我ら狂気の軍団

原口源太郎

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 とど店が上に行けと合図を送る。
「一階はダメだ、上に行くぞ」
 パンドコロが言い、三人は階段を上る。
 階段の途中でパンパンパンと音がする。
「まずい。まだ早いっての」
 パンドコロが怯えたように言った。
 ふたたびおばさまたちが、埃を巻き上げながら階段に向かて殺到してくる。
「止まれ! 止ま」
 パンドコロの声も途中でかき消された。
「あーれー」
 ふたたびおばさまパワーに吹っ飛ばされ、宙を舞う三人。
 頭にたんこぶを作って起き上がった三人は、そろりそろりと用心深く階段を上っていく。
 息を切らせて六階まで階段を上っていくと、とど店と小ケン、売買、しのぶの四人が踊り場に座り込んでいた。
「どうした、店長」
 パンドコロがとど店に声をかける。
「もぬけの殻だ」
「もぬけの殻?」
「そう、みんな逃げちまった」
「みんな逃げちまったって、二、三百人の人質ってのはどうすんだよ!」
 パンドコロが気色ばんでとど店に詰め寄る。
「捕まりたくないよー!」
 小ケンが泣き出した。
「うるさい!」
 色美が小学生に怒鳴りつけるように言った。
「大丈夫よ、泣かないで」
 しのぶが小ケンのところに行き、優しく背中に手を置く。
「うん」
 小ケンも小学生のように甘えた声で頷いた。
「アホか」
 パンドコロがあきれて言う。
「どうしよう」
 とど店は青い顔で狼狽えた声を出した。
「こういう時こそ冷静になりましょう」
 狐顔で、ひときわ大きな袋を抱えている売買が言った。
 ファンファンファンファンファン。
 ファンファンファンファンファン。
 何台ものパトカーのサイレンの音が近づいてくる。
「おい、売買、早く何とかしろ」
 パンドコロが言った。
「私に言われても。・・・・取りあえず人質が五十人くらいいると見せかけて・・・・」
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