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好きな女から預かったネコに性的ないたずらをする
しおりを挟む付き合っている女が友人と旅行に行く間、飼っているネコを預かることになった。
二泊三日とさほどの期間でもないし、幸い自分が住んでいるマンションもペットが不可だというわけでもなかったので、さしあたっての即物的な障害も心理的抵抗もなく気軽に引き受けたのだ。
基本的に犬猫を問わず、動物全般は嫌いではない。
さらには、その飼い主たる女には特別な思い入れを持ちつつある時期でもあったし。
互いの関係をより強固に盤石にする、いい機会だという打算もあった。
もっと端的に俗な表現をすれば、「頼りになる存在」とか「良いヒト」だと思われたかったのだ。
彼女の心証を良くしつつ、動物とゆっくり触れ合えるという一挙両得。
少なくとも自分にとって損をするようなことは何もない。
頼まれた時点で、引き受けないという選択肢はありえなかった。
こうして籠から顔をのぞかせたネコがおずおずと己の部屋に馴染んでいこうとするのを前にしても、嫌悪感や拒否感のような負の感情は全くない。
むしろ、ちょっとしたイベントごとが来訪してきたような高揚感がわいてきて、年甲斐もなくウキウキしはじめつつあるのがわかる。
ふんふんと鳴らしている鼻先、そこから圧力をかけられて潰れてしまったみたいな一見すると奇形のような印象の顔立ちも見慣れてしまえばむしろ愛くるしい。
ふわふわとした長い毛の、全身灰色なんだけど著名アーティストがエアブラシを駆使して仕上げたような微妙な色合いの違いが、なんともいい塩梅の見た目になっている。
ちょっと気取った印象の振る舞いで周囲を伺いつつ、少しづつ動く範囲を広げていく様子は傍目にも落ち着いていて危なげがない。
もう子猫ではないのは間違いない、かといって年老いている感じでもない。
若々しく綺麗なネコである。
簡単な飼育の説明と雌であるということ以外詳しく聞いてはいないけれど、血統書とかついている高級なヤツなんだろうというのは容易に想像ができた。
一通り確認して満足したのか、置いてやった寝床にのそのそと潜り込むと不安や動揺などとは全く無縁な様子でゆったりと横になった。
とりあえず問題はなさそうである。
飼い主が戻るまでのひと時を過ごす仮住まいとしては合格点を頂戴できたらしいのに安堵すると、早速こちらも楽しませてもらおうと決める。
あの見るからに柔らかそうで温(ぬく)そうな、癒しの感触を存分に堪能させていただこうと思う。
一応、彼女の部屋にいるときに何度か面識はあり、お互い初対面というわけでもない。
触って撫でて、猫じゃらしなどのおもちゃで遊ぶなど、一通りの交流、ネコと人間が行うべき最低限の社交は済ませた間柄である。
あらためての挨拶がてら、尻尾の根元をやさしく掻くようにしてこすってやると満更でもなさそうな顔で目を細めた。
そのまま背中、首、頭とゆっくりと撫でていくうちに、徐々に腹を出してすっかり無防備な感じでこちらのやることを受け入れてくれる。
しばらくの間、そうして自分が満足するまで全身を撫でまわした。
いつ以来であろう、久々にネコという生き物の体つきから骨格まで十二分に把握して理解するほどにその感触を飽くまで堪能した。
数十分もそうしていたろうか。
いい加減、満足したので手を離す。
温かったところにひんやりとして物足りない寂寥感と名残惜しさを感じそうになる。
と、それまでぐったりゆったりとなすがままだったネコが半身を起こし、「なー」と鳴きながらこちらの内ももを片足で触ってきた。
「もっと撫でろ」という、わかりやすい要求。
おねだり。
さほど珍しくもない、ネコを飼っているものならば誰でもおなじみの、よくある光景ではある。
しかしその瞬間。
自分の中になぜか突然全く異質で無関係なはずの赤黒いものが吹き上がった。
ひどく隠微で後ろめたい、自己中心的で破壊的な欲求が突き上げるように襲ってきた。
その時のネコの動きとか雰囲気、そして何より今の状況がイメージの連鎖をもたらして明確なヴィジョンを脳裏に描き出したのだろうか。
つい数日前に激しく愛し合った飼い主たる女の感触、反応がまざまざと鮮やかに蘇ってきたのだ。
それはさんざん責め苛んで存分に快感を叩き込んでやって、お互いの盛り上がりが最高潮を迎えた頃合。
「もうやめてほしい」と「もっとしてほしい」という、相反するものが絶妙に混ざり合った、あの哀願する感じ。
意図したものではない、純粋に衝動的で本能的な計算外の動作、不意に思わず身体から満ち溢れるものに従うまま無意識に思わずやってしまったような彼女のとても愛くるしい動き。
行為の真っ最中、いやらしく、物欲しそうに、こちらの脚を撫でてくる愛撫の感触。
求めてやまない女の性的イメージそのもの。
今、己にとって最もエロティックを象徴する挙動の記憶。
それが本来なら全く無関係の、そういったものとは最も距離が離れて隔絶されているはずの場面で強烈に催されてしまったのだ。
動物とのふれあいという長閑(のどか)で牧歌的な、淫らとか卑猥とかいうのとは一ミリほども関係がないはずの状況。
ネコの方はいうに及ばず、もともとこちらもそんなつもりなど毛頭なかったのに。
しかし一度、そう開眼してしまったらもうどうしようもない。
もはや、このネコに特別な意味を見出してしまうのは抑えようがない。
あの女が飼っているネコ。
それも性的挙動そのものを髣髴とさせてくる。
脳内に展開されるイメージそのままに、ネコを弄りたい衝動を抑えることはできなかった。
ゆっくりと腹を撫でていく。
先ほどまでと全く同じ挙動で。
しかし全く違う意味合いで。
あの女を愛するときと同じ動きと意味で。
触れるか触れないかのフェザータッチで脇腹を擦ってみる、うなじをやさしく意地悪に刺激する。
彼女が反応せざるを得ない、すっかり把握して征服したやり方をそのままに。
ネコが完全に腹をだして「もっと撫でろ」の体制になったところを、存分に知る限りのテクニックで愛撫する。
決定的で致命的な部位、局部には一切触れることなく、ひたすらそうしてボルテージを上げていくのだ。
それがいつものやり方なのだ。
彼女がいい加減物欲しそうになってきたところで、焦らしまくった挙句にようやっとするように、とうとうネコの乳首を触れるか触れないかの力で撫でた。
ほとんどあるかないかの大きさで、いくつもあってどれにするか一瞬迷ったけど、さほど時間をかけることなく上から2番目右側に決めて。
自分にとって、会心の手ごたえだった。
仮に彼女だったならば反応を抑えることなど不可能だと確信するほど。
何時ものようにビクッとなって悔しそうに恥ずかしそうに艶っぽい顔を横に伏せるのが目に浮かぶほどに。
でもネコは全然変わらなかった。
それまでのなんの深い意味もない、ただの触れ合いと全く同じ反応を返すだけだった。
一時的な同居人、仮の飼い主になった男に心地いいところを撫でさせたという、単にそれ以上でも以下でもないようだった。
全身を脱力させて、満足そうに目を細めているだけ。
何か己のプライドを傷つけられたような焦燥と苛立ち。
(後々思い返せば当然といえば当然の)あまりにもなネコの態度、この真剣味をあざ笑われているかのような被害妄想に駆られて、再び愛撫を開始する。
コイツからなんとかそういう反応を、性的なものをどうにか引き出してやろう、面目をつぶしてやろうという切迫した想いそのままの手つきで。
もうその時には完全にムキになっていた。
自分としてはこれ以上ないほどいやらしくて淫らな触り方、性的快感をくみ出すはずの動きで撫で続けた。
でもネコは全く変わらなかった。
終いにはすっかり呆れてしまったらしく、すぴーすぴーとつぶれ気味の鼻から音を出して寝入っていた。
それからしばらく頑張ってはいたのだけれど。
特にうるさがることもなく、愛撫させるままに寝続けるネコの様子にやっと根負けするように諦めた。
なんとも言えない敗北感に包まれながら、誰もいない空中に向かって負け惜しみを吐き出したくなる。
お前の飼い主だったら、こんなことにはならないんだ。
彼女だったなら、もっと違った反応が返ってくるはずなんだ。
でもネコの呑気な寝顔を前に、そんないじけた気持ちも少しづつ和らいできた。
どうせすぐに彼女は帰ってくるのだ。
いいとこ三日の辛抱なのだ。
その時には復讐するかのように、なぶるようにねっとりと時間をかけて熱心に弄って責め苛んでやろうと決めた。
ネコの分までたっぷり彼女に泣き叫んでもらえばいい。
それまではいやらしいとか淫らとかいう性的な感覚とは一切無縁に、ネコとほのぼの過ごすのも悪くはないだろう。
了
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