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平和を望む者
最愛の友へ
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「今日も、残業をやらせて、すまんなぁ。
レイグ君。」
「いえいえ、大丈夫ですよ。イグシャニファに来て間もなかった俺に……グリフ人である俺に唯一
仕事を提供し、手を差し伸べてくださったのは、
アムイ社長。あなただけです。
本当に、いつもありがとうございます。」
社長は、そんなそんなと首を振りながら言う。
「まぁ、ここイグシャニファは外人への差別が酷いからなぁ。随分と、苦労したことだろう……。
…それで、レイグ君。さっきから何を急いでいるのかね?」
「あ、あぁ。今日はその…戦死した、友人の命日
なんです。 彼とは、幼い頃からの仲でし
ね。 よく、彼のことを思い出しますよ。
それで今日は、グリファンデで墓参りをと。」
「おお、そうだったのか。 すまぬことを聞いたな。 なら、早くお行きなさい…
君の友が、待っていますよ。」
「あ…ありがとうございます!」
深夜、俺は 距離短縮空港で
故郷グリファンデに到着した。
深夜なためか、虫の声だけが辺り一面から聞こえてくる。人気は感じない。
安全そうだな。
1つの墓の前にレイグは座る。レイグは黙って
その墓に刻まれた名を、見つめる。目をつぶり、
深呼吸を数回した後、静かに手を合わせる。
レイグの頭の中には、色々な思い出が蘇ってきていた。
「色々…したよな。シファが誘拐されそうになった時、それを全力で止めたり、近所の家が火事になった時カイヤの貯金を全財産はたいて
無断で消化器買って 火を消したり…
あ!…あん時は2人で怒られたよな。いくら人助けでも全財産はひどいっ!!て発狂してたな。
で、しかも、お前はそんな状況で…お詫びとして
バニラアイスを渡して…さすがに爆笑しちまったよ。 しかもそのアイスでご機嫌なおっちまったし~。 カオス…だったな。ホント。」
レイグの目から出た一粒の涙が、頬を撫でる。
「…俺の願いを受け入れて
平和への道を一緒に歩んでくれた。
今思えばその事実だけで、俺は十分
それだけでよかった。 なのに…
どうして…。またかよ。」
レイグは、拳を握りしめて歯を食いしばる。
「また。奪われた。命が。 戦争に。」
一年前、イグシャニファに来て数ヶ月経つレイグにイグシャニファ在中の奴隷達から手紙が届く。
その手紙を読んだレイグは、現実の残酷さ
そして理不尽さを、思い知らされた。
グリファンデ政府は、イグシャニファの海岸地域に攻める兵士を奴隷から募った。いや、奴隷を試し駒とし攻め入ったのだ。両国、お互いの奴隷をぶつけ合い多くの死者を出した。
それを、両国とも、平和の為には、資源のためにはしかたなかったと言う始末。
この世は狂っている。
レイグはそっと、お墓の隣にものを置く。
「……お前、本当はこれ、食べたかったんだろ?
お礼にとか言ってたけど、顔は正直だったな。
バニラで…よかった?」
レイグは、もう一度、手を合わせて
その場をあとにする。
レイグは帰り道、カイヤの家に寄る。
カイヤは、モンシュが死んだ後も一人で
グリファンデのハッキングを試みていたが
政府に カイヤの居場所を特定されてしまい
刑務所に投獄された。
今は、シファ1人で生活をしているらしい。
シファと一年ぶりに会話し、そのことを知った。
カイヤからの手紙が途絶えていたわけだ。
グリファンデの情報を伝える用の手紙だ。それを送り忘れることがないと思っていたが
そういうことだったのか。
シファと別れ、
日の出が照らす田んぼのあぜ道を
レイグは1人、歩いていく。
虫の声とカエルの声が、かすかに聞こえる。
今の状況では、俺に力はない。奴隷は政府に回収され
頼みの綱も途絶えた。
仮にカイヤを助けに行っても、それだけできる力が。俺にはない。
深夜に墓参りに来たのだってそうだ。政府が必死に探しているんだよな。
俺のことを。戦争への反逆者…だからな。
取り残された俺がやらなくちゃいけないことはただ一つ。プランは同じ、イグシャニファの戦闘能力を奪うことだ。
それだけは、この命を捧げてでも
成し遂げてやる。 俺が、何かを変えないと……
「……モンシュ。空の上で見てるか?」
レイグは空を見上げて1人、呟く。
「平和を誓って進み続けた5年間。
