来世の君へ ~輪廻の中で見つけた平和~

Good sky forever

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平和を望む者

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「行かないでよ!!お父さん!」 


「レイグ。これはお国様からの命令なんだ。  お父さんだけじゃない。他の人も戦争に行かなくちゃいけないんだ。
だから、……だからっ…だから、レイグ。
 お父さんが……、いなくなっても…」

「いなくなっちゃ、嫌だ!!やだよ! ……
 お父さんは、戦争があるから行かなくちゃいけないんでしょ?…他の人も。」


「そうだ。…だから、」


「じゃあお父さん!僕がたくさん勉強して
 偉い人になって、戦争を止めるから!
 それまで!!それまで、待ってよ! 
…そんなの、いなくならないでよ。死なないでよ。」


「……ごめん。ごめんな。今回の戦争は…
 たくさんの国と戦うんだよ。
 だから、いつか、お前が…
 この戦争の歴史に、終止符を打ってれ。」

「待ってよ…行かないでよ…」




「いつまでも…父さんは、いるよ。」


父さんは、静かに俺の頭を撫でた後、

雪が積もった道を、静かに歩いていく。


一度振り返り、口癖の
「ありがとう。生まれてきてくれて」 

父さんが無理矢理、笑顔を作っているのがわかった。…気に入らなかった。無理矢理頑張っているフリをしようとしていることが。
父さんの最後の笑顔から、俺は目を逸らし、
黙って、目の前に積もる雪道を黙って見つめた。

父さんは最後に、「…ごめんなさい。あと、ありがとう。」と言って その道を歩き始める。



そして、それからもう、父さんが帰ってくることはなかった。





戦争が終わって一年後、
父さんの死亡届を渡された9歳の俺は、
一年前と同じように
ただ黙って、あの雪道をずっと見つめていた。

長い時間。ずっと……




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






「おーい、おいー。レイグ~。起きろよ~
      アリア婆さんにみつかるぞ?」

「ハッ!!……お、ホントだ。教えてくれて
 ありがとな。」


「呑気に爆睡しやがって幸せなやつ…」


「…そうだと…いいな。」


俺が見た夢は、幸せなんてものじゃない。
戦争。この存在こそが、俺の唯一の家族を
奪った。
俺だけじゃなく、多くの人が、この戦争に奪われた。…許せない。…戦争は、この世に存在しちゃいけない。
絶対に。戦争を消してやる。
戦争を歴史を…この人生を捧げて、終わらしてみせる。



「レイグ・アークァー。何をボーっとしてるの? 作業の続きをしなさいっ」

「あ、はい。」


クソ、また考え事して手が止まっちまってた。でもいつか、この目的を…達成
してみせる。

「なぁ、カイヤ。突然変なこと聞くが、
 世の中を平和にするには何が必要だと
 思う?」


「あ~。なんだろ。例えばぁ、
 まず、国を乗っ取って、奴隷を解放すると
 か?」


「…なるほど。」


「何真面目に考えてんだって!
 そんな、国を乗っ取るなんてさ!
 そもそもできないし!」


「いや、できる。順番を逆にするんだ。」

「は?」


そうだ。順番を逆にすれば、行ける。
国を乗っ取るには戦力が必要だ。
俺たちでも、戦力を集めることができる唯一の方法がある。
そう、


「先に、奴隷を味方にする。グリファンデは兵士より奴隷の方が数は勝ってる。」


「お、おう。でも、奴隷に力はないぞ?
 武器もないし…」


「そう…だな。」



でも、それでも動かなきゃ何も変わらない。
この先の時代、どうなっていくかわからない。でもどっちにしろ、奴隷を支配下に置いておけば情報が手に入れやすいだろう。


「なぁ。カイヤ。この世を、平和にしたくないか?」

「どういう意味だ?」


「文字通り、この世界を救う。」


「そんなの、できるわけ…」

「俺も今までそう諦めてきた。
 だが、あの頃の…父さんとの最後の記憶を見て思った。 戦争に終止符を打たなくちゃ行けないって…。」


「…レイグ。  俺も、戦争が消えてほしい。 同じだよ。レイグ。本気なら手伝う。この世界を、平和に導いてくれ!」

「…っ、そんな大袈裟な。
…でも、それくらい。やってみせる。」


この日から、俺たち2人は平和への道を歩み始めた。
2人で話し合った結果、奴隷の中でも顔の広い人物を雇って、奴隷から情報を集めることにした。
近くにある奴隷商店から、一人一人の奴隷について書かれた調査書を見て、1人の男を雇うことにした。


「この人物がいいだろう。」

「どれだどれだー?」


「モンシュ・リーファ。」



奴隷の中でその名をとどろかせているらしいが……

俺たちと同じ願望を持たない限り…。


今は、この男に頼るしか……ないのか?
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