最強だけど世界一極悪非道な勇者が王になる

勇者ダバイン

堕ちた勇者

　夜中にふと、目が覚めた。もう一度眠ろうとしたが、心に引っかかるものがあり、眠れなかった。
　親父は人間に殺された。
　魔物と戦うことさえ命がけなのに。
　勇者とは、こんなにも危ない職業なのか？
　いくら小銭が稼げるといっても、割に合わない商売のような気がする。もっといい仕事はないだろうか。
　ダバインが眠れずに考えていると、ふっとあることが閃いた。
　そうだよ、勇者なんてアホらしい。もっと金持ちになって気楽に暮らせる方法があるじゃないか。
　たちまちダバインはその考えに取りつかれてしまった。
　見習い勇者が、外道勇者に堕ちた瞬間だった。

　翌朝、目が覚めたときもダバインはその考えで頭の中は一杯だった。具体的に何をどうすればいいかはまだ分からなかった。ただひとつはっきりとしていることがあった。今すぐ始めなければならないこと。
　それは誰からも信頼される勇者になることだ。
　もちろんいつまでも勇者を続けるつもりはない。いつの日にか王様を殺して、自分が王様になる。
　勇者よりもよっぽどいい職業じゃないか。絶対に俺は王様になってやる。
　ダバインはそう固く心に決めた。