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忘れてました。この世界の常識。 R

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「ああっ…はぁ…お願い…。カナメさん…お願い」

私はもう、懇願する事しか出来なかった。
気持ちいいのが終わらない。だってずっとイってる。怖い。何これ。
抱き締めて欲しい。掴まえていて欲しい。
何処かに飛んでいってしまいそうなの。

腕を上げた私の求めを分かってくれたようで、直ぐに彼の身体が降りてくる。
私はその首に遠慮なく抱き着いた。

「カナメさん…カナメさん」
「うん。もう、平気?」
「カナメさん…お願い」
「うん。嬉しいよ」

カナメさんは私を見つめて何度もキスをしながら、ぴとりとその熱を蜜口にあてた。

「ここ?」
「うん」

励ますように、安心させるようにキスをくれる。
離れた方が入れやすいのに。
くちゅっくちゅっと先端が確かめるように入り口を撫でる。
傷付けないように蜜を纏って角度を合わせてくれてるんだろう。男の人にとったら酷くもどかしいだろうに。
優しい。本当に優しい。

「カナメさん。好き」
「ああ…。俺も好きだよ。ん…」
「あ…」

ずく、と入って来た熱は、抵抗を受けたかのように一旦出て行き、またすぐに入り込んでゆっくりと進んだ…けど

「う…はぁ…凄い…溶けそうだ…リコ…平気?」
「ああ…ああああ…」

熱いっ熱い!
まるで快楽を感じる神経だけが剥き出しになっているかのよう。
こんなに太くて私を拡げているのに、どうしよう。気持ち良いしか感じない。
熱が擦れる度にパチパチと快楽が弾け子宮がきゅんきゅんする。
だめ…もう…イく…

「あっあっあああっ!!!」

ぎゅっと目を瞑ると瞼の裏に光が飛ぶ。
膣が収縮してカナメさんのカタチがわかっちゃう。
ビクビクって震えてる。イキそう?

「く…あ…」

カナメさんはぴたっと腰を止めて耐えるように身体を震わせた。
ふーっふーっと耳元で聞こえる荒い息にも感じてしまう。

「っ…はぁ…大丈夫?痛く…はないよね?」
「はい。気持ち…いいです」
「ん。良かった。最後まで入れてもいい?」

まだ全部入って無かったんだ…。
コクンと頷きながら挿入途中であっという間にイってしまった自分に恥ずかしくなる。
女神様やり過ぎです。
ぐっとカナメさんが侵入した場所は驚く程深くて。でも痛みなんか少しもなくて怖いくらい。

「あっん…んぁあっ深いぃっイくぅっ」

ぎゅむっと最奥を潰されてまた私はイってしまった。これやばい。奥ずっと気持ちいい。

「うう…あっ…なんかコレ…奥が…ずっと…ああっダメっそれっイっ…」

軽く腰を揺すられて奥を捏ねられて気持ち良すぎておかしくなりそうだった。
チカチカと瞼の裏が点滅する。全身に快楽が回って背骨が溶けそう。
だって…こんなの知らない。こんな気持ちいいの知らないっ。

「…っ動いていい?」
「ひぁっああ…」

そうだ。まだ動いても無い。彼がイけない。

「う…動いて…カナメさんも…気持ち良くなって欲しい」
「今も十分気持ち良いよ。気持ち良すぎて、このまま果ててしまいそうなくらい。私が我慢出来るうちに少し動かせて?」

憂いを含んだような色気の滴る美しい顔に微笑まれて、一瞬時が止まったかと思った。私のカナメさん耐性はいつつくのだろう…。

「あっあっああっやっああああっ!!!」

神経剥き出し状態のナカが擦られたら、どうなるか。
ゆったりとしたピストンが徐々に速くなり、私は遂にイッた状態から戻れなくなった。
ぱちゅぱちゅと水音をさせながら熱い肉が行き来する度に頭の先まで痺れる。
頭の中にはずーっと星が散っていて、まともな思考も出来なかった。

「ああっうぁあっあっきもち…やぁっイイのぉっあっやらぁっああっ」

涙もよだれも分からない。顔中びしょびしょにして喘いで酷い状態だったと思う。

「はぁっ…もうっ…限界…出すよ…」

ぐちゃっぐちゃっずちゃっずちゃっと酷い音を立てて腰を動かし、ぎゅっと私を抱き締めながらカナメさんが達してくれた。

「リコ、愛してる」

返事…出来ない。私はカナメさんが動かなくなってから暫く、絶頂の波で真っ白になった頭を戻せないでいた。
そうしているうちに若干硬さを失っていたカナメさんの熱が戻り、もう一度真っ白な波に翻弄される事になった。




ーーーーーーー

「カナメっ!!いい開けて!!このままだと他の家族も黙ってないよ!」

乱暴に叩かれた扉にビックリする。
カナメさんに拾われて、カナメさんと恋人になって。
こちらの世界に来て1ヶ月以上。初めてのカナメさん以外の人からの接触だ。

「はぁ。時間切れか…」

悲壮な顔をしたカナメさんに少し不安になる。
今更引き離されたりとか、あるんだろうか?

