我ら狂気の軍団

原口源太郎

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 全員が真顔になって店長の顔を覗きこむ。
「商売替えでもするか」
 とど店の一言に全員ががっくりとうなだれた。
「何言ってんだ、コノヤロー」
 パンドコロがバンと机を叩く。机の上に載っていたも物がピョンと飛び上がった。
「商売替えをする、しないはそちらの勝手ですが、取りあえず給料を払っていただきたいですな」
 あくまでも冷静な大沢。
「バーかクラブでも経営しようかな。それともちょっとお色気のあるマッサージ店とか」
 とど店は他人の目など気にせず、自分の世界に入っている。
「こらこら! そんな金があるんなら給料払え。今払え、すぐ払え」
 パンドコロが高飛車に言った。
「金は全然ない」
 とど店の言葉を聞き、他の四人の目が吊り上がり、殺気立つ。
「今月は絶対に遊びたいソフトを五本も予約しちゃってるのに」
 小ケンは今にも泣き出しそうだ。
「馬鹿野郎、俺なんか飲み屋の借金、少しでも払わねえと殺されちまう、マジで」
 パンドコロは再び机をドンと叩いた。また机の上の物がピョンと飛び上がった。
「私は水道にガスに電気、ネット接続、みんな止められて、溜まった家賃も抱えて・・・・今晩、夜逃げ・・・・みなさん、さようなら」
「お前、そんな生活しているんか?」
 パンドコロが驚いたようにパリッとしたスーツ姿の大沢を見た。
「みなさーん、貸したお金、返してね」
 色美が流し目のような目つきで四人の男たちの顔を見ていく。
「四人合わせて二百万じゃきかないんだからね! ちゃんと返しなさいよ!」
 急に目を吊り上げ、色美はパンドコロのようにテーブルをバンと叩く。テーブルの上の物は飛び上がらなかった。
 小ケンとパンドコロ、大沢、色美の四人が赤く充血した目でとど店をギロリと睨んだ。
 とど店は四人の恐ろしい殺気に気付き、大水のように冷や汗をかく。
「わ、わかった。金はちゃんと払ってやる」
 五人の輪の中で、とど店はひそひそと話を始める。

 突然、丸くなり、顔を寄せ合ってとど店の言葉を聞いていた五人の輪がパッと広がる。
「マジかよー」
 と、パンドコロ。
「アホくさ」
 冷めた目の色美。
「もっと現実味のある話をしてほしいものですな」
 こちらも冷めた表情の大沢。
「何でー。銀行強盗のどこがいけないんだよ」
 とど店が不思議そうに周りの人間を見る。
「あーあ、さっさと帰って寝よ」
 パンドコロが諦めたように言った。
「帰ろ帰ろ」
 小ケンも続く。
「ちょっと待った。みんな金持ちになるんだぞ。一人百万はいける」
 とど店が必死の顔付きになって言った。
「百万なんて、借金払ってもまだ足りねーよ」
 パンドコロが言った。
「・・・に、水道代に・・・・家賃・・・・おお、私は借金が全部払えておつりがくる」
 大沢は目を輝かせた。
「そんなはした金、要らねーよ。何で銀行を襲ってそれっぽっちなんだよ」
 色美はつまらなさそうに言った。
「じゃ、僕が色美の分も貰う」
 バチン!
 色美にぶたれる小ケン。
「あのさー、百万くらいでバーやクラブが始められると思っているわけ? マッサージ店ならわかんないけど」
 小ケンをぶっ叩いた手を振りながら色美が言った。
「それじゃ、もっとでっかいこと・・・・」
 とど店が考える。
「でっかいことですか」
 気になった素振りで大沢が言う。
「そう、一人一億くらい稼げるような」
「一億!」
 四人が一斉に声を張り上げた。
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