絶対に無駄にしない。ここにそう誓う。」
この覚悟を、この命を…
最愛の友へ…。
レイグ君。」
「いえいえ、大丈夫ですよ。イグシャニファに来て間もなかった俺に……グリフ人である俺に唯一
仕事を提供し、手を差し伸べてくださったのは、
アムイ社長。あなただけです。
本当に、いつもありがとうございます。」
社長は、そんなそんなと首を振りながら言う。
「まぁ、ここイグシャニファは外人への差別が酷いからなぁ。随分と、苦労したことだろう……。
…それで、レイグ君。さっきから何を急いでいるのかね?」
「あ、あぁ。今日はその…戦死した、友人の命日
なんです。 彼とは、幼い頃からの仲でし
ね。 よく、彼のことを思い出しますよ。
それで今日は、グリファンデで墓参りをと。」
「おお、そうだったのか。 すまぬことを聞いたな。 なら、早くお行きなさい…
君の友が、待っていますよ。」
「あ…ありがとうございます!」
深夜、俺は 距離短縮空港で
故郷グリファンデに到着した。
深夜なためか、虫の声だけが辺り一面から聞こえてくる。人気は感じない。
安全そうだな。
1つの墓の前にレイグは座る。レイグは黙って
その墓に刻まれた名を、見つめる。目をつぶり、
深呼吸を数回した後、静かに手を合わせる。
レイグの頭の中には、色々な思い出が蘇ってきていた。
「色々…したよな。シファが誘拐されそうになった時、それを全力で止めたり、近所の家が火事になった時カイヤの貯金を全財産はたいて
無断で消化器買って 火を消したり…
あ!…あん時は2人で怒られたよな。いくら人助けでも全財産はひどいっ!!て発狂してたな。
で、しかも、お前はそんな状況で…お詫びとして
バニラアイスを渡して…さすがに爆笑しちまったよ。 しかもそのアイスでご機嫌なおっちまったし~。 カオス…だったな。ホント。」
レイグの目から出た一粒の涙が、頬を撫でる。
「…俺の願いを受け入れて
平和への道を一緒に歩んでくれた。
今思えばその事実だけで、俺は十分
それだけでよかった。 なのに…
どうして…。またかよ。」
レイグは、拳を握りしめて歯を食いしばる。
「また。奪われた。命が。 戦争に。」
一年前、イグシャニファに来て数ヶ月経つレイグにイグシャニファ在中の奴隷達から手紙が届く。
その手紙を読んだレイグは、現実の残酷さ
そして理不尽さを、思い知らされた。
グリファンデ政府は、イグシャニファの海岸地域に攻める兵士を奴隷から募った。いや、奴隷を試し駒とし攻め入ったのだ。両国、お互いの奴隷をぶつけ合い多くの死者を出した。
それを、両国とも、平和の為には、資源のためにはしかたなかったと言う始末。
この世は狂っている。
レイグはそっと、お墓の隣にものを置く。
「……お前、本当はこれ、食べたかったんだろ?
お礼にとか言ってたけど、顔は正直だったな。
バニラで…よかった?」
レイグは、もう一度、手を合わせて
その場をあとにする。
レイグは帰り道、カイヤの家に寄る。
カイヤは、モンシュが死んだ後も一人で
グリファンデのハッキングを試みていたが
政府に カイヤの居場所を特定されてしまい
刑務所に投獄された。
今は、シファ1人で生活をしているらしい。
シファと一年ぶりに会話し、そのことを知った。
カイヤからの手紙が途絶えていたわけだ。
グリファンデの情報を伝える用の手紙だ。それを送り忘れることがないと思っていたが
そういうことだったのか。
シファと別れ、
日の出が照らす田んぼのあぜ道を
レイグは1人、歩いていく。
虫の声とカエルの声が、かすかに聞こえる。
今の状況では、俺に力はない。奴隷は政府に回収され
頼みの綱も途絶えた。
仮にカイヤを助けに行っても、それだけできる力が。俺にはない。
深夜に墓参りに来たのだってそうだ。政府が必死に探しているんだよな。
俺のことを。戦争への反逆者…だからな。
取り残された俺がやらなくちゃいけないことはただ一つ。プランは同じ、イグシャニファの戦闘能力を奪うことだ。
それだけは、この命を捧げてでも
成し遂げてやる。 俺が、何かを変えないと……
「……モンシュ。空の上で見てるか?」
レイグは空を見上げて1人、呟く。
「平和を誓って進み続けた5年間。
絶対に無駄にしない。ここにそう誓う。」
この覚悟を、この命を…
最愛の友へ…。
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