エースはまだ自分の限界を知らない

草野猫彦

文字の大きさ
上 下
25 / 44
高校一年生・夏

25 三年生の最後の夏

しおりを挟む
 グラウンド脇に突貫工事で作られた、ミーティング専用ルーム。空調トイレ完備、シャワー室隣接。
 そこに集まっているのは監督(暫定)の山手、キャプテンの北村、キャッチャーのジン、マネージャーのシーナである。
 加えてコーチと通訳もいるが、とりあえずは関係ない。
 複数のデスクトップパソコンの画面に映るのは、直史の投球である。
「結局この日の最速は、最後の打者に投げた普通のストレートの135km。もう立派な速球投手なんですね?」
「まあ、速球でも抑えられるというか……」
 強豪校のエースであれば、140km台は欲しいところだ。
 だが実際に受けていたジンには分かる。確かに直史のボールは、速度が上がっていた。
 そして速度以上に、伸びとキレが上がっていた。これならリード次第でかなり三振が取れる。

 覚醒、とでも言えばいいのか。
 新変化球を投げるためには、下手にコントロールしない方が、変化自体は安定する。そう直史は言っていた。
 実際に試合の最後の投球も、コースは甘めだった。
 だがこれによって、直史は本気の全力投球が出来るようになったのかもしれない。

 カーブやスライダーなどの、スピンをかける変化球も、変化がつきすぎると言っていた。
 しかしストレートのコントロールは失っていなかった。速度が上がっているのに、だ。
 変化球も、すぐに修正していた。そのあたりの恐ろしい柔軟性は失っていない。
「リミッターが外れちゃったってとこですかね?」
「録画された映像を見ても、全体的に腕の振り、足の踏み込みなど、スピードにつながる部分は変化しています。あと、内部の筋肉もより使っているようですね」
 詳しい解析は、これから行わなければいけないだろうが。

 セイバーメトリクスにはトラッキングという、選手の動きなどを分析する手法がある。
 肉眼でも可能だが、山手の使う手段は、専用の機材が必要なものであった。
「これで、投手が二枚」
 ゆるみそうになる口元を引き締めて、ジンが呟く。
「そうですね。ただ佐藤君の方には、一つ弱点になるかもしれない要素が出てきました」
 思わず山手の顔を見ると、見上げる彼女は珍しく真剣であった。
「体温が上がって筋肉を使えているということは、それだけ消耗が激しいはずです。それに筋や腱、関節への負担も大きくなります。今までのような投球数は期待出来ません」
 それは、確かにそうだろう。

 岩崎と直史。この二人のピッチャーのレベルは、明らかに上がっている。
 しかし直史の方が、まだ明らかに体が出来上がっていない。筋肉の鎧がなければ、腱や関節にかかる負担は大きい。
「もっともどれだけが限界なのかは、実際にぎりぎりまで待ってみないと分からないのが、不安要素なのですが」
 普段は今まで通り。ピンチではギアを上げる。
 そんな器用な投げ方だが、おそらく直史なら出来るだろう。
「あと、成長率だけなら、鈴木君もたいしたものですよ」
 二年の田中はまだ微妙だが、三年の鈴木も、わずかな期間に球速が上がっている。
 もっと正確に言えば、球速が少し上がり、球威がかなり上がったと言うべきか。フォーム修正の成果である。

 投手は何人いてもいい。ジンの考える理想的なチームに近付いている。
「これからはどんどんと練習試合を組んで、試合の中で選手の状態を分析していきましょう。何より大事なのは、怪我をしないことです」
「それは確かに」
 特に無駄な動作がなくなった岩崎でなく、眠ってい筋肉を引き出した直史が、故障する確率は高い。
「公式戦以外は、それぞれの試合に個別のテーマを掲げてそれを達成します。もちろんそれは、アクシデントに対応するためです。四点リードしている状態で相手に満塁ホームランを打たれても、中心選手が故障するよりはマシですから」
「た、確かに」
 ビジネスライクな考えだと、ジンはなんとか納得する。
「故障してもいいのは、甲子園の決勝で勝利が決まってから。ただしその故障も、今後の選手生命を絶つようなレベルは厳禁です。私はプロの人間として、体が資本のスポーツ選手に、後遺症の残る怪我をすることを許しません」
 本当にビジネスライクなら、選手ファーストになるのかもしれない。



