11 / 12
11
しおりを挟む
本田は藤田たちが戻って来るまでに頭の中をもう一度整理しようとした。色々な事があり過ぎて、下手に考えると余計にわからなくなってしまいそうだった。
エレベーターのドアが開いた。先ほどまでそこにいた四人の刑事が出てくる。本田は緊張して全身に震えが走った。
「何か話したいことがあるって?」
本田の前に来て林が尋ねた。
「はい。お忙しところ、申し訳ありません」
「そんなことはいい」
「死亡した被害者についてなのですが、いくつかおかしなところがあると思います」
本田はそこで言葉を切った。
「何だ? 言ってみなさい」
林が催促する。
「被害者は頭を殴られた後に机に覆い被さるように倒れています。血液の流れた痕がそれを証明しています」
「うむ」
林が頷く。他の三人は黙ったまま聞いている。
「そんな状態で被害者はメッセージを書いています。それも雑誌の余白にきちんと書いています。そんなことができるでしょうか」
本田は林に問いかけた。
「できないとは言い切れん。簡単にはできないし、偶然もあるかもしれない」
「それから、被害者はなぜそんなメッセージを書いたのでしょう。普通なら助けを呼ぶのが先だと思います。机の上にはスマホもありました。しかしそれには触れていないようでした」
「確かにそうだ」
「それならそのメッセージは被害者が書いたものではなく、別の人物が書いたのではないでしょうか。書くとしたら誰か。とどめを刺した犯人が出頭してきた女に罪を被せるために書いたのでしょうか。しかしそんなものがなくても、現場の状況から犯人は誰かということはすぐにわかるはずです。メッセージなど書く必要がないのです。他に書きそうな人物がいたとしたら、交番に来た女です。しかし自分でわざわざ自分が犯人と書くとも思えません。すると、誰もメッセージを書く必要のある人物がいません」
本田は自分の言っていることがうまく伝わっているか心配になって、刑事たちを見まわした。特別質問のありそうな人はいないようだ。
「そこで私は一生懸命考えました。何でそんなものがあるのだろうか。そう考えているうちに、別の事に気が付きました。エレベーターです。何で四階にあったのだろう。犯人が四階で降りたのではありません。四階には誰もいなかったのですから。それでは犯人か他の第三者がエレベーターを四階に移動しておいたことになります。最後にエレベーターを使ったのは交番に来た女です。エレベーターは一階にあったはずです。それを四階まで上げたのは誰か。マンションの四人の住人か、交番に来た女か、あるいは別の人物か。そして四階にあげた理由は何か。単純に考えれば、殺人は四階に住んでいる者が行ったように見せかけようとしたということになります。しかし二度目に被害者の頭を殴った者は冬美が犯人だというメッセージを見ているわけですし、女の犯行に見せかける細工もしています。エレベーターをわざわざ四階に上げておく必要はありません。それに、このマンションの住人は皆、四階に誰もいないことを知っています。しかし、それを知らない人物がいます」
エレベーターのドアが開いた。先ほどまでそこにいた四人の刑事が出てくる。本田は緊張して全身に震えが走った。
「何か話したいことがあるって?」
本田の前に来て林が尋ねた。
「はい。お忙しところ、申し訳ありません」
「そんなことはいい」
「死亡した被害者についてなのですが、いくつかおかしなところがあると思います」
本田はそこで言葉を切った。
「何だ? 言ってみなさい」
林が催促する。
「被害者は頭を殴られた後に机に覆い被さるように倒れています。血液の流れた痕がそれを証明しています」
「うむ」
林が頷く。他の三人は黙ったまま聞いている。
「そんな状態で被害者はメッセージを書いています。それも雑誌の余白にきちんと書いています。そんなことができるでしょうか」
本田は林に問いかけた。
「できないとは言い切れん。簡単にはできないし、偶然もあるかもしれない」
「それから、被害者はなぜそんなメッセージを書いたのでしょう。普通なら助けを呼ぶのが先だと思います。机の上にはスマホもありました。しかしそれには触れていないようでした」
「確かにそうだ」
「それならそのメッセージは被害者が書いたものではなく、別の人物が書いたのではないでしょうか。書くとしたら誰か。とどめを刺した犯人が出頭してきた女に罪を被せるために書いたのでしょうか。しかしそんなものがなくても、現場の状況から犯人は誰かということはすぐにわかるはずです。メッセージなど書く必要がないのです。他に書きそうな人物がいたとしたら、交番に来た女です。しかし自分でわざわざ自分が犯人と書くとも思えません。すると、誰もメッセージを書く必要のある人物がいません」