「君に謝らなければいけない事がある」
「え?」

最悪な想像が最悪な現実になるの?
一瞬頭が真っ白になったけど、カナメさんに抱き締められた事でなんとか意識を戻した。

「君が贈り者なのをいい事に…君が何も要求してこないのをいい事に…。優しい君に甘えて…私は今日まで夫候補の男達をリコに会わせなかった。済まない!」

いや、忘れてました。この世界、一妻多夫が当たり前で私もそれに含まれてるって事。
つまり、外で現在進行で扉を叩いて別の誰かからなだめられている男性は、その候補と言う事だろうか。

「本当に申し訳無いと思っている。ずっとこうしてはいられない事も分かっていたのに…。私のした事はとても卑怯な行いだった。女神の教えにも、法律にも、学園や家庭教育にさえ反する行為だ。でも、どうしても…私がリコのこちらでの初めての夫に…初めて心を通わせた男になりたかった。すまない…」
「あ…えっと、女神の教えって?」

熱烈な告白みたいな懺悔に、心臓がバクバクして若干パニックなんですけど…。

「女性の選択を狭めてはいけない。女性の愛を独占しようとしてはいけない。これは何度も教え込まれる事なんだよ。訴えられれば牢屋かな。うん。その権利はあるよ。リコ」

いやいや前半はともかく後半の教えはなんだか納得いかないぞ。

「いやいや、好きな人を独占したいって当たり前だから。私だってカナメさんを独占したいよ?他の人を好きになって欲しくないし、出来ればずっとカナメさんだけが夫なら良いなって…」
「リコっ!!なんて…ああ…もう…優し過ぎる…愛してる…リコ…リコ…」

抱き締める力が強くなって、手付きが若干怪しいけど、扉の前に人がいる状態でエロに突入する勇気は無いよ。
肩を押すと、身体が少し離れて優しいキスと切ない目を向けられてあわわわってなる。
いやそんな可愛い顔見せられたら流されちゃうよ!
駄目、私!理性を保て!

「はあ…永遠に二人切りでいたい。…けれど、そう言う訳にもいかないんだ。はあ…言いたくない…はぁ…。リコ、女性には自由な選択肢がなければいけない。でもそれはこの国の女性が沢山の家族に守られているからこその自由なんだ。贈り者には守ってくれる家族はいない。今はこの家で母の庇護に入っているけれど、夫が私一人ではリコはあっという間に拐われてしまう。女性が少ないこの世界で、庇護が無い贈り者は誰もが手に出来る存在。そして、そもそも贈り者含めて女性は最低でも五人の夫と婚姻する事が法で決まっている。今までは贈り者がこの世界に馴染めるまで、という名目でリコを独り占めしていたけれどもう限界だったんだ。リコ。怒っていい。どんな罰も受ける。だから…嫌いにならないで?」

泣きそうな顔、しないで。
駄目。こんな状況なのに胸がきゅんきゅんする。

「きっ嫌いになるわけないよ!!好き…だから。カナメさんの事ずっと好き」

女の情を舐めるな。というか私は一度好きになったら割としつこく何時までも好きでいるタイプだ。
そのお陰であんな夫と10年以上一緒にいてしまったくらいだし。
なんなら初恋の男の子への情すらまだ残っているくらい。
私の愛情は入れ替え制では無いのよね。

だから多分…他の夫が出来ても平気だ。
好きな人に別の男性を紹介されるってかなり傷付く状況ではあるけど、自分よりもっと傷付いて、自分を独り占めしたいって言ってくれる人に怒る事なんて何もない。
それに見た目は若返っても中身はいい大人だ。
だからこの世界の常識も法律も無視して私はカナメさんだけがいいの!それが私の国の常識なの!なんて自分の考えを押し付けてカナメさんに負担を掛けるつもりはない。
それに…本音の本音には、恋は永遠では無いって知っているから…1人にだけ依存して、捨てられたらって薄汚い打算がある。
沢山夫がいれば誰かはずっと愛してくれるかも、なんて…そういう思考もこちらの世界に選ばれた所以かな。

こんな女でごめんね。

「カナメさんも、私の事嫌わない欲しい…」
「嫌うなんて…あり得ない」

この世界でもう一歩踏み出してみよう。



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