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勇者ダルガム
ダバイン王国からの使者・1
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そんなある日の夕方、武道家の道場に旅の者が訪れた。
「王様にお話を伺ったところ、勇者殿はここにおられると聞いてきました」
対応に出た武道家に話すのは、背に剣を背負った若い女だった。共と思われる老人が後ろに控えている。
「ご用件は?」
「失礼しました。私はダバイン王国となった国の元勇者リュウの娘リンと申します。父から勇者殿に宛てた書簡を預かってきました」
武道家は稽古を終え、道場の隅に座って雑談をしている若者たちに声をかけた。
「お客さんだ。机とイスを用意しなさい」
若者たちは押入れから机とイスを出してきて並べた。
「客間もない狭い道場で申し訳ありませんな。さ、どうぞこちらへ」
リンは武道家にうながされ、道場の端に並べられたイスに座った。
「ダルガム、お客さんだ」
武道家が声をかけると、若者の中の一人がリンの前に来た。
「私が勇者ダルガムです」
ダルガムは名乗った。
リンは驚いた。
自分とそう歳の違わない若者ではないか。勇者とは、父のように貫禄があり、それなりの雰囲気を醸し出しているものと思っていたのに、このダルガムという勇者には、そんなものが何もない。
ダルガムも驚いていた。
まだ幼さの残る顔立ちだが、こんなに美しい娘を見たことがなかった。
「今は引退したが、元はアザム王国の勇者だった私の父リュウから、この国の勇者殿に渡すようにと書簡を持ってきた。私はリュウの娘リン。さっそく読んでいただきたい」
リンは疑うような目でダルガムを見ながら、袋から手紙を取り出した。
ダルガムは手紙を受け取り、読んだ。
予想した通り、ダバイン王を倒すために立ち上がるので、助太刀願えるのなら協力を頼みたいといった内容だった。
読み終えるとダルガムはリンを見た。
リンもじっとダルガムを見ている。
「あなたたちは二人で旅をしてきたのですか?」
ダルガムは手紙の返事をする前に訊いた。
「そうだが、何か?」
「いえ」
さすが勇者の娘。魔物の潜む地を旅してくることなど、何でもないといった風だ。
「できれば今すぐ返事を聞かせていただきたい。もし協力できぬのなら、私は明日にも国に帰る。協力していただけるのなら、ここに留まり国への案内役をつかまつる」
「もちろん協力するつもりです」
ダルガムはこの日を待っていたのだ。
「王様にお話を伺ったところ、勇者殿はここにおられると聞いてきました」
対応に出た武道家に話すのは、背に剣を背負った若い女だった。共と思われる老人が後ろに控えている。
「ご用件は?」
「失礼しました。私はダバイン王国となった国の元勇者リュウの娘リンと申します。父から勇者殿に宛てた書簡を預かってきました」
武道家は稽古を終え、道場の隅に座って雑談をしている若者たちに声をかけた。
「お客さんだ。机とイスを用意しなさい」
若者たちは押入れから机とイスを出してきて並べた。
「客間もない狭い道場で申し訳ありませんな。さ、どうぞこちらへ」
リンは武道家にうながされ、道場の端に並べられたイスに座った。
「ダルガム、お客さんだ」
武道家が声をかけると、若者の中の一人がリンの前に来た。
「私が勇者ダルガムです」
ダルガムは名乗った。
リンは驚いた。
自分とそう歳の違わない若者ではないか。勇者とは、父のように貫禄があり、それなりの雰囲気を醸し出しているものと思っていたのに、このダルガムという勇者には、そんなものが何もない。
ダルガムも驚いていた。
まだ幼さの残る顔立ちだが、こんなに美しい娘を見たことがなかった。
「今は引退したが、元はアザム王国の勇者だった私の父リュウから、この国の勇者殿に渡すようにと書簡を持ってきた。私はリュウの娘リン。さっそく読んでいただきたい」
リンは疑うような目でダルガムを見ながら、袋から手紙を取り出した。
ダルガムは手紙を受け取り、読んだ。
予想した通り、ダバイン王を倒すために立ち上がるので、助太刀願えるのなら協力を頼みたいといった内容だった。
読み終えるとダルガムはリンを見た。
リンもじっとダルガムを見ている。
「あなたたちは二人で旅をしてきたのですか?」
ダルガムは手紙の返事をする前に訊いた。
「そうだが、何か?」
「いえ」
さすが勇者の娘。魔物の潜む地を旅してくることなど、何でもないといった風だ。
「できれば今すぐ返事を聞かせていただきたい。もし協力できぬのなら、私は明日にも国に帰る。協力していただけるのなら、ここに留まり国への案内役をつかまつる」
「もちろん協力するつもりです」
ダルガムはこの日を待っていたのだ。
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