本田は自分の言っていることがうまく伝わっているか心配になって、刑事たちを見まわした。特別質問のありそうな人はいないようだ。
「そこで私は一生懸命考えました。何でそんなものがあるのだろうか。そう考えているうちに、別の事に気が付きました。エレベーターです。何で四階にあったのだろう。犯人が四階で降りたのではありません。四階には誰もいなかったのですから。それでは犯人か他の第三者がエレベーターを四階に移動しておいたことになります。最後にエレベーターを使ったのは交番に来た女です。エレベーターは一階にあったはずです。それを四階まで上げたのは誰か。マンションの四人の住人か、交番に来た女か、あるいは別の人物か。そして四階にあげた理由は何か。単純に考えれば、殺人は四階に住んでいる者が行ったように見せかけようとしたということになります。しかし二度目に被害者の頭を殴った者は冬美が犯人だというメッセージを見ているわけですし、女の犯行に見せかける細工もしています。エレベーターをわざわざ四階に上げておく必要はありません。それに、このマンションの住人は皆、四階に誰もいないことを知っています。しかし、それを知らない人物がいます」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
カフェ・シュガーパインの事件簿
山いい奈
ミステリー
大阪長居の住宅街に佇むカフェ・シュガーパイン。
個性豊かな兄姉弟が営むこのカフェには穏やかな時間が流れる。
だが兄姉弟それぞれの持ち前の好奇心やちょっとした特殊能力が、巻き込まれる事件を解決に導くのだった。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

秘められた遺志
しまおか
ミステリー
亡くなった顧客が残した謎のメモ。彼は一体何を託したかったのか!?富裕層専門の資産運用管理アドバイザーの三郷が、顧客の高岳から依頼されていた遺品整理を進める中、不審物を発見。また書斎を探ると暗号めいたメモ魔で見つかり推理していた所、不審物があると通報を受けた顔見知りであるS県警の松ケ根と吉良が訪れ、連行されてしまう。三郷は逮捕されてしまうのか?それとも松ケ根達が問題の真相を無事暴くことができるのか!?
【完結】Amnesia(アムネシア)~カフェ「時遊館」に現れた美しい青年は記憶を失っていた~
紫紺
ミステリー
郊外の人気カフェ、『時游館』のマスター航留は、ある日美しい青年と出会う。彼は自分が誰かも全て忘れてしまう記憶喪失を患っていた。
行きがかり上、面倒を見ることになったのが……。
※「Amnesia」は医学用語で、一般的には「記憶喪失」のことを指します。

聖女の如く、永遠に囚われて
white love it
ミステリー
旧貴族、秦野家の令嬢だった幸子は、すでに百歳という年齢だったが、その外見は若き日に絶世の美女と謳われた頃と、少しも変わっていなかった。
彼女はその不老の美しさから、地元の人間達から今も魔女として恐れられながら、同時に敬われてもいた。
ある日、彼女の世話をする少年、遠山和人のもとに、同級生の島津良子が来る。
良子の実家で、不可解な事件が起こり、その真相を幸子に探ってほしいとのことだった。
実は幸子はその不老の美しさのみならず、もう一つの点で地元の人々から恐れられ、敬われていた。
━━彼女はまぎれもなく、名探偵だった。
登場人物
遠山和人…中学三年生。ミステリー小説が好き。
遠山ゆき…中学一年生。和人の妹。
島津良子…中学三年生。和人の同級生。痩せぎみの美少女。
工藤健… 中学三年生。和人の友人にして、作家志望。
伊藤一正…フリーのプログラマー。ある事件の犯人と疑われている。
島津守… 良子の父親。
島津佐奈…良子の母親。
島津孝之…良子の祖父。守の父親。
島津香菜…良子の祖母。守の母親。
進藤凛… 家を改装した喫茶店の女店主。
桂恵… 整形外科医。伊藤一正の同級生。
遠山未歩…和人とゆきの母親。
遠山昇 …和人とゆきの父親。
山部智人…【未来教】の元経理担当。
秦野幸子…絶世の美女にして名探偵。百歳だが、ほとんど老化しておらず、今も若い頃の美しさを保っている。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる