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そうかもしれないし、違うかもしれない
しおりを挟む唐突に「愛」って何か知りたくなったから、僕の身体の中で一番脆弱かつ致命的な生物的特徴を最も端的に示す大切な場所を一心不乱に口に含んでがんばっていた彼女に聞いてみた。
突然。
なんの脈絡もなしに。
「おふん?」って感じで呻いた後に、ゆっくりと頭を上げつつ唾液でつながりながらめんどくさそうな顔。
それなりの注意を払って集中していた行為をとても些末でつまらない理由で中断させられた不平不満を隠そうともせずに、じとっとした半眼でこちらをにらみつつ。
こんな汚らしい卑猥なモノをこうしてやさしく受け入れてあげてる以上の愛があるの?
この状況そのものが愛でしょ。
と酷く物分かりの悪い幼子に根気の限界すれすれの苛立ち交じりで教え諭すように言い放つ。
そして話は全て終わったとばかりに再開される行為の続き。
完璧な回答を導いてやった満足と自信に満ち溢れて、それ以上の一切の問答の可能性など微塵も許さないゆるぎない態度。
でもなぜか彼女の言う「汚らしいモノ」を咥えて舐めほおばるその顔はとてもうっとりと幸せそうだった。
あまりにも嬉しそうにしているその様子からは、拒否感を抱いて嫌悪しているものを自分の心理的抵抗と引き換えになんとか相手のために我慢しているような自己犠牲や献身といった感じはまったく伝わってこない。
見ているこちらまで幸せになってしまうような情熱と欲求。
うっすらと照り輝きながらほの赤く上気させた頬にありありと浮かび上がらせて。
さっきの恩着せがましい物言いの内容とはだいぶ違う意味だけど、確かにそこには愛と呼ばれるようなものがあるような気がした。
もしかしたらそんなたいそうなものじゃないかもしれないけれど、今の自分たちにとって、とても貴重で大切なものなのは間違いないと思った。
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