妹が私の婚約者を奪うのはこれで九度目のことですが、父も私も特に気にしていません。なぜならば……

オコムラナオ

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ウァートは辛抱強く、妹の心の壁をとかしていった。

虐待をうけたすえ捨てられた野犬のように、他人に対する警戒心の強い妹。

そんな彼女の部屋に、ウァートは足しげく通い、そして半年ほどで、私たちと同じか、あるいは悔しいけれどそれ以上に、彼は妹の心の中に入ることに成功した。

すると信じられないことに、妹が学園に行くと言い出した。

血も、積極的に飲むようになった。

父や私とブローカーのところへ行き、血を売りたいという志願者と直接会って、自分が飲めると思う血の提供者を選んだ。

妹は、みるみるうちに回復していった。

ふっくらとまではいかないけれど、痩せすぎている状態から脱し、少しずつ体に肉が付き始めた。

父と私は、毎日が妹の誕生日であるかのように、彼女を祝福し、心から喜んだ。

私はこれ以上、何もいらなかった。

これでずっと、幸せに暮らせると思った。

しかし私の不安は消えなかった。
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