応しいような態度だったとしても。
行き過ぎなくらいの潔癖性や頑固さといったものを感じたとしても。
不用意な妊娠や恐ろしい性病の危険性を省みない男よりはよほどマシのはずだった。
そんな前向きな心象、好意的な解釈が間違っていたのではないかと疑問を持ち始めたのはそろそろ結婚を考える年齢になってから。
もういい加減一つの区切りをつけて、お互いけじめをつけたほうがよさそうだという時期になったころ。
私はもうその頃にはゴムなんて使う気はさらさらなくなっていた。
可能な限りありのままに、結果的に子供を授かっても丁度いいくらいの感覚だった。
どうせ結婚するなり、身を固めるならもはや都合がいいくらいの状況のはずだったから。
すでに付き合い始めて数年、世間的には遅いくらいのタイミングなんだから。
でも彼は一切取り合わなかった。
「今日はいつもより貴方をもっと感じたい」とか「生でいいよ」とか。
あるいは婉曲にあるいは直接的に、こちらがどれだけ優しく穏やかに誘うような言葉をかけても反応は一切なかった。
聞こえているのかも怪しいくらいに透徹したその態度と反応。
あの小さな長方形のハコから薄膜を取りだして、黙々と自ら装着しはじめる横顔。
何かこちらが後ろめたいものを感じてしまうような、小狡い悪事が明るみになってしまったような罪悪感が滲み出て私を包み込んでいく。
強くも弱くもない力だけど、逆らえないものが充満した動きで身体を開いて受け入れさせられていく。
そんなことが何度か繰り返されて私はやっと思い至ったのだった。
この男の態度対応は誠実でもやさしさでもなかったことに。
ただただ醜悪なエゴイズムでしかなかったことに。
ようはセックスする相手の妊娠やら性病やらという危険性は女だけのものじゃない、本来は男も同じってだけなのだ。
単に自分が病気を移されたり、下手に妊娠なんかされてもめたり後腐れが発生するのを異常に厭うた結果の態度だったと。
つまりは私のことなんてちっとも配慮しているわけではない、むしろ徹底的に侮辱して踏みにじる凌辱行為そのもの。
都合のいい性交相手を維持し続けるための配慮。
ただそれだけ。
そう私の意識の変化を敏感に感じ取ったのだろうか、いつしか男の態度もみるみる変わっていった。
積み重ねた年月と比べたら、短かすぎるほどの期間であっさりと放棄されて無為にされていく関係性。
有無を言わせぬ石のような態度と反応、取りつくしまもない妥協点の模索などハナから顧みられないいくつかの乾いた交渉。
徐々に壊れ朽ち腐り果てていく私の精神。
取り返しのつかない年齢で放逐された途方もない虚無感と絶望。
何がコンドームしてるから優しくて誠実だ。
これなら刹那の自己快楽のために最初からリスクを省みない男とどっちがマシかもわからない。
社会的にも肉体的にも子供を作るのが難しい状況に追い込まれるくらいなら、若いうちにもう後先考えずとりあえず作ってしまう方がよっぽどよかったかもしれない。
顔はいいけど頭はからっぽなチャラ男に無責任に孕ませられちゃったほうが結果的にはまだ展望があったんじゃないか。
時間さえあれば。
若さと未来さえあれば何であれ耐えて対応することだってできたかもしれない。
こんな、親もすでに年老いて頼りにならなくなって私自身取り返しがつかない年齢ではできることなんてほとんどない。
これから適切な相手を見つけてちゃんと妊娠出産する可能性なんて考えることすら馬鹿馬鹿しい。
世間的には相変わらず「コンドームをつけない男は駄目です、不誠実で身勝手でだらしない証拠です、絶対いけません」などと若い女子向けに喧伝されているらしい。
にわかにそんな声なり文字なりが認識されるたびに私は鬱々と思ってしまう。
危険な性病やら無分別な妊娠を女に課す男と、安全に快感を得られる性交相手として徹底して危険を避けつつ管理しようとする男。
いったいどちらの方が無責任で唾棄すべき在り方なのか。
果たしてどっちを選べば女は幸福になれるのだろうか。
ようは恋人がセックスの時にゴムをしていようとしていなかろうと、不幸になる女はどっちにしろそうなるってだけなのだ。
相手が本当に誠実でやさしいかなんてそんなことだけではわからないってだけのことだった。
そしてそうわかったときにはもう私は取り返しがつかなくなっていた。
何もかも億劫で疲れたから、これ以上何かを感じたり考えたりするのもやめようと思う。
了
初めて抱かれた一番最初からずっと、それはもう一度もとぎらせることなんてなかった。
もちろん彼のそういう態度対応には前向きなものしか感じようがない。
初めての相手というわけではなかったし、ある程度男というものがその手の配慮を怠りがちであることを重々承知してるくらいには経験を経ていたからなおさらのこと。
めんどくさいとか、気持ちいいとかいう酷く自己都合的なエゴだけで女への最低限の配慮など簡単に放棄できるというのが男という生き物なんだと身に染みてわかっていたから。
まあこの手の杜撰な感性というものに男も女もないのかもしれないけど、そういった男の個人的な資質が最も端的に現れる場所の一つなのは間違いない。
ようは性行為の時に一方的にゴムを使わずに致そうとするなんて、自己中な男のバロメータそのものなのだ。
如何にやさしさだとか誠実だとかといった言葉とはかけ離れた人間なのかを、夢見がちで世間知らずな若い女にも親切にわかりやすく提示してくれる、ユーザビリティ溢れる電光掲示板のようなもの。
そうすっかり信じてこんでいたし、大体それまでの人生の道行を振り返ってもそう間違っていない経験則だという実感もあったから私はコンドームを使い続ける男というものに疑問など持ったことなんてなかった。
時にどれだけ徹底的に執拗に問答無用という表現が相応しいような態度だったとしても。
行き過ぎなくらいの潔癖性や頑固さといったものを感じたとしても。
不用意な妊娠や恐ろしい性病の危険性を省みない男よりはよほどマシのはずだった。
そんな前向きな心象、好意的な解釈が間違っていたのではないかと疑問を持ち始めたのはそろそろ結婚を考える年齢になってから。
もういい加減一つの区切りをつけて、お互いけじめをつけたほうがよさそうだという時期になったころ。
私はもうその頃にはゴムなんて使う気はさらさらなくなっていた。
可能な限りありのままに、結果的に子供を授かっても丁度いいくらいの感覚だった。
どうせ結婚するなり、身を固めるならもはや都合がいいくらいの状況のはずだったから。
すでに付き合い始めて数年、世間的には遅いくらいのタイミングなんだから。
でも彼は一切取り合わなかった。
「今日はいつもより貴方をもっと感じたい」とか「生でいいよ」とか。
あるいは婉曲にあるいは直接的に、こちらがどれだけ優しく穏やかに誘うような言葉をかけても反応は一切なかった。
聞こえているのかも怪しいくらいに透徹したその態度と反応。
あの小さな長方形のハコから薄膜を取りだして、黙々と自ら装着しはじめる横顔。
何かこちらが後ろめたいものを感じてしまうような、小狡い悪事が明るみになってしまったような罪悪感が滲み出て私を包み込んでいく。
強くも弱くもない力だけど、逆らえないものが充満した動きで身体を開いて受け入れさせられていく。
そんなことが何度か繰り返されて私はやっと思い至ったのだった。
この男の態度対応は誠実でもやさしさでもなかったことに。
ただただ醜悪なエゴイズムでしかなかったことに。
ようはセックスする相手の妊娠やら性病やらという危険性は女だけのものじゃない、本来は男も同じってだけなのだ。
単に自分が病気を移されたり、下手に妊娠なんかされてもめたり後腐れが発生するのを異常に厭うた結果の態度だったと。
つまりは私のことなんてちっとも配慮しているわけではない、むしろ徹底的に侮辱して踏みにじる凌辱行為そのもの。
都合のいい性交相手を維持し続けるための配慮。
ただそれだけ。
そう私の意識の変化を敏感に感じ取ったのだろうか、いつしか男の態度もみるみる変わっていった。
積み重ねた年月と比べたら、短かすぎるほどの期間であっさりと放棄されて無為にされていく関係性。
有無を言わせぬ石のような態度と反応、取りつくしまもない妥協点の模索などハナから顧みられないいくつかの乾いた交渉。
徐々に壊れ朽ち腐り果てていく私の精神。
取り返しのつかない年齢で放逐された途方もない虚無感と絶望。
何がコンドームしてるから優しくて誠実だ。
これなら刹那の自己快楽のために最初からリスクを省みない男とどっちがマシかもわからない。
社会的にも肉体的にも子供を作るのが難しい状況に追い込まれるくらいなら、若いうちにもう後先考えずとりあえず作ってしまう方がよっぽどよかったかもしれない。
顔はいいけど頭はからっぽなチャラ男に無責任に孕ませられちゃったほうが結果的にはまだ展望があったんじゃないか。
時間さえあれば。
若さと未来さえあれば何であれ耐えて対応することだってできたかもしれない。
こんな、親もすでに年老いて頼りにならなくなって私自身取り返しがつかない年齢ではできることなんてほとんどない。
これから適切な相手を見つけてちゃんと妊娠出産する可能性なんて考えることすら馬鹿馬鹿しい。
世間的には相変わらず「コンドームをつけない男は駄目です、不誠実で身勝手でだらしない証拠です、絶対いけません」などと若い女子向けに喧伝されているらしい。
にわかにそんな声なり文字なりが認識されるたびに私は鬱々と思ってしまう。
危険な性病やら無分別な妊娠を女に課す男と、安全に快感を得られる性交相手として徹底して危険を避けつつ管理しようとする男。
いったいどちらの方が無責任で唾棄すべき在り方なのか。
果たしてどっちを選べば女は幸福になれるのだろうか。
ようは恋人がセックスの時にゴムをしていようとしていなかろうと、不幸になる女はどっちにしろそうなるってだけなのだ。
相手が本当に誠実でやさしいかなんてそんなことだけではわからないってだけのことだった。
そしてそうわかったときにはもう私は取り返しがつかなくなっていた。
何もかも億劫で疲れたから、これ以上何かを感じたり考えたりするのもやめようと思う。
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