 ぶっちゃけると現代の高校野球でも、甲子園のためなら、あるいは部全体のためなら、一人ぐらいの故障者が出てもいいと考える指導者は多い。
 そして選手でさえ、甲子園に行けるなら、そこで潰れてもいいと考える者がいる。
 甲子園信仰。それは確かに存在するのだ。
 あるいはプロ野球選手になることよりも、それは特別なものなのかもしれない。プロになるには高校、大学、社会人とチャンスは何度もあるが、甲子園に行ける機会は明確に限られている。
 しかもそれは、いい成績を残すということでなく、三年間、正確には五回の機会しかない。
 トーナメントで一度でも敗北すれば終了。ある意味よほど、プロ野球よりも残酷なのだ。

 だが岩崎はともかく、直史にはその心配はないだろうとジンは考えている。
 あの世の中を現実的に見るひねくれ者は、アマチュアである高校野球の中継で、大金が動くのを苦々しいと言っていたことがある。
 そもそも甲子園信仰を全く持っていない。勝つことは楽しいが、それに全てを賭けることなど出来ないのだ。
 もうこれは、性格もあるが価値観の問題だろう。四人兄弟の長男として、冒険をする蛮勇を持っていないのだ。

 野球バカではないのだ。そして野球バカでないと、甲子園に行くのは難しい。
 選手はすべからく野球バカであり、監督がしっかりとチームの手綱を握る。それが高校野球の理想だとジンなどは考えている。
 それを言うなら白富東は、絶対に甲子園に行けないチームになってしまうが、チームの中には野球バカでありながら、どこか冷静な選手や、自分勝手な選手がいないと、不思議とまとまらないものだ。
 そして監督は確実に野球バカではない。

 白富東で言うなら、上級生に野球バカはいない。北村がかろうじて、冷静な野球バカと言えるだろう。
 シニア組は野球バカだ。バカゆえに、ジンの口車に乗って白富東に来てしまった。
 ジン自身は、冷静さを残しているが根元では野球バカだと自覚している。でなければ素直に強豪校に行って、まともにレギュラーを競っていただろう。
 だが父から聞く強豪校の実態などを聞くと、野球が楽しくなくなってしまうような気がした。
 のびのびと甲子園が目指せないものか。そう考える自分が、実は相当自分勝手な選手だと、ジン自身は気付いていない。

 大介や岩崎は、自分勝手な選手に分類されるだろう。
 だが大介の場合は、本当に野球そのものが好きだと分かる。あれだけ自由にプレイして成果を上げる人間を、ジンはシニア時代を思い出しても、一人も思いつかない。

 そして直史は、野球バカではないのに自分勝手で、そして冷静な人間だ。
 野球が絶対なわけではなく、たまたま野球をやってくれたのだ。
 あの才能がここまで埋もれていてくれたのは、ジンにとってはありがたいことだ。
 光和大付属との練習試合も、先発が直史だったとしても、同じ結果になっただろう。

 それにしても、まさかあの変化球ですら、あっさりと身につけてしまうとは。
 直史自身は苦労したと思っているようだが、たった一日で形を身につけただけで驚異的だ。
 本人はまだすっぽ抜けると言っているが、あの球の性質上、すっぽ抜けてしまっても面白い変化球になるのだ。
 岩崎と直史。この二人が揃っていて、大介がいてくれる。怪我や事故でもない限り、甲子園を目指す戦力はあると思う。
 唯一微妙なのは、千葉県という学校数の多い県で戦う、体力があるかどうかぐらいだ。



「くそったれ!」
 グラウンドに戻ると、バッターボックスで大介が絶叫していた。
 これほど悔しそうな彼の声など、ジンは初めて聞いた。
 マウンドの上には直史がいて、バッピ用のネットがある。
 一応守備にもついているが、どうやら球は飛んでこないようだ。

「まだやるのか? これで10打席終わったぞ」
 困ったような表情の直史は、軽く右肩を回している。
「11打席目だ! 打てない球があるんなら、対策練るのが当たり前だろうが!」
 珍しくムキになっているが、これはまさかガチンコ勝負をしているのか。
 そして言動からして、直史が圧倒しているらしい。

 審判役の高峰を見ると、目で助けを求めてくる。
 まずい、とジンは思った。
 直史の変化球は、大介であってもそう簡単に打てる性質のものではない。
 いや、野球というスポーツを長く経験していればいるほど、むしろ打てなくなるかもしれない。
 最強の打者である大介を、直史が封じる。それは直史にとってはともかく、大介にとってはスランプの原因になりかねない。

 止めようかと思ったジンだが、直史の視線で思いとどまった。
「サウスポーのカーブはもう打てるようになったんだし、それでいいだろ? お前相手に投げるの、すげえ疲れるんだけど」
「全国行ったら俺レベルの打者だっていっぱいいるぞ。それの練習だと思えよ」
 その台詞を聞いて、直史は思った。
 お前みたいな投げづらい強打者は、多分一人もいない、と。

 それでも直史は投球を続けた。
 インハイへのストレート。伸びるその球を、大介は軽くサード方向にファウルを打つ。
 今の直史の球威をスムーズに流し打てるのだから、やはり大介はすごい。
 それに、ヒットを打とうと思えば、今の球はヒットに出来たのではないだろうか。
 第二球はカーブ。外角から内角へと鋭く曲がる。
 あえて見逃す。際どいがストライク。
 打ってもホームランにはならないコースだ。たとえヒットどまりだとしても、打つ球は決めている。

 そして三球目。
「あ」
 珍しくすっぽ抜けた直史のスライダーを、大介は容赦なくネットまで運んだ。
「こらぁ! 真面目に投げろ!」
「うるせえ! あの球は失投があるんだよ! 素直に喜んどけ!」
 大介はまだどこか納得していない様子だが、直史は肩を落としている。
「魔球って言っても、絶対に通用するもんじゃないんだ。お前ならカットぐらいは出来るから、その後の失投を打てばいいんだよ」

 直史の説明に、大介はどうにか納得したようであった。
 だが勘が鋭く人の悪いジンは、言葉の裏を考える。

 大介はあの球を打つことに拘っていたが、実戦では別にあの球を必ず投げる必要はないのだ。
 先輩捕手のリードも悪くはなかったが、ジンならもっと性格の悪いリードを行っただろう。
 あの球は、少し高めに外れるように投げれば、本当に打ちにくいのだ。
 意味のない勝利に拘らない、直史が大介に勝ちを譲ったようにも思える。
 直史なら普通に考えつくだろう。



 日々の練習で直史のコントロールは戻ったが、球速まで元に戻ってしまうことはなかった。
 あの球も投げることは出来るようになったが、案外コントロールが定まらない。
 もっともこれは理屈が分かってないと打てないので、ゾーンにさえ入っていれば、緻密なコントロールは問題ないのだが。

 練習試合も繰り返され、相手は主に東京や神奈川の強豪校と繰り広げられた。
 おおよその試合は勝ったが、課題をもって縛りプレイをした試合では、負けることもあった。
 たとえば岩崎には、決め球は必ず変化球などという要求が出たこともある。
 直史には緩急以外の変化球禁止が出たりもした。
 大介へのホームラン禁止というのが、一番笑えたが。

 もっとも地区の優勝候補である、他県の本物の強豪との練習試合では、そういった制限はなしで戦った。
 それでも勝率はおよそ五割なので、充分に甲子園行きの資格はあると言えるだろう。
 格下相手の練習試合では、サブメンバーがスタメンで出ることもあったし、シニア組以外の一年も投入された。
 一度はシーナがクローザーで出て、パーフェクトピッチングなどをしてしまったりもした。

 そして六月末。夏の県予選の組み合わせ抽選会が行われる。
 キャプテン北村と部長の高峰を除いて、全員が練習である。
 ちなみにこの頃には、山手の新たな呼び名が決まっていた。
 セイバーさんである。

 表向きはセイバーメトリクスを使うからというものであったが、本当の理由は別にある。
「山手さんってセイバーに似てるよな。青っぽいスーツ着てること多いし」
「誰だよセイバーって」
「アニメのキャラ」
「へえ」
 確かにスマホで見せられたキャラは、山手に似ていた。
 だがその名を出した本人と他一人以外は、そのキャラクターが元々は、美少女ゲームのヒロインだとは知らなかったのだが。

 ちなみに最初は「ヤマカン」という案もあったのだが、あまりにそれはアレだという理由で却下されていた。

 かくして山手はセイバーさんと呼ばれることになった。
 野球用語でもセーブという言葉があるので、部員達には特に抵抗もなく受け入れられた。
 山手はライトセイバーと何か関係があるのか、という程度には思ったが、特に抵抗もなく受け入れられた。
 リアル金髪碧眼女性をセイバーと呼ぶ。
 それを喜ぶ野球部員は、幸いなことに二人だけであった。



「シードはいいよな。何がいいって、いきなりシード校と当たることがない」
 ジンが打算的なことを言ったが、否定する者がいる。
「優勝候補筆頭となら、二回戦あたりで当たった方がいいですけどね。こちらも疲れてないし、データも渡っていないですから」
 セイバーはトーナメント表を見ながらそう言った。

 高校野球、特に夏の大会は、一発勝負である。
 おおよそは強豪が優勝するのがほとんどだが、いくつかの強豪が早めに負けてしまうことも多々ある。
 特に軟投派の一年が入ったチームになどには、大番狂わせを食らう可能性が高い。
「まあでも、かなりラッキーな場所じゃねえの?」
「マンガとかだと一回戦が、去年の準優勝校だったりするんだよな」
 中学時代弱小だった大介と直史は、そんなとんちんかんなことを言った。
「いや、シードを取ってるんだから、それはないだろう」
 苦笑する北村に、そうでしたと気づく。なかなか身についた弱小体験は、拭いがたいものだろう。

 しかし本当に、かなり運がいい。
 今回の大会、一番注目されているのは、春にシードを取れなかった強豪校、その中でも勇名館がどこに入るかであった。
 幸いなことに反対の山に入っている。当たるとしても決勝だ。
 シードに入らなかった強豪も、白富東と当たるまでに、他のシード校と潰しあう。
「ベスト8までは普通に勝てそうだな」
「うちみたいに油断なく確実に勝つ方法が定まっていないチームは、ちょっとした油断が命取りですよ」
 北村の楽観論に、ジンが釘を刺す。確かにキャプテンの発言としては問題であった。
 しかし事実ではある。

 練習試合で木っ端微塵に粉砕したチームとも、一度は当たりそうだ。
「準々決勝が、順当なら蕨山か。まあ普通に強いよな」
「春の結果から考えれば、上総総合が準決勝の相手か」
「上総総合なら、相性がいいですね」
 珍しくセイバーがそんな発言をした。相性とはどういうデータから出したのか。
「サウスポーのすごいカーブを投げられる人が、うちにはいますから」
 言われてみれば、スピードと落差はともかく、直史の左のカーブは、細田対策としてはばっちりのものだ。
「決勝はトーチバ、東雲、勇名館……あと光園学舎も一応な」

 千葉県の参加校は170校。シードがあるので一回戦は戦わなくていい。
 七試合勝てば甲子園だ。無理ではないと自然に思える。
 今なら帝都一のBチーム相手には勝てるだろうし、春日山がエースを出してきても、それなりに勝負できる自信がある。
「それじゃあキャプテン、一言」
 監督ではあるが牽引する立場ではないため、セイバーは北村に任せる。
 北村はトーナメント表から目を離し、部員達を眺めていく。
「なあ、三ヶ月前、うちのチームがこんな状況になるって、想像したやつ、いるか? ああ、大田以外でな」
 付け足された台詞に失笑が洩れた。

 三ヶ月前、ジンたちは既に進学は決まっていたが、まだ練習には参加していなかった。
 ジンたちが練習に参加するようになり、岩崎が140kmを出した時でさえ、県下の強豪とまともに戦えるとは思わなかった。
 全てが劇的に変わったのは、シーナが直史を連れて来て、大介と出会ってからだ。
「正直俺は、甲子園なんか目指してなかったよ。野球が好きだから、真面目にちゃんと勝つための練習はしてたけど、まさか甲子園なんてな。今の二三年は、特にそうだよな」
 本気で目指すなら私立か、強い公立を選んだだろう。
「でも今は、すごく遠くにだけど、確実に甲子園の背中が見えている」
 やってみなくても分かるから、やってみなくちゃ分からないへの変化。
 0と1では、全てが違うのだ。
「野球を嫌いにならないために、全力を出そう。悔いがないように、それでいて身につけた範囲内で、しっかりと戦おう」
 北村はわずかに息を飲み、叫んだ。
「勝つぞ!」
「オウ!」
 応える叫びは、力強いものだった。 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ルナール古書店の秘密

志波 連
キャラ文芸
両親を事故で亡くした松本聡志は、海のきれいな田舎町に住む祖母の家へとやってきた。  その事故によって顔に酷い傷痕が残ってしまった聡志に友人はいない。  それでもこの町にいるしかないと知っている聡志は、可愛がってくれる祖母を悲しませないために、毎日を懸命に生きていこうと努力していた。  そして、この町に来て五年目の夏、聡志は海の家で人生初のバイトに挑戦した。  先輩たちに無視されつつも、休むことなく頑張る聡志は、海岸への階段にある「ルナール古書店」の店主や、バイト先である「海の家」の店長らとかかわっていくうちに、自分が何ものだったのかを知ることになるのだった。  表紙は写真ACより引用しています

連載打ち切りになりそうなので私達ヒロインは消える事になりました

椎菜葉月
キャラ文芸
筆者が見た夢の話を小説にした短編恋愛?話。 自分の暮らす世界は少年向け雑誌に連載されている漫画であり 自分はその作品の主人公ではなく脇役かつ影の薄いキャラで 漫画の連載を続ける為に存在を消されることになっている── そんな運命のモブキャラ主人公が頑張る話です。 サクッと短く完結する話です。 ※続きがあるような表現がありますが、あくまで物語のフレーバーであり細かい事は無視して読んで下さい。 ※好評なら続きや作中作の本編(少年誌漫画本編)も書くかもしれません。 ※メモ帳に書いた文章をベタ貼りしたものですので改行などあまりせず読みにくい可能性が高いです。ご了承ください。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

江戸時代改装計画 

華研えねこ
歴史・時代
皇紀2603年7月4日、大和甲板にて。皮肉にもアメリカが独立したとされる日にアメリカ史上最も屈辱的である条約は結ばれることになった。 「では大統領、この降伏文書にサインして貰いたい。まさかペリーを派遣した君等が嫌とは言うまいね?」  頭髪を全て刈り取った男が日本代表として流暢なキングズ・イングリッシュで話していた。後に「白人から世界を解放した男」として讃えられる有名人、石原莞爾だ。  ここはトラック、言うまでも無く日本の内南洋であり、停泊しているのは軍艦大和。その後部甲板でルーズベルトは憤死せんがばかりに震えていた。  (何故だ、どうしてこうなった……!!)  自問自答するも答えは出ず、一年以内には火刑に処される彼はその人生最期の一年を巧妙に憤死しないように体調を管理されながら過ごすことになる。  トラック講和条約と称される講和条約の内容は以下の通り。  ・アメリカ合衆国は満州国を承認  ・アメリカ合衆国は、ウェーキ島、グアム島、アリューシャン島、ハワイ諸島、ライン諸島を大日本帝国へ割譲  ・アメリカ合衆国はフィリピンの国際連盟委任独立準備政府設立の承認  ・アメリカ合衆国は大日本帝国に戦費賠償金300億ドルの支払い  ・アメリカ合衆国の軍備縮小  ・アメリカ合衆国の関税自主権の撤廃  ・アメリカ合衆国の移民法の撤廃  ・アメリカ合衆国首脳部及び戦争煽動者は国際裁判の判決に従うこと  確かに、多少は苛酷な内容であったが、「最も屈辱」とは少々大げさであろう。何せ、彼らの我々の世界に於ける悪行三昧に比べたら、この程度で済んだことに感謝するべきなのだから……。

処理